1人をエンジョイする者、結婚したいけどできない者……独身理由には様々なワケがあるだろう。だがどんな理由であろうと「1人は寂しい」と思う瞬間は、誰にでもあるはずだ。

 人材派遣会社の営業マン・渡辺光雄さん(仮名・40歳)もそのひとり。

シングルマザーに“ハマった”独身男

「福岡でコンサル業を営んでいる友人の美和(仮名・30歳)はシングルマザーです。ある夏、彼女と子供と僕の3人で、葛西臨海公園でデートをしたんですよ」

 渡辺さんは10年前に妻と別れて以来、ずっと独身生活。友人の美和さんとは異業種交流会で出会ったそうだが、恋愛には発展しないという。よくある“男女の友情”なのだろうか。

「当時、結婚はもうコリゴリでしたが、家族がいないのはやっぱりちょっと寂しくて。特に友人らから、子供の入学式や卒業式と子供絡みのイベント話を聞くと、うらやましくなったりしてました」

 そんな状況だったからこそ、友人の子供を含めたデートには舞い上がった。

「葛西臨海公園で子供と一緒に潮干狩りの予定です、一緒にどうですかというLINEがきたんです。美和の子供にも興味があったし、趣味もなく休日は基本ヒマなので二つ返事でオッケーしました」

 3人で潮干狩りをしていると、次第に美和さんの子供がなついてきたそう。そして、その光景を見ていたカップルが「ああいう幸せそうな家庭を築きたい」と話していたのを、渡辺さんは聞いた。

「それまでシングルマザーと何回かデートしたことがありますが、子連れデートは初めて。しかも本物の家族と間違われたことがとても嬉しかったです。なんだかよくわからないけど、達成感を覚えましたよ!

 それからです。僕が他人の子供を含めたお出かけにハマったのは。友人の家族水入らずのBBQにも運転手として参加したり、キャンプにも混ぜてもらったり。子供と奥さんと3人になる機会を狙って、幸せをもらっています。結婚は疲れることも多いけど、これならストレスもないし、最高だと思うんです」

 話を聞いていて「なんだそれ」と思ってしまった筆者だが、渡辺さんのようなシングルが増えている現状では、「疑似家族でも幸せ」という人も少なくないらしい。

◆お迎えに来るパパを夫と妄想する保育士

 学童保育を手伝っている辻さやかさん(仮名・37歳)は、独身で何年も彼氏がいない。彼女も、家族に間違われるたびに嬉しくなるという。

「学童保育をやっている友達に頼まれて、週に3回ぐらい、学童保育の施設でサポートしています。シングルマザーも増えているけど、シングルファザーもいますね。パパのお迎えが少し遅くなった小学校3年生の男の子とパパと、方向が同じだったので、一緒に帰ったときのことです」

 近くのスポーツ用品店で、子供の運動靴を購入する父親に付き合い、辻さんもサイズが合うか見てあげたときのこと。店員から「平日にご家族でお買い物、いいですね」と言われたのだ。

「ちょっと嬉しくなったんですよね。子供のパパには何の恋愛感情もないですよ、きっと家族が欲しいという私の願望が満たされたんでしょうね。今も、迎えにシングルのパパが来ると一緒に帰ったりしています。あと、パパとの家庭を妄想したりも(笑)。もちろん、恋愛や体の関係はゼロですよ」

◆家族に見られて迷惑した女性も

 だが同じ疑似家族でも、迷惑だったと話す人もいる。独身OLの篠原加奈子さん(仮名・32歳)だ。

「友達が不倫関係を解消したくても、男が別れてくれなくて。そこで私が友達の代わりに直談判しに行ったんです」

 驚くべきことに、友達と待ち合わせをした不倫相手は、子供(男の子)を連れていた。5歳の幼稚園児だった。

「友達に息子を紹介すれば、遊びではなく本気だと騙そうとしたんでしょうね。とんでもない男でした」

 ところが息子が篠原さんになついてきた。子供と遊んであげてから、相手に「別れろ!」と迫るつもりだったが、子供がなかなか解放してくれない。

「近くを通りかかった老夫婦に『仲の良い親子ね』と褒められて。最悪でした。思わず『違います!』と大声で言っていました」

 篠原さんの努力の甲斐もあってか結局、友人は不倫相手と別れることになったとか。

「疑似家族? 信じられません。なんで好きでもない他人から幸せをもらわなくちゃいけないんですか。私は絶対に好きな人と結ばれて、自分の子供と家庭を作りますね」

 独身たちにも、色々な考えがある。それがよくわかる取材であった。<取材・文/夏目かをる>

【夏目かをる】
コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマン取材をもとに恋愛&婚活&結婚をテーマに執筆。難病克服後に医療ライターとしても活動。ブログ恋するブログ☆~恋、のような気分で♪

―[独身たちの日常]―


幸せな家族に憧れる人も多いはず…(写真イメージ、以下同)