パラパラ漫画から、絵が現実世界に飛び出してくるという不思議な立体的漫画「パラデル漫画」の生みの親として話題のお笑い芸人・本多修(魂の巾着)。YouTubeチャンネル「本多修のパラデルチャンネル」で公開された「『令和』って書こうと思ったら『平成』が邪魔してきた」は、1週間で100万回再生を記録。また、松本人志似顔絵の制作過程を描いた「松本人志の作り方」が、「ワイドナショー」(フジテレビ系)で取り上げられるなど、各メディアでも「パラデル漫画」は注目の的だ。

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こうした反響に応えて、これまで「本多修のパラデルチャンネル」で発表してきた作品群と描きおろしの新作を収めたDVD「ようこそ!パラデル漫画へ」が、今年7月にリリース。好評を博し、新たなファンを増やしている。

テレビジョンでは、そんな本多修に直撃インタビュー。「パラデル漫画」の誕生から、オリジナルキャラクターの「ぱらお」と「ぱらみ」への愛着、そして今後の展望に至るまで、思いの丈を語ってもらった。

■ 吉本に入ってから11年くらい、社員さんに見向きもされなかったんです(笑)

――これまでTwitterやYouTubeなどで公開してきた本多さんの「パラデル漫画」が、ついにDVDリリースされました。

本多修:吉本(興業)に入ってからずっと11年くらい、社員さんに見向きもされなかったんですけど(笑)、パラデル漫画を始めてからは、だいぶ環境とか収入も変わりまして。その集大成という形で、自分の名前を冠したDVDが出るっていうのは、やっぱり感慨深いものがありますね。

パラデル漫画には「ぱらお」と「ぱらみ」というメインキャラクターがいまして、今回DVDを購入された方には、ぱらおとぱらみのステッカーが付いてくるっていう特典があるんです。ぱらおとぱらみがステッカーになるっていうのもうれしいですね。今後は、「本多修」よりもむしろ、ぱらおとぱらみを前面に押し出していこうと思ってるんで(笑)。

――パラデル漫画が生まれたきっかけをお聞きしたいのですが、なんでも、ツイッターでリツイート数を稼ぐ方法はないかと考えていて、この表現方法を思いついたそうですね。

本多:僕は元々「魂の巾着」というコンビで芸人をやってまして、ある時、寝坊して(ヨシモト)∞ホールの出番に遅刻して、3カ月の謹慎処分を食らってしまったんですね。そしたら、相方(金井佑介)は、結婚していて子どもも2人いるので、「俺は稼がなきゃいけないから、バイトさせてもらう」と。僕も当然納得して、しばらく一人で過ごすことになったんですけど、本当に何もやることがなくて。で、とにかく何かやらなきゃと思って始めたのがTwitterでした。

とはいっても、ただツイートするだけじゃ意味がない。じゃあ、どれだけリツイートの数を増やせるか挑戦してみよう、と。そこから、どういうツイートリツイート数を稼いでいるかを研究し始めたんです。すると当時、「〇〇を踊ってみた」っていう、音楽を流しながら素人のダンサーが踊る動画が人気で。それを見たときに、これをパラパラ漫画でやったら新鮮なんじゃないかなって。元々パラパラ漫画は、小学生の頃から好きでよく描いてましたし。それで思い立って、手探りで始めて、いくつか動画を上げているうちに、だんだん注目していただけるようになり、気が付いたら仕事になっていた、という感じです。

■ 今までお笑いのネタを作ってきたのと同じ、芸人としての発想で作ったんです

――謹慎を受けて意気消沈するのではなく、逆に創作意欲が湧いてきた、というのが面白いですね。

本多修:今となっては、吉本に対して「謹慎処分にしてくれてありがとうございます」と言いたいです。いや全然、嫌味でも何でもなく、素直に感謝してるんです(笑)。正直言うと、謹慎になる前の1年半くらいは、「このまま漫才をやってても頭打ちだな」なんて思いながら、惰性で芸人を続けてたところもあったんですよ。だから、何か他のことをやってみようという気持ちになる、いいきっかけになったと思ってるんです。

――本多さんは、そもそも前向きな性格なのでは?

本多:そうかもしれませんね。あんまり思い悩むこともないし、「これが無理なら、こうしよう」みたいに、切り替えは早いタイプだと思います。パラデル漫画にも、そういう性格がちょっと反映されていて、ぱらおは超ポジティブ思考なんです。頭が取れちゃったりするんですけど、ポジティブだから、取れた頭を便利に使ったりとか(笑)。

――DVDにも収録されている「紙に描いた絵の人をいじめてたらめっちゃ怒ってきた」も、ブラックなストーリーではありますが、最後の“NG集”を見てほっこりしました。

本多:NG集は、ピクサー映画でもやっている“作り込んだNG”って面白いなと思って、挑戦してみました。

実はこの「めっちゃ怒ってきた」は、言ってみれば、パラデル漫画第1号みたいな作品で。一番最初は、先ほどお話しした「踊ってみた」系の動画を2本作ったんですけど、リツイートは300くらいで、当時としてはもちろん上出来すぎるくらいの反響があったんですけど、もっと上を狙いたいなと思って考えているうちに、自分が描いたキャラクターをいじめていたら、反撃されてボコボコにやられちゃうっていうのはどうかなと。それで3週間くらいかけて作ったのが、この作品です。

――つまり、最初にバズった作品ということですか?

本多:はい、リツイートが一気に増えて、最終的に9万リツイートになりました。要所要所に笑いどころを入れたりだとか、僕の中では、今までお笑いのネタを作ってきたのと同じ頭の使い方というか、芸人としての発想で作ったんですね。表現の方法は全然違うんですけど。だから余計にうれしかったです。

ぱらおとぱらみがそこにいるだけで、パラデル漫画の世界観が成立するようになった

――その「紙に描いた絵の人をいじめてたらめっちゃ怒ってきた」の“紙に描いた絵の人”が、ぱらおの原型となっているわけですね。やがて女の子のぱらみも生まれて、ぱらおとぱらみは、出番が増えるたびにどんどんかわいくなっていきましたよね(笑)。

本多修:ぱらおの原型は、実は一番最初の「踊ってみた」から出てるんですけど、当時は5頭身くらいで、あんまりかわいくなかったんです。でも、今のぱらおとぱらみは2頭身くらいで、ただ転ぶだけでもかわいいんですよ(笑)。僕自身も愛着が湧いてきて、ストーリー上では転ぶ必要はないのに、かわいいから転ばせちゃおう、っていうこともよくあります(笑)。

――かわいいのはもちろんですが、やはり何よりも“現実の世界に飛び出てくる”というアイデアが秀逸ですよね。

本多:ありがとうございます。実は最初の頃、「次はこういう飛び出し方をさせよう」と思って、いろいろ工夫していたんですけど、飛び出し方のバリエーションだけを見せていたら、すぐに天井が来て飽きられちゃうなと思ったんですよね。でもそこに、ぱらおとぱらみというかわいらしいキャラをポンと置いたときに、飛び出し方とか技術的なところが、そこまで気にならなくなったというか。ぱらおとぱらみがそこにいるだけで、パラデル漫画っていう一つの世界観が成立するようになったので、そういう意味でも、ぱらおとぱらみの存在は大きいのかなと思います。パラデル漫画を広く知ってもらう上でも、愛すべきキャラクターがいた方が効果的だと思いますし。

――ぱらおとぱらみがいるおかげで、ネタも考えやすくなったと。

本多:はい、それはだいぶありますね。「ぱらおとぱらみだったら、こう動くよな」みたいな。

――ちなみに、ぱらおとぱらみ以外に、キャラクターを増やす予定はありますか?

本多:インスタとかツイッターで、ちっちゃい「ミニぱらお」と「ミニぱらみ」っていうのを描いてるんです。でも、自分で考えておいて何ですけど、これがかなり描くのが大変で。だから、ミニぱらおとミニぱらみは、今後あんまり出てこないと思います(笑)。いろんな新しいキャラを入れたいなと思ってはいるんですけど、やっぱり大変なんですよねぇ。

■ 鉄拳さんのパラパラ漫画に感動しました。でも、影響は受けてないです

――パラデル漫画を作る上で、本多さんの中で何か決め事のようなものはあるのでしょうか。

本多修:特にないんですが、バッドエンド的な話にならないように、というのは気を付けてるかもしれません。バッドエンディングの話が元々好きではないし、笑って終わるものが多いですかね。

――ちなみに、パラパラ漫画の作家としては、吉本の先輩芸人でもある鉄拳さんが有名ですが、本多さんは鉄拳さんの影響は受けているんでしょうか?

本多:鉄拳さんが話題になったとき、すごいパラパラ漫画を描く人が出てきたなとは思いましたけど、影響は全く受けてないです。かといって、鉄拳さんとかぶらないようにしよう、みたいな意識も特になく。だから、差別化を図ろうというよりは、自分が面白いと思うものを描いてるうちに、自然と鉄拳さんとは違う作風になっていた、という感じですね。

ただ、鉄拳さんと対談させてもらったときに、パラパラ漫画の原画を見せていただいたんですけど、本当にすごくって。正直、動画よりも原画を見たときの方が感動しました。

――絵のクオリティーに感動したわけですか。

本多:そうなんです。まず、影とか背景をちゃんと描かれているところがすごいなと。あのクオリティーの絵を量産できるのが、僕には信じられないです。例えば、電車に乗ると背景の方が動きだしたり。背景って、一回描き始めたらずっと描かなきゃならないから、僕はいつも背景を描かないようにしてるんです。

――パラデル漫画について、芸人仲間からの反応は?

本多:ジャングルポケットが同期なんですけど、太田(博久)がいつも褒めてくれるんです。かなり早い段階で「見たよ、すげぇな」って言ってきてくれたし、「ワイドナショー」で「松本人志の作り方」を披露したときは、LINEで「俺たちとは全然違う角度から、ついに松本さんまでたどり着いたな」ってメッセージをくれたりして。

■ 僕の中では、やってることは芸人と同じ。表現方法が漫才から漫画に変わっただけですから

――さて、今回のDVDには、アメリカでロケを行った撮り下ろしの新作も収録されていますね。

本多修:はい。3月に、アメリカのテキサス州で行われた「S×SW(サウス・バイ・サウスウエスト)」というイベントに招待いただいて、せっかく行くなら、DVDの収録もしちゃおうかと。ぱらおとぱらみが、僕の机の上とアメリカを行ったり来たりしながら、向こうでウォールアートがあったり、バーベキューをしたり、いろいろしでかしちゃう、というストーリーです。

――パラデル漫画は今後、どのように展開していくのでしょうか。

本多:パラデル漫画で、ミュージカルのようなことができないかと思ってまして。ぱらおとぱらみの着ぐるみを作って、ステージの上でパフォーマンスをするっていう。結局僕は芸人だから、目の前にいるお客さんを楽しませることが好きなんですよね。まだ全然先の話ですけど、実はもう、いろいろと細かい演出的なところも考えてます。

――では、本業の“芸人”としての今後の展望は?

本多:僕としては、面白いこと、楽しいことをみんなに見せるという意味で、今やっていることも芸人の延長線上のことだと思ってるんですね。最近、「クリエイター」だとか「先生」だとか呼ばれ始めて(笑)、芸人感がなくなってきているんですけども、僕の中では、芸人とやってることは同じで。表現方法が漫才から漫画に変わっただけですから。

――では最後に、読者へメッセージをお願いします。

本多:まだまだ世の中にパラデル漫画が広まっていないと思うので、ぜひ、新しい世界を見てみてください。そして、僕のことはどうでもいいので(笑)、ぱらおとぱらみをかわいがってあげてください!(ザテレビジョン

パラパラ漫画からキャラクターが現実世界へ飛び出してくる「パラデル漫画」の創始者・本多修(魂の巾着)。7月に発売されたDVDも好評