Point
■脊椎動物の闘争/逃走反応を引き起こすのは、アドレナリンではなく骨由来のホルモン「オステオカルシン」
■実験では、危機に直面したマウスはオステオカルシンが上昇、逆に分泌できない状態だと無関心を貫いた
コロンビア大学により、脊椎動物の闘争および逃走反応を引き起こすのは、アドレナリンではなく骨であることが判明しました。
動物は天敵や突然の危機に直面すると、ストレス反応を起こし、心拍数や体温、呼吸数が上昇します。こうしたストレスによる体内の働きが、闘争か逃亡かを選択する引き金となるのです。
これまで闘争・逃走反応に必要な物質はアドレナリンであると思われていましたが、今回の実験により、骨から分泌されるホルモン「オステオカルシン」が原因であることが明らかになりました。
研究の詳細は、9月12日付けで「Cell Metabolism」に掲載されています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1550413119304413?via%3Dihub
闘争本能に「アドレナリン」は関係なかった⁈
マウスを使った実験にて、天敵の排泄物などのストレッサーに直面させたところ、2〜3分の間に体内のオステオカルシン値が急激に上昇していることが確認されています。
これは人においても同様で、大勢の前でのスピーチや詰問によってストレスを与えたところ、マウスと同じ上昇反応が見られました。
オステオカルシン値が上がったマウスは、心拍数や体温、血中のグルコース値を上昇させ(ストレスの感知)、その後、闘争あるいは逃亡の準備を開始しました。
反対に、オステオカルシンを分泌できないようにしたマウスは、危機的状況に直面してもまったく無関心を貫きました。オステオカルシンのない動物は、まさに骨抜きにされた状態と言えるでしょう。
さらに興味深いのは、アドレナリン分泌腺を無くしたマウスでも、身の危険に対してストレス反応を引き起こすことができたことです。これは、脊椎動物の闘争・逃走反応にアドレナリンが必要ないことを示しています。
骨で勝負が決まる?
オステオカルシンの働きを詳しく調べてみると、血流を通して、脳や膵臓、筋肉、その他の臓器に影響を与えていることがわかりました。
例えば生物の持久性や速い走行を可能にさせたり、記憶力を向上させたり、グルコースを取り込んで細胞機能を高めることでメタボリズムを防いだりしているようです。
骨は物理的な衝撃から柔らかい臓器を守るだけでなく、骨由来のホルモン分泌によって危険から身を守る働きをしています。
頭蓋骨はトラウマから脳を守る働きを持っていますし、耳骨は迫り来る危険をいち早く察知して逃走を促す働きをします。こうした突然のストレスに対処するためには、やはりアドレナリンではなく丈夫な骨が必要だというわけです。
ただし、その後の戦いや逃亡が骨の折れる試練であるのは間違いありませんが…
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