2013年リリースし、1日当たりのアクティブユーザー数(全世界)が1000万人に達しているというチャットツールSlack」。昨今では「Google Drive」「Salesforce」「SAP Concur」「Office 365」などと連携し、トークルーム内で経費申請、予定の管理、人材採用の管理といった作業が可能になった。複数のツールを立ち上げて別個に操作する手間などを解消できるため、無駄な業務の削減につながると期待を集めている。

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 提供元の米Slack Technlogiesが9月17日に開いたカンファレンス「Frontiers Tour Tokyo」では、東京大学アメリカンフットボール部やメルカリなど、Slackとさまざまな外部ツールを連携させている顧客が活用術を紹介した。

Slackからプロテインが買える!

 カンファレンスの基調講演ではゲストスピーカーとして、東大アメフト部の監督を任める三沢英生氏が登壇。同氏は「アンダーアーマー」の国内販売元・ドームの常務執行役員も兼任しており、企業で得たSlack活用のノウハウを部員マネジメントに応用している。

 東大アメフト部では現在、全ての現役部員・コーチトレーナーに加え、OB・OGやファンクラブなど、合計で数百人のユーザーSlackを利用。目的別にチャンネルグループトーク機能)を立ち上げて会話しているという。

 三沢氏はSlackを多様な外部ツールと連携させ、チーム力の強化や定型業務の省力化に生かしている。例えば、選手個人のトークルームは、スマートフォンで食事を撮影してSlackで送信すると、毎回の摂取カロリーと、タンパク質炭水化物の量を算出してくれるアプリと連携。同アプリは、Slackで選手に食生活のアドバイスを送る機能や、タンパク質が足りない場合にドームのECサイトに遷移し、同社のプロテインDNS」をすすめる機能も持ち、選手の栄養状態を改善できるという。

 三沢氏はこの他、選手の管理・指導を効率化するため、欠席連絡用のSlackチャンネルを立ち上げて「Google フォーム」と連携。欠席・遅刻する選手に「試験が入ったため遅れます」などと理由と合わせて入力してもらい、出欠状況を一元管理できるようにした。また、部費の管理には「Money Forward」、スケジュール管理にはドームが独自開発したアプリを導入し、Slackと連携させて使っているという。

●選手はデジタルネイティブだった

 こうした最新のツールを導入している理由は、無駄な業務を減らして練習や運営に充てる時間を増やすことだといい、三沢氏は「チームと企業の運営は全く一緒。ヒト・モノ・カネというリソース最適化チーム成長のカギだ」と強調する。

 選手たちは一連のツールに慣れ親しんでおり、「選手はデジタルネイティブで、こちらが教えなくても勝手に使えるようになった。(Slackなどを)押し付けているつもりはなく、ボトムアップで自然と(体制が)出来上がった。『そんな使い方があるのか!』とこちらが驚かされることも多い」とITリテラシーを称賛した。

 そんな東大アメフト部だが、先日出場したトーナメントでは1回戦で負けてしまったという。三沢氏は「ルーティンワークの負荷を軽減し、ゆくゆくは日本一チームにしたい。もし甲子園ボウル(全国大会)に出られたら、Slackのおかげだと思ってほしい」と熱く語り、聴衆を盛り上げた。

メルカリは5年前から社内メール使わず、Slackに一本化

 顧客企業が導入事例を紹介するセッションには、メルカリ長谷川秀樹CIO(最高情報責任者)が登壇した。東急ハンズの執行役員としてオムニチャネル化を推進した実績を持つ長谷川CIOは、約1年前に「世界一働きやすいIT環境を整備する」との目標を掲げてメルカリに移った。

 だがメルカリは、約5年前から社内メールを使っておらず、全社の連絡手段をSlackを一本化している。そのため長谷川CIOは着任当初、Slackを使った働き方や意思疎通のスピード感に驚かされたという。

 「Slackなどのビジネスチャットは、メールの『to』や『cc』の使い分け、『お世話になっております』といったあいさつを省略できるツールだと思っていた。だがそれは勘違いだった。メルカリSlack上では複数のプロジェクトが並行して動いており、(議論が別々のチャンネルで)同時進行していた。カレンダーが会議の予定でブロックされることはほぼなく、議論はSlack内でどんどん進んでいた」(長谷川CIO

 同社は原則として、誰でも参加できる「パブリックチャンネル」でのやりとりを推奨しており、参加が特定のユーザーに限定される「プライベートチャンネル」はあまり使われていない。チャンネルへの招待・退出も自由にしている。議論はオープンになっており、誰でも会話内容を閲覧できるため、「後から誰かが『オレ聞いてません』『その資料読んでません』と言い出すケースはなかった」と長谷川CIOは断言する。

●「Google ドキュメント」でリアルタイムに議事録作成

 Slack内で情報共有がほぼ完結しているメルカリだが、テキストだけでは細かなニュアンスや文脈を伝えられない場合があるため、まれに会議やビデオ通話を行っているという。その際は後から議論の内容を確認できるよう、若手などが「Google ドキュメント」に議事録をまとめているとしている。

 「SlackGoogle ドキュメントと連携できるため、担当者は会議を聞きながらその場で議事録を更新し、チャンネルの参加者に公開している。参加者は記載内容に間違いがあればすぐに指摘できるため、後から『そんな発言していない』『そんなつもりで言っていない』と言い出す人もいない」(長谷川CIO

●「Unipos」と連携、Slackでピアボーナスを贈り合える

 Slackに慣れ親しんだ長谷川CIOは現在、Googleドキュメントにとどまらず、多様な外部ツールSlackと連携している。そのうちの1つが、従業員同士で少額のボーナスを贈り合えるサービスUnipos」だ。長谷川CIOは、全社員に毎週500円相当のポイントを配布し、Slack上で同僚に贈れる仕組みを導入。ポイントがたまると、毎月の給与と一緒に振り込まれる仕様にし、社内コミュニケーションの活性化につなげているという。

 メルカリはこの他、Slackと経費精算ツール「SAP Concur」を連携。従業員はSlack上のフォームに金額を記入すると、自動で経費精算フローに乗る仕組みを採用している。

 従業員に配布している法人クレジットカードもSAP Concurと連携させ、社員がカードで経費を使った場合は、Slackbotから「2日前に○○で△△を購入しましたね?」とリマインドする流れにしている。

 長谷川CIOは「(リマインドの)ファーストタッチは秘書から来てくれるとうれしい。でも、月末に『ちゃんとしてるか?』とリマインドするだけでは、経費申請のフローが形骸化してしまう」とし、社員が申請を忘れないよう、botが話し掛けるペースを工夫していることを明かした。

 メルカリはこれ以外にも、社員がSlack上のbotに「いでよ公開数字」「座席表くれ」「いでよ会社資料」などと、必要な資料名に「くれ」「いでよ」を付けて話しかけると、必要なファイルを送ってくれるアプリなどを自社開発。バックオフィス業務がSlack内で完結するようにし、長谷川CIOが掲げる「世界一働きやすいIT環境」の実現に向けてまい進しているという。

東京大学アメリカンフットボール部が導入事例を紹介