「1週間前に佐野サービスエリアを遠くから見える場所まで行って……知らない人たちが働いている様子があって、どんどん戻れない状況に追い込まれているのかもしれないと感じました。正直なところ、当初、ストライキは3時間くらいで終わると思っていました。まさかこんな事態になってしまうとは考えもしませんでした。私がストライキ中の従業員に支払うために(自費で準備して)組合に供託した1500万円も今週末(9月20日)で切れてしまいます。毎日約35万円ほどかかってしまうので、なかなかもたないですね。本当に焦っています」

加藤氏は明らかに疲弊していた

週刊文春デジタル」のインタビューにそう話すのは、「ケイセイ・フーズ」の加藤正樹元総務部長(45)だ。加藤氏は8月13日東北道佐野SA(上り線)のフードコート、レストラン、売店の運営を行う同社を解雇され、従業員の9割に当たる約50人とともにストライキを始めた。

 だが、1カ月前のストライキ突入直後と比べ、加藤氏は明らかに疲弊していた。

 栃木県佐野市のご当地ラーメン「佐野らーめん」の人気で全国区となった佐野SAは、約170万人の年間利用者数を誇る。しかし、運営会社ケイセイ・フーズの岸敏夫社長と従業員の人事を巡る対立から、お盆真っ只中の8月14日未明に従業員はストライキを敢行。夏休みのかき入れ時にフードコート、レストラン、売店の営業を突如ストップする事態となった。

 現在、フードコート、売店、レストランは、社長側が関連会社の従業員や日雇いスタッフなどを集めて8月30日に営業を再開。しかし、以前から働いていた従業員のストライキはいまだ断行中だ(9月15日)。

栃木県の労働局に斡旋を申し立て

 組合と会社側はこれまで幾度の労使交渉を重ねてきたが折り合わず、9月3日弁護士間の下交渉も決裂に終わった。

「今の状況で言えるのは、平行線のまま1カ月が経過したということです。9月3日以来、交渉は一度も行われていない。私たちの要求は『安心・安全な職場に戻りたい』という、ただそれだけです。経営陣の退陣もおのずとその中に含まれます。私の解雇は撤回されていますが、戻るなと言われている状況です。

 会社側の主張は『あなたたちの行為はストライキとして認めていない』というもので、さらに『(ストライキによる)損害賠償を請求する』という。まったく折り合える内容ではない。先日、私は栃木県の労働局に斡旋の申し立てをしました。今後は公的機関が仲裁に入ってくれる予定です」(同前)

 ストライキ突入直後から、ほぼ毎日のように従業員は佐野市内の会議室に集まり、復帰に向けてより良い接客業などについて議論をたたかわせている。加藤氏は高齢者の多い従業員たちの前で、再就職の難しさと厳しい労使交渉の現状について、ありのままを話したという。

「私のクビと引き換えに……」

「私が従業員の皆さんの再就職先を探すことに時間が裂けないのが現状。高齢者の方が多く、他の職種ではなかなか再就職先がないということもお話ししました。ほかのサービスエリアにも声を掛けたのですが、数名は別のSAで臨時スタッフとして働く予定ですが、ほとんどは断られました。今は自分たちの再就職先は自分で探すというかたちになっています。

それでも従業員のモチベーションは下がっていません。条件次第ですが、『皆さんが復帰したときに私は一緒にはいられないかもしれない』と話したら、部署ごとに多少の温度差はあるんですけど、『それはあり得ない』と言ってくれた。私のクビと引き換えに全員が戻れるという選択肢はほぼ全員が挙手で反対という意見でした。

もういい加減、潮時だろうと皆さんが思っていると私は思っていたんですけど、私が思っていたより闘う気持ちが強いんです。先週末も約50人の従業員が揃って、ストライキを続ける方たちがまったく減っていないんです」

現経営陣がいなくなるなら

 とはいえ、現状のまま進めば、今月20日にも組合の供託金は尽きる。加藤氏は、今後について次のように述べた。

「どうやら私が自ら辞めることが(経営サイドの提示する)条件になりそうなんです。私が辞めて、現経営陣が残っているなら突っぱねますけど、そういう方たちがいなくなるなら、私がいなくても戻った従業員たちでなんとかなると思っています。供託金も尽きるので、全員で闘うのは今週が最後になりそうです」

 ストライキは終盤戦を迎えている。

(「週刊文春」編集部/週刊文春

ストライキで客も疎らだった佐野SA ©文藝春秋