9月9日に行われたNHKから国民を守る党(N国)・立花孝志党首の記者会見で珍事が勃発した。サングラスをかけた謎のプロレスラーが立花氏に詰め寄り、自身の主催する興行で試合を行うよう一方的に提案したのだ。アピールに対し、「1000万円用意してくれたら考える」とやり過ごす立花氏。だが、プロレスラーのあまりの執拗さに「会見の趣旨と違う! あなたの営業はやめて!」と最後は怒り心頭だった。

 このカオスな会見を見ていた視聴者からは「誰だよ、あのインチキ臭いプロレスラーは?」と疑問の声が続出。マット界の事情に明るいはずの日刊スポーツが「プロレス団体の関係者とみられる男性」と表記するなど、メディアすら困惑気味だった。男の正体は格闘技団体「キングダムエルガイツ」代表・入江秀忠。現在は「超人イリエマン」の名前でリングに上がっているプロレスラー兼格闘家だ。業界内部に精通している関係者が解説する。

プロレス格闘技の世界では有名なお騒がせ男です。以前は『ヒクソン・グレイシーと対戦させろ』『PRIDEリングで試合をさせろ』と執拗にアピールし、署名運動まで展開してきた。最大の特徴はヘビのようにしつこい性格。突拍子もない言動がファンから面白がられると同時に、“関わると面倒くさい選手”と同業者から避けられる傾向がありますね」

◆渦中の本人を直撃!

 今回、日刊SPA!は渦中の入江を都内のジムでキャッチ。乱入劇の真意を聞いた。まず入江は「場違いな興行の宣伝はやめろ」といった批判について説明を始めた。

「大会をアピールする目的がまったくなかったと言えば嘘になるけど……でも真の目的は、そこじゃなかったんですよ。というのも、ぶっちゃけた話をすれば前売りチケットは順調に売れているから。大会は10月6日開催なんですけど、約1カ月前の段階で相当はけている。もちろん採算黒字ラインはとっくにクリアしています。当たり興行になるのは間違いないでしょうね。

 じゃあ、なぜあんな真似をしたのか? ひとつには俺が立花さんに対して興味があったから。立花さんの真意が聞きたかったから。俺はあの場で立花さんに論破されたかったんですよ。納得できるような説明があったら俺は喜んで立花さんの軍門に下るし、なんなら年末に出る予定のRIZINの試合でセコンドについてほしいくらいです」

 いきなり身勝手な“入江節”が全開で面食らうばかりである。現在、入江はRIZIN参戦に向けて地道な署名活動を行っているものの、出場に関する具体的なアナウンスは一切出ていない。ただし、かねてより立花氏の動向に注目していたというのはたしかなようだ。記者が見せてもらった入江のスマホには「超人イリエマンと申します。先生のYouTubeを拝見しまして、是非お話したいことがございます」と立花氏に送ったメッセージの発信履歴が残っていた。

「こういう人だったら日本を変えてくれるんじゃないかという期待が俺にはあったんですよね。アントニオ猪木先生みたいに破天荒なことをやって、既存の政治でできなかった道を切り拓いてくれそうじゃないですか。だけど最近の立花さんは言っていることがブレブレでしょ? 何かあるとすぐに訴えるとか言い出すけど、そんなことをする前に自分が政治家になった本当の目的を思い出してほしい。マツコ・デラックスさんに何を言われたかなんて、いちいち気にしている暇はないはずです。

 立花さんはYouTubeで知名度を上げて、YouTubeで議員になった方。最初は本当に少なかった再生回数も今や莫大な数になり、1日に50万円以上お金が入るとご本人も言っている。でも再生回数や入ってくるお金が目的になっていたら、そんなの政治家じゃないですよ。単に話題作りに躍起になったYouTuberじゃないですか。『そのあたりは大丈夫なのか?』って俺は立花さんに聞きたかったんです」

 立花氏がプロレスの試合を行う場合、対戦相手は入江ではなくシバターというYouTuberプロレスラーになる。シバターと立花氏はかねてよりYouTube上で舌戦を繰り返しており、立花氏は提訴も検討。一連のやり取りの中で激高した立花氏は「プロレスリングでしばいたろうか!」とシバター宣戦布告。入江による試合オファーは、こうした流れを受けてのものだった。

プロレスの練習生がデビューするまでに、どれだけヒンズースクワットの回数を繰り返して汗や涙を流すのか……。軽々しく『プロレスリングで』なんて言わないでほしかった。その一方で、立花さんはあの会見で『シバターさんとは“プロレス”をやっているだけだから』と言ったんですよね。どういう意味でプロレスという言葉を使ったのか、国会から帰るときに俺はずっと考えていたんですよ。

 それで、ふと気づいたんです。まさかとは思うけど、あの2人、本当は最初から出来レースでケンカしている“ふり”しているだけなのでは? ケンカに見せかけて視聴者の興味を煽りつつ、お互いのYouTube再生回数を上げている……。だとしたら、国民を巻き込んだ大変な暴挙。それは絶対に許されないことです」

1000万円集める目処は立った

 たしかにYouTubeの世界では、再生回数が高い者同士がコラボするのはよくあること。会見終盤、入江は立花氏に「プロレスって真剣勝負だと思いますか? それともショーだと思いますか?」と問い質した。“UWFの正統後継者”を自認する入江にとっても、非常にデリケートなテーマだ。これは立花氏がどういう意図で「プロレス」という言葉を使ったのか、どうしても確認したかったからだという。

「あの場では1000万円という具体的な数字が出ましたけど、逆に俺が1000万円を本当に集めたら、あの人は闘わなくてはいけない。だって政治家が口にした以上、それは立派な公約ですからね。幸いにして1000万円を集める道筋も見えてきたので、今度、それは会見で発表させていただきます。

 はっきり言って1000万円なんて、どんなに大きい会場でやったところで絶対に回収できないです。熱心な格闘技ファンは逆に立花戦なんて見たくないだろうし。それでも無謀にもやろうとしているんだから、俺の男気を評価してほしいですよ。もうひとつの問題としては、現状、シバター側の参戦受諾が取れていないこと。何度もLINEを送っているのに、完全無視されているんです(苦笑)」

 入江は最近、YouTuberとしてデビューを果たしたばかり。これで立花氏やシバターと同じ土俵に立ったことになる。YouTubeチャンネルを開設したきっかけは、煽り運転殴打事件で逮捕された宮崎文夫容疑者と入江氏が激似だと仲間内で噂になったこと。この話題に乗った入江氏は「煽りマン」を自称。嬉々として宮崎容疑者のコスプレをしながら、「日本最高峰格闘技団体のRIZINに上がるため、話題作りは積極的にしていきたい」と気炎を上げる。

「噂だと宮崎は茨木のほうに拘束されているらしいんですよ。俺もなんとかして会えないかと思っているんだけど……。あいつのやったことは論外だけど、俺の大会に出てもらいたいんですよ。高速で車から降りてきた宮崎は、なんの躊躇もなく被害者を殴ったでしょ? あれはなかなか素人にできることじゃない。

 それにパンチの軌道をもう一度しっかり確認してほしいんですけど、素人がよくやる力任せの大振りフックじゃないんですよね。綺麗に最短距離で右ストレートを連打している。プロの目から見ても、格闘技経験者である可能性が非常に高いですよ。だけどもう1つの可能性として考えられるのは、開いている車の窓という限られたスペースから殴るしかなかったから、結果として綺麗なストレートになっただけかもしれない。そこは微妙なところですね」

◆相次ぐ告発について尋ねると…

 さて、入江によると前売り状況は好調というキングダムエルガイツ20周年記念大会(10月6日/東京・北沢タウンホール)だが、周囲からはキナ臭い話も聞こえてくる。入江は契約書も交わさないうえに、ファイトマネーをサウナ券やチケットで渡すと選手から告発が相次いでいるのだ。そうした声があることをストレートに入江にぶつけると、「……小さいよね、言ってることが」と鼻で笑った。

「そういうことを言う人たちの行く末は、路上のホームレスです。いつも誹謗中傷を言う人って、自然に周りから人が離れていくんですよ。悪口って1人だけじゃなく、いろんな人に向かって言うものですから。おそらく自分を守るため、そうしているんでしょうけどね。チケットのことに関しても、こっちはこっちの言い分があるんですよ。大会を開くためには、初期投資がすごくかかることとか。だけど、そういうのはあまり表に出したくない。相手と同じレベルで話したくないんですよ。こっちはもっと大きい志で動いているわけですし」

 言っていることは滅茶苦茶だが、入江にしてみれば「そもそも選手として客が呼べるレベルなのか? 文句があるなら、自分でチケットを売ってみろ」ということなのかもしれない。その是非はともかくとして、選手のチケット買取システムキックボクシングなどでは昔から行われてきたこと。双方の言い分は、まったく交わることがなさそうだ。

「今回、国会での記者会見に乗り込んだことでブログの読者ランキングはバカみたいに上がったし、ジムの見学者だって増えた。周りからは『売名、大成功じゃないですか』みたいに言われるけど、俺から言わせればこんなレベルじゃ全然満足できない。もっともっと俺はやらかしますよ。大きく世間を巻き込んで、年末のRIZINに出陣。そして50歳の男がそこで狂い咲きます。

 だけど、それすらも途中経過に過ぎなくて、最終的にはヒクソン・グレイシーと完全決着をつける。向こうが総合はもうできないというなら、グラップリングマッチでもいい。絶対に闘う。俺は変人・奇人だっていつも笑われてきたけど、言ってることは20年前から1ミリもブレていないんですよ」

 1997年高田延彦がヒクソン・グレイシーに敗れた。翌98年、高田はリベンジに挑むも返り血を浴びる。このとき、プロレスは死んだと入江は痛烈に感じたという。高田の立ち上げたUWFインターナショナル。そこから派生した団体・キングダムに練習生として籍を置いた入江にとって、ヒクソンを倒すために立ち上がるのは必然だった。入江の長い旅は、いよいよ最終章に突入する。〈取材・文/小野田 衛 撮影/丸山剛史〉

入江秀忠氏