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ミルトンの叙事詩『失楽園』の中に、折句を用いた隠れメッセージが発見される

■発見したのは、アメリカの大学に通う女子大生

■隠れメッセージによると、アダムとイヴが楽園から追放される未来が予示されていた

ジョン・ミルトン(1608-1674)の叙事詩『失楽園』に隠されたメッセージが見つかりました。

発見したのは、なんとアメリカ・タフツ大学に通う学部生ミランダ・ファールさんです。

ミルトンの『失楽園』は、旧約聖書の『創世記』をベースにしており、アダムとイヴが蛇にそそのかされて禁断の果実を口にしてしまうというもの。

初版は1667年に10巻本として出版され、その後、ミルトンの亡くなった1674年に12巻本で再販されました。今回の発見は、その12巻本の9巻目「サタンによるアダムとイヴの誘惑」の中に見つかったとのことです。

ファールさんの論文詳細は、8月8日付けで「journal Milton Quarterly」に掲載されています。

アダムとイヴの未来を「折句」で予兆していた?

メッセージは、「折句」と呼ばれる一種の言葉遊びの形で隠されていました。

折句とは、詩の各列における最初の文字を縦に繋げて読むと、意味のある単語が浮かび上がるというもの。いわゆる「縦読み」も、この折句の一種です。

例えば、『伊勢物語』の和歌に次のような折句があります。

らころも
つつなれにし
ましあれば
るばるきぬる
びをしぞおもふ

このように「かきつはた(=カキツバタ)」という花の名前が和歌の中に折り込まれています。

問題となる『失楽園』のメッセージは、第9巻の329341ページに現れます。ここは、イヴがアダムに対して、朝の仕事をいつものように一緒にではなく、別々の場所でやらないかと提案するシーンです。

アダムは、離れ離れになってサタンに誘惑されることを恐れ、「一人になりたい」というイヴの願い出を拒否します。それに対する、イヴのセリフの中に折句が見られるというのです。

その原文がこちら。

From his surmise prov’d false, find peace within,

Favor from Heav’n, our witness from th’event.

And what is Faith, Love, Virtue unassay’d

Alone, without exterior help sustain’d?

Let us not then suspect our happy State

Left so imperfect by the Maker wise

As not secure to single or combin’d.

Frail is our happiness, if this be so

先頭の文字を繋げて縦に読むと、「FFAALL」という文字列が見られます。ファールさんによると、これは「二重のFALL」を意味していて、アダムとイヴが二人して楽園から「落ちる」ことを暗示しているとのこと。この後一人になったイヴは、誘惑に負けて知恵の実を食べてしまいます。まさに2人の未来を予言したメッセージといえるでしょう。

一方で、下側から読むと「FALL」が一つだけ現れます。これは反対に、神との争いに破れ、天国を追放されたサタンの「FALL」を意味しているとのこと。つまり短い文章の中で、アダムとイヴ、そしてサタンの未来が暗示されていたのです。

Credit:livescience

こうした憶測は何も根拠のないことではありません。

実は、『失楽園』の中には別の箇所でも折句が発見されており、1977年に、蛇の体に入ったサタンがイヴに対して、知恵の実を食べるようそそのかすシーンで「SATAN」という折句が確認されています。

専門家の話では、叙事詩の中に折句が現れることは珍しありません。ミルトンラテン文学の最高傑作『アエネイス』を書いたウェルギリウスに影響されて、折句を使うようになったと言われています。

それを考慮すると、今回の発見もミルトンが意図的に挿入した隠れメッセージである可能性が高いと言えるでしょう。しかも、発見したのはまだ研究者ではない大学生なのですから、こちらも「二重で」サプライズですね。

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reference: livesciencesciencealert / written by くらのすけ
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