赤ちゃん(kuppa_rock/iStock/Getty Images Plus/写真はイメージです)

不妊治療の受診件数、そして体外受精による妊娠・出産の件数がこのところますます増えているというが、こんなアクシデントも稀には発生してしまうようだ。

■親にまるで似ていない我が子

米国ニュージャージー州の不妊治療専門クリニック『IRMS』で体外受精(IVF)に挑み、6年前に女児を授かっていた白人の夫婦。大切に育ててきたが、その子は2人の家系にはいないアジア系の顔貌および肌と髪の色をしており、夫妻にはまったく似ていなかった。

周囲から「養子を迎えたの?」と聞かれるのはまだ良いほうで、「アジア人男性と浮気してできた子」という陰口まで叩かれていることを知って傷つき、夫妻はやがて離婚した。

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■ミスを認めないクリニック

『IRMS』の医師のミスで受精卵の取り違えが発生したことは明白だとして、2015年に父親と娘の血のつながりについてDNA検査を実施した元夫妻。やはり「親子の可能性は限りなくゼロ」という結果だった。

しかしクリニック側は「そんなミスは絶対に起こりえない」と否定するばかりで埒が明かず、元夫妻はこのほどクリニックと医師らを相手に、日本円にして5,300万円超の損害賠償金を請求する訴訟を起こした。

■「法の力で解決を」と夫妻

その損害賠償請求額は夫妻がクリニックにこれまで支払った金額とほぼ同じだとして、夫妻は法の力に頼ろうとした理由をこう話している。

「娘の実父の情報がほしいと告げても、クリニックはそのデータをくれないのです」

「私たちには、自分たちの受精卵がどこへ消えたのかを知る権利があります」

「この件で私たちは大変な苦痛、不快感、心労、あらゆるものを経験させられました」

裁判所からの命令により、現在そのクリニックは様々なデータの提出に追われているという。

■過去にも同様の事件が

アメリカでは受精卵の取り違えでたびたび裁判が起きている。コネチカット州では白人夫婦が体外受精で2018年に男児を授かるも、肌の色が濃く、DNA検査で精子が夫のものでなかったことが判明した。

さらにニューヨーク州では、女の子の双子を望んだアジア人夫婦のもとに、肌色や顔貌がまったく似ていない男の子の双子が誕生。DNA検査を経て夫婦は親権を放棄した。クリニックは今年7月に訴えられている。

「肌の色でおかしいと思った」とはならない日本。過ちの発覚は、あってもかなり遅れることだろう。受精卵の保存や取り扱いはくれぐれも真剣にお願いしたい。

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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ

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