インターハイ・バドミントン女子学校対抗(団体)戦で優勝した福島県ふたば未来学園高等学校。決勝の相手は春の全国選抜で苦杯をなめた埼玉栄高等学校でした。その敗戦で「チーム力不足」を痛感した選手たちは、結束を固め直し、チーム力を高めることに専念してきました。そこにはどのような努力があったのでしょうか。キャプテンの染谷菜々美さん(3年)とエースの内山智尋さん(3年)、顧問の本多裕樹先生に聞きました。

意識してチーム力を高めたことが一番の勝因に

キャプテンの染谷さん
キャプテンの染谷さん

【染谷菜々美さん・内山智尋さんインタビュー】

―― 優勝した感想をお聞かせください。

染谷:昨年からインターハイ団体優勝を目標に頑張ってきたので、優勝できてうれしいです。また、町の方々にもたくさん支えてもらっていたので、良い結果を報告できてよかったという気持ちでいっぱいです。

内山:団体優勝が決まった時、私は同時進行でまだ試合をしていたので、みんなと一緒にリアルタイムには喜べず、横目で「あ~」って見てたんです(笑)。そのあと、観客の皆さんに「ありがとうございます!」とお礼をしたときに、一気にうれしさが込み上げてきて、このメンバーで頑張って本当によかったと思いました。


―― 優勝できた一番の要因は何だと思いますか?

染谷:春の全国選抜で埼玉栄高校に負けた時、私たちは個人個人では強いのだけど、チーム力や勢いでは相手に劣っていると痛感したんです。それからはチーム力を高めることを意識してきました。練習の時から「まだやれるよ!」と声掛けしたり、大会前にミーティングをして「全員で勝つんだ!」と目標を再確認したりして、チームとして強くなれたのが一番だと思います。

内山:今回は個人の力でもチーム力でも埼玉栄高校を上回れた感じがします。私の決勝の相手は個人戦で勝ったことのある相手だったので自信はあったし、応援してくれる方々に恩返しするためにも「ここまで来たらもう勝つしかない!」という気持ちでした。

「勝とう!」という気持ちが強く出た大会

エースの内山さん
エースの内山さん

―― 一番苦しかった試合・場面はありますか?

染谷:準決勝の第2シングルスで出たのですが、そこで内容の良くない試合をしてしまいました。途中で集中力を切らして負けてしまい、その時が一番つらかったです。結局、みんながカバーしてくれてチームとしては勝てたのですが、個人的にこのままではいけないと思って、次は自分がみんなの力にならなきゃと気持ちを入れ直して決勝に臨みました。

内山:団体戦が怖いのは何が起こるか分からないところ。個人戦だったら普通に勝てるような試合でも、団体戦はチーム全体の勢いのようなものがあって、それに飲まれてしまうことがあることを常に意識していました。そのおかげか、もつれた試合でも特に気負うことも焦ることもなく、チームメイトが悪い流れになってもみんなで声を掛け合ってサポートできていたと思います。


―― 勝利のために一番努力したことは何ですか?

染谷:チーム力を高めていくにはどうしたらいいか、練習中も常に考えていました。私はキャプテンを任されているので、練習がきついときもマイナス発言はしないようにしたり、けがをしているメンバーともよく話したり、「みんなで一緒に頑張ろう!」と声に出しながらやってきました。私自身はポジティブな方で、きついメニューでも嫌だなと思うこともあまりないので、その性格のおかげかもしれませんが(笑)。

内山:私は今回、団体戦・ダブルス・シングルスの3種目・全18試合に出場しました。体力的にきつくなって負けるのだけは嫌だったので、嫌いな走り込みやウェイトトレーニングも率先してやってきました。そうすると自分と向き合う時間も増えて、身の回りの整理整頓や、お菓子を断とうという意識になれたんです。勝利という明確な目標に向かって努力できたと思います。


―― 今回のインターハイ全体に対する感想を教えてください。

染谷:高校最後の大きな大会だし、今いるメンバーで戦える最後の大会でもあったので、絶対にいい形で終わりたいと思っていました。全ての高校生がインターハイに勝つことを目標にしています。その中で優勝するのはすごく意味のあること。私たちは昨年の優勝校なので、他校から向かってこられる立場でしたが、それを跳ね返せたのは本当に良かったです。

内山:大会に臨む前まではあまり実感がなかったんですが、今思うとすごくワクワクしていたし、楽しみでしょうがなかったんだなって思います。こんな気持ちはすごく久しぶりだったので、やっぱり特別な大会。その分しっかり準備し、努力もしてきたので、「勝とう!」という気持ちをすごく出せた大会でした。

ここで学んだ「主体性」があればどこに行っても通用する

【顧問・本多裕樹先生インタビュー】

―― 優勝後、選手たちにどのような言葉をかけられましたか?

本多:うれしさとともに、正直ほっとしたという気持ちを伝えました。今年は前監督が抜けて3年目。つまり、1年生から3年生まで全て自分が教えた選手です。僕にとっては、この3年間指導してきたものを出す、集大成のような大会でした。

その上、中学時代にトップの成績だった選手も多い。負けるようなことがあれば、自分の指導の責任という思いがあったので、ものすごくプレッシャーを感じる大会でした。試合が終わった後、実はそういう思いを抱いていたと伝えたのです。そして、ここまで本当によく頑張ってきたねと言いました。


―― 日頃の練習ではどのようなことに注意して指導されていましたか?

本多:インドネシア出身のコーチの「楽しみながら練習する」という指導法を取り入れています。のびのびと自分のやりたいことをやれるような雰囲気があるので、その中で自分の課題を自分に考えさせ、それを克服するための練習メニューをコーチ陣が一緒に考えるようにしてきました。


―― 一言で表現するなら、どのようなチームだと思われますか?

本多:いろいろな意味で「自由」。選手は自分の強みをちゃんと理解して、それを伸ばそうと自分の考えで練習するので、コーチ陣はそれをサポートしています。ただ、自由というのは難しくて、履き違えると自由奔放でまとまりがないチームになってしまうので、そこはコントロールしながらやっていました。

例えば、人としてもプレイヤーとしても間違ったことを見たり聞いたりしたら、そこは徹底的に指導する。勝つための規則やルールというのはしっかりあって、「自律した自由」と「勝つための規則」が両立しているチームだと思います。


―― 今後、優勝した経験をどのように生かしてほしいと思われますか?

本多:インターハイの経験はもちろん大きな出来事ではあるんですが、今後のプレイヤー人生から見たら、1つの通過点です。ここは世界を舞台に戦っていける選手を育成するための場ですし、僕もそういう視点で指導してきました。

ときには悪役も引き受けながらチームをまとめてくれる染谷や、破天荒なところがあっても実力は折り紙つきの内山をはじめ、他の選手もみんな、主体性を持って取り組んでくれました。100%受け身ではなく、自分の考えをしっかり持つことは、実はトッププレイヤーになる必須条件。ここで学んだ「主体性」があればどこに行っても通用すると思うので、ぜひ生かしていってほしいですね。



春の選抜で課題だった「チーム力不足」をインターハイまでに見事巻き返したふたば未来学園高校。その底力にはは驚くばかりです。練習中は元気よく声を出し、笑顔も多かったのが印象的でした。厳しい練習に耐えるとともに、どのチームよりもバドミントンを楽しめたことが、優勝の要因だったのではないでしょうか。選手たちはこの経験を糧に、今後もさらに成長してくれるはず。世界での活躍が本当に楽しみです。

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顧問・本多裕樹先生
染谷菜々美さん(3年)、内山智尋さん(3年)