詳細画像はこちら

積算1万2601km 始動時のうるさいブリッピング

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

アストン マーティンDB11にはエンジンスタート時にクワイエット(静か)・モードがあり、早朝にドライブに出発しても、隣人を起こさなくて済む。だが、このヴァンキッシュには付いていないから、かなり元気な声を上げてスタートすることになる。

近年のクルマは、触媒の効率を高めるたなのか、気持ちを高めるためなのか、スタート時に軽くブリッピングをする傾向がある。だが、エグゾーストシステムのフラップまで開く必要はないと思う。フラップが閉じていても、恐らく目立った弊害はないはずだ。

詳細画像はこちら
アストン マーティンヴァンキッシュS

ヴァンキッシュSのフロントに収まるのは、素晴らしい5.9L自然吸気V12。最高出力は600psもあるが、ヴァンキッシュアップデートされた時にライバル視していた、フェラーリF12の740psには及ばない。その後更に812スーパーファストが登場し、800psという王代を超えてきた。

2019年版の次期ヴァンキッシュには、フォード由来の5.9Lユニットにふたつのターボチャージャーが搭載され、最高出力は700psを超えることになる。6気筒の倍数だからとてもスムーズに回る最高のエンジンで、必要な時は魂をほとばしらせるが、それ以外は充分に静かだ。

兎にも角にも、スポーツカーとラグジュアリーな高速クルーザーとが融合した、少しオールスクールなところが残る最後のアストン マーティン。愛さずにはいられない。

積算1万3067km 自然吸気V12の最後の輝き

スーパーグランドアラーを毎日の足として使用する。この長期テストの目的でもあった。答えは簡単。素晴らしい。しっかりグランドアラーしているが、多くのライバルモデルはアストン マーティンヴァンキッシュSのように振る舞うことは難しい。たとえアストン マーティンDB11であっても。それがヴァンキッシュSが生まれた理由でもある。

最高出力は600psに増強され、パワーデリバリーはやや鋭くなり、ノイズもにぎやかになった。大排気量の自然吸気V型12気筒エンジン絶滅危惧種といえるユニットだが、ヴァンキッシュSはその存在価値を改めて見直させてくれた。

詳細画像はこちら
アストン マーティンヴァンキッシュS

600psは充分なパワーだが、自然吸気エンジンだから、そのパワーを引き出すにはしっかり回してやる必要がある。わたしには好きな作業だ。中回転域まで回せば充分に活発な走りを体験させてくれるが、より熱くなるには低いギアを選んでいく必要がある。構うことはない。

ZF社製の8速ATは、前後重量配分の改善のためにトランスアクスル・レイアウト。これまでと変わらない内容なものの、プロペラシャフトカップリングは強固なものに変更してある。おかげでトルクコンバーターの滑らかな動きを保ちつつ、ロックアップも素早く、剛性感のある走りになっている。これまでデュアルクラッチATが欲しいと思うこともなかった。

恐らく読者も、仮に1万キロ以上を走ったとしても、ATが安楽だからといって、今以上を欲することはないだろう。わたしはこれまで何人かのヴァンキッシュオーナーと話す機会があったが、想像以上に長い時間をクルマと一緒に楽しんでいるという。

ランニングコストはガソリン代くらい

一方で、ヴァンキッシュSよりパワフルなモデルでも、運転が疲れるという理由でクルマ乗り換えたいと考えているオーナーを知っている。スーパーグランドアラーを日常的に乗りたいのなら、フェラーリFFやGTC4ルッソ、アストン マーティンヴァンキッシュは最適な選択肢だ。レンジローバーやフォルクスワーゲンゴルフRに乗った次の日にドライブしても大丈夫

この長期テストで借用していたクルマの走行距離は最大で1万2000kmまでと制限を受けていたから、当初は毎日乗る予定はなかった。だが手元にある唯一のクルマだった時もあり、実際は日常的に走らせた。学校の送り迎えや、生協への買い物など。実際、これ1台でも問題なさそうだ。

詳細画像はこちら
アストン マーティンヴァンキッシュS

定期点検の推奨距離は1万6000kmだが、オイルの消費もなく、部品の交換も必要なかった。ランニングコストは、燃料と減価償却以外は掛かっていないことになる。新車時で20万ポンド(2600万円)もするクルマは、今の見積もりでは、装備も充実しているから18万5000ポンド(2405万円)辺りになるだろう。

日常的に走らせる上で引っかかる点。リアの+2サイズシートは小さい。だが前席を畳んで乗り込んでもらえば、大人でも座れなくはない。ラゲッジスペースは368Lで充分あり、開口部も広いからゴルフバッグも楽に積める。

だがこのようなスーパーグランドアラーを走らせるなら、記憶に残る様な壮大な自動車旅行を楽しみたい。一度スコットランドへ走ったことがあったが、あまりに素晴らしかったからもう一度走らせた。インフォテインメント・システムのできは例によって良くないが、スマートフォンとのペアリングは簡単だから、大体の問題は解決できる。

スーパー・グランドツアラーを体現

乗り心地は優れたコントロール性を叶えるために硬いが、疲労してしまうほどではない。同僚のひとりはエンジンノイズやエグゾーストノートが単調気味だと話していたが、わたしを含めてそんなことを感じたというひとは他にいない。エンジン始動時の音はうるさ過ぎるが、走行時はスーパーグランドアラーとしてピッタリの、命の宿った咆哮だと思う。

長期テストの開始時は想像もしなかったが、1万2000kmを走行してみて、比較的経済的なこともわかった。アクセルペダルをあまり深く踏まなかっただけ、ということもあるけれど、時々はスロットルを開けて加速して、窓を開けてシフトダウンしてトンネルの中でサウンドに聞き惚れることもあった。

詳細画像はこちら
アストン マーティンヴァンキッシュS

それでも高速道路シフトアップを繰り返し、アイドリングより少し上の回転数で穏やかに走らせていれば、燃費は8.5km/Lを超える。もし助手席に具合の悪い猫を乗せて走らせるような場合なら、9.5km/Lくらいで走れるだろう。1L当たり100psというハイパワーな自然吸気エンジンを搭載するわりに、優れた数字だといえるのではないだろうか。

動物病院へ向かう時に限らず、アストン マーティン素晴らしいところは、必要ならばスーパースポーツカーにもなり、望めば洗練されたラグジュアリーな高速クルーザーにもなるというところにある。本当に、スーパーグランドアラーを体現したようなクルマだった。

セカンド・オピニオン

始動時の遠吠えから3000rpmを超えた当たりからの勇ましい唸り声まで、自然吸気V12エンジンサウンドドラマチックさは、速度域を問わずドライビングを夢中にさせてくれる。ターボ過給されるDB11のような低回転域でのトルクは得られないが、そのぶんを音響面で補っている。自然吸気エンジンの最後を飾るに完璧な響きだといえるだろう。

詳細画像はこちら
アストン マーティンヴァンキッシュS

テストデータ

走行距離

テスト開始時積算距離:1657km
テスト終了時積算距離:1万3067km

価格

新車価格:19万9950ポンド(2599万円)
現行価格:19万9950ポンド(2599万円)
テスト車両価格:22万2260ポンド(2889万円)
ディーラー評価額:18万5000ポンド(2405万円)
個人評価額:18万1000ポンド(2353万円)
市場流通価格:1万79000ポンド(2327万円)

オプション装備

ミンブルーペイント:3995ポンド(51万円)
エクステリアグラフィック2995ポンド(39万円)
ダイアモンドターンド・ホイール:4995ポンド(65万円)
カーボンファイバー・ルーフ:2245ポンド(29万円)
カーボンファイバー・サイドスカート:995ポンド(13万円)
ブラックフロントグリル:495ポンド(6万円)
カーボンファイバー・ミラーキャップ:995ポンド(13万円)
ブラックブレーキキャリパー:995ポンド(13万円)
ブラック・エクステリアメッシュ:995ポンド(13万円)
コンテンポラリー・レザー:1195ポンド(15万円)
One−77ステアリングホイール:995ポンド13(万円)
ショップド・カーボンファイバー・サテンフェイシア:1915ポンド(25万円)

燃費&航続距離

カタログ燃費:7.6km/L
タンク容量:78L
平均燃費:8.4km/L
最高燃費:9.3km/L
最低燃費:6.4km/L
航続可能距離:659km

主要諸元

0-100km/h加速:3.5秒
最高速323km/h
エンジン:V型12気筒5935cc自然吸気
パワー:600ps/7000rpm
トルク:64.1kg-m/5500rpm
トランスミッション:8速オートマティック
トランク容量:368L
ホイールサイズ:20inch 9J(フロント)/20inch 11.5J(リア)
タイヤ255/35 RZ20(フロント)/305/30 RZ20(リア) ミシュランプレマシー3
乾燥重量:1739kg

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:−
CO2 排出量:298g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
燃料コスト1781ポンド(23万円)
燃料含めたランニングコスト1781ポンド(23万円)
1マイル当りコスト:25ペンス(32.5円)
減価償却費:4万1600ポンド(540万円)
減価償却含めた1マイル当りコスト:6.11ポンド(800円
不具合:なし


■アストン マーティンの記事
アストン マーティン・ヴァンキッシュS
アストンマーティン 低金利「0.07%」は今だけ 9/30までのキャンペーン
独断と偏見で選ぶ 英国版AUTOCARお気に入り50台 14〜6位
独断と偏見で選ぶ 英国版AUTOCARお気に入り50台 26〜15位

長期テスト アストン マーティン・ヴァンキッシュS(最終回)