東日本を台風15号が直撃した中、2019年9月11日、内閣改造が行われた。台風被害の方にはお見舞いも申し上げる。インターネットの上で、そうした被害がある中で内閣改造している場合かという批判がある。気持ちはわかるが、実務ではまったく影響ない。それどころか、かえっていいタイミングだ。

菅官房長官の影響力が増した

台風などの災害被害の場合、実働部隊は地方官僚、現場の官僚らだ。筆者もかつて地方財務局で災害予算執行を担当したことがある。災害現場に行って、予備費予算執行の可否を判定するという役目だ。実際には予算執行を否定することはなく、ただ追認するだけだが、形式的に現場に行くわけだ。

こうした事務で、一番面倒臭いのが、中央省庁からの連絡だ。中央省庁は実情がわからないので、地方に問い合わせてくるが、それへの対応で、地方官僚が時間をとられるのが痛い。ところが、内閣改造では、中央省庁官僚は、基本事項を新大臣へレクすることで手一杯であり、地方災害のことを地方に問い合わせる時間の余裕がない。このため、地方の官僚が余計なことをしないですむのがいい。

ところで、内閣改造であるが、これで、ポスト安倍、ポストポスト安倍が見えてきた。ズバリ言えば、ポスト安倍は、菅義偉官房長官岸田文雄政調会長。ポストポスト安倍は、加藤勝信厚労相、河野太郎防衛相、茂木敏充外務相。

まず、今回の組閣の派閥構成を見てみよう。細田派3(改造前3)、麻生派3(5)、竹下派2(2)、岸田派2(3)、二階派2(2)、石破派0(1)、石原派0(0)、無派閥6(2)。麻生派岸田派、石破派の減少が無派閥の増になっている。無派閥は、隠れ「菅派」なので、ここにきて、菅官房長官の影響力が増したわけだ。

閣僚を競わせながら憲法改正へ進むか

官房長官は、「令和おじさん」と親しまれ、先の参院選でも引っ張りだこだった。

今は政治家パワーは、選挙の時に頼りになる人気が大きい。選挙応援に来てもらったかどうかは、政治家にとって貸し借りになる。

岸田政調会長は、安倍首相との関係で、依然として有力な後継候補である。先の参院選では、菅官房長官が選挙での強さをみせ、岸田政調会長はその後陣をはいした。これから、菅官房長官ポスト安倍でしのぎを削るだろう。

ポストポスト安倍は、有力閣僚をみればいい。トップへの登竜門である重要な閣僚といえば、官房長官、財務相、外務相、厚労相、経産相、防衛相だ。そのうち、ポストポスト安倍の有資格者をみると、加藤厚労相、河野防衛相、茂木外務相に絞られてくる。

こうした改造布陣で、安倍首相は各閣僚を競わせながら憲法改正を進めるのだろう。最善の今後のスケジュールは、来年通常国会で衆参ともに3分の2以上で発議し、東京五輪終了し年内に国民投票である。そのときには、衆院解散・総選挙とのダブル選挙だろう。もっとも、参院で憲法改正の発議をするのは容易でない。

その前に、秋の臨時国会で、消費増税に伴う景気後退を防ぐために補正予算があるだろう。米中貿易戦争、英国のEU離脱、日韓関係悪化、ホルムズ海峡の緊張激化など国際情勢は緊迫している。そうした中、日本が消費増税で景気後退したら、憲法改正どころでなくなる。憲法改正へのハードルは高い。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「安倍政権『徹底査定』」(悟空出版)、「『バカ』を一撃で倒すニッポンの大正解」(ビジネス社)など。


安倍首相が内閣改造を行った(画像は9月11日の記者会見)