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Point

■2016年にイギリスで開発された手の震えを止める「GyroGlove」がSNS上で話題に

■手の震えを抑える方法は、これまで薬物の投与や脳に電極を埋め込む手術というハードルの高いものしかなかった

■GyroGloveには、運動の安定度を保つ「ジャイロスコープ」の仕組みが応用されている

イギリスで開発された手の震えを止める手袋「GyroGlove」が、SNS上で話題を呼んでいます。

パーキンソン病本態性振戦を患う人は、自分の意志に反して手や足に震えが生じます。すると、普通に食事するにも歩くにも、もちろん細かな手の動きを要するメイクなども満足に行えません。

しかし手の震えをテクノロジーで止めることができれば、普通の日常を取り戻す一助になるのです。

実際、激しい手の震えのせいでコップの水も満足に飲めなかった患者さんは、手袋を装着後は手の震えがピタリと止まり、コップをスムーズに水を飲めるようになりました。

手術・薬剤一切なし。手につけるだけで震えが止まる

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手の震えを伴う症状は決して珍しいものではなく、500人に1人の割合で発症するといわれています。

震えを抑えるには、これまでは薬物の投与か、あるいは脳に電極を差し込むというハードルの高いものが主でした。そこでオン氏は「薬や外科手術をまったく必要としない安心出来る解決法を考えていた」といいます。

手袋に応用されているのは「ジャイロスコープ」のメカニズムです。

Credit: GryoGlobe

物体が高速で自転運動すると返って姿勢が安定する「ジャイロ効果」を利用したもので、手袋の中のジャイロ装置が手の震えに合わせて反発することで、運動のブレを打ち消すことができます。

なおこの手袋に使用されているのは、創業者のフォール・オン氏によると「航空機並みのジャイロスコープ」とのこと。その性能に自信を示しています。

Credit:youtube

気になる手袋を装着した感覚は、「厚いシロップの中に手を浸しているよう」。自由に動かすことはできますが、手の動きが少しスローになるようです。

また、震えの症状は人によって様々ですが、GyroGloveは装着する人の手の震えに合わせて様々にカスタマイズすることもできます。個々人に合わせた設定によって、より快適な動きができるようになるのです。

Credit: reuters

商品動画では、自分でメイクやネイルを楽しむ患者さんの姿がうつっています。

また、「鉛筆で円を描く」という日常的な動作もままならなかったアリスンさんも、手袋を装着しただけで見事に綺麗な円を描くことができています。

あまりの喜びに、アリスンさんの目には光るものが…。

 

2019年現在「GyroGlove」は、商品としての一般販売を実現するため、外部の臨床医や品質管理、安全性の調整を行なっている段階です。販売時期はまだ未定ですが、価格としては6万円〜9万円ほど(2016年時点)が予定されています。

また、医療目的以外にもカメラマン外科医など、手の安定した動きが必要な職業にも応用することが期待されています。

「GyroGlove」の登場に、SNSからは「オン氏は患者の救世主です」「これまでの苦悩を救ってくれることが嬉しい」といった声が多数寄せられました。

当たり前ができない苦しみを、喜びに変えてくれる。これぞ発明家の鑑ですね。

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reference: technologyreviewgyrogear / written by くらのすけ
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