Point
■動画内の顔を変えて、プライバシーを保護することのできるソフトウェア「DeepPrivacy」が開発される
■顔の特定領域を保護対象として設定し、そこに他人の顔画像を組み込むという仕組み
テクノロジーの発展とともに来る(かもしれない)監視社会に、私たちはどう抵抗すれば良いのでしょうか?
そんな不安を解決しようと名乗り出たのが、ノルウェー科学技術大学のある研究チームです。彼らは動画内の顔を変えるソフトウェア「DeepPrivacy」を開発しました。
これは、保護対象となる顔を数百万の画像データにある他人の顔を重ねることで、個人のプライバシーを守れる画期的なプログラムなのです。
顔に顔を重ねるマスキングはリアルタイムで行われるため、動いたり話したりするたびに顔が変化する仕組み。この技術は、スカイプやビデオ通話、その他の映像媒体での活用が期待されています。
研究の詳細は、9月10日付けで「arXiv」に掲載されました。
https://arxiv.org/abs/1909.04538
動きに合わせて顔が自動変化
「DeepPrivacy」には、AIの画像生成でおなじみの「GANs(generative adversarial networks=敵対的生成ネットワーク)」が用いられています。GANsにより、オリジナルの顔が数百万のデータセットの中から自動的に選択された顔と交換されるのです。
マスキングの仕組みとしては、まず、動画の中の物体を検出してその部分を四角い枠で囲む「バウンディングボックス」が使われます。次に、「アノテーション」と呼ばれる注釈をそこにつけることで、バウンディングボックス部分を認識・特定されたくない領域として設定します。
あとは、顔の動きに合わせて、自動で他人の顔がはめ込まれるという仕掛けです。
100万を越える画像データから顔を生成
顔写真データは、約147万枚もの顔画像を集めた「YFCC100M」から選択されます。
このデータは、Flickr(写真共有サイト)のユーザーが投稿した顔写真から集められたものです。CCライセンス(クリエイティブ・コモンズ・ライセンス)で利用されているので、誰でも自由に利用できます。
CCライセンスとは、画像・作品を一般公開する作者が「条件を守れば自分の画像・作品を自由に使って良い」ことを意思表示するためのサインです。
かなりの精度でプライバシー保護ができる一方で、保護領域以外の耳や髪、服装などは、対象からはみ出てしまうため、そこから身元を特定される恐れもあります。
研究チームは今後、顔以外の全体的な匿名化を実現させ、プライバシー保護を強化する試みを視野に入れています。
このシステムは動画内に制限されていますが、フィリップ・K・ディックのSF小説『スキャナー・ダークリー』の「スクランブル・スーツ」のようなものが開発されれば、今度は現実空間でのプライバシー保護も可能になるかもしれませんね。
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