Credit: NASA/Jet Propulsion Laboratory

Point

■木星の第1衛星イオ最大の火山「ロキ」が今月中にも噴火しそうであるという報告が出された

■噴火の周期が約475日であるという算出結果から次の噴火が近いことが判明

■ロキはサイズが大きいために、小さい火山が影響を受けがちな微細な因子の影響を受けにくく、噴火の時期が予測できた

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木星の第1衛星イオの表面には、”parterae”として知られる平均直径が41キロメートルほどの巨大な火山性凹地が点在しています。

その中でも最大のものが、直径202キロメートルのロキ火口Loki Parera)です。

イオで最も強力な火山であり、イオ全体の熱出力に対して平均で 25% の割合を占めるロキ。このロキが、今月中にも噴火しそうであるという報告が、Planetary Science Instituteでシニア・サイエンティストを務めるジュリー・ラスバーン氏によって出されました。

噴火の周期が予測できるのはサイズが大きいからこそ

ラスバーン氏が2002年に発表した論文では、1990年代のロキの噴火の周期は約540日であると示されていました。

しかし今回ラスバーン氏が改めて算出しなおしたところ、ロキの噴火の周期が約475日であるという推測が導き出されました。

前回の噴火が今から約475日前の2018年5月であったことから、次回の噴火が秒読みであることが判明したのです。

Credit: NASA/Jet Propulsion Laboratory

火山の噴火には、マグマ供給率、マグマの組成(特にマグマ内部の気泡の有無)、火山が位置する岩の種類、岩の割れ目の状態といった数多くの因子が影響するため、その時期の予測は大変困難です。

それにもかかわらず、ロキの噴火の時期が今回予測できたのは、そのサイズが大きいからです。大きいために、噴火の際には基礎物理の支配を受け、その他の小さい火山が影響を受けがちな微細で複雑な因子が、ロキにはそれほど大きく影響しないのです。

悪戯好きの神「ロキ」はとっても気まぐれ

ロキ最大の特徴は、噴出しては固まり、さらに噴出を繰り返すといったリズミカルで巨大な溶岩湖を持っていることです。

元々「ロキ」という名前は、北欧神話に登場する悪戯好きの神「ロキ」に由来しています。ロキは得意の変身術を使って、男神であるのに女性に变化したり、他者に呪文をかけて強制的に変身させるなど、邪悪でずる賢く、平気で嘘をつく神様です。

魚網をもつロキ。18世紀のアイスランドの写本『SÁM 66』より。 / Credit: Soerfm/Wikimedia Commons

今のところ噴火が実際に観察されていないことから、ラスバーン氏は「ロキは、ペテン師の神に因んで名前がつけられているので、気をつけなければなりません」と冗談混じりに語っています。

実際、2002年に噴火の周期が540日であることが発表されて以降、ロキの活動は変化し、2013年頃までは周期的な活動が観測されませんでした。やはり、とても気まぐれな火山のようです。

ラスバーン氏の予測がずばり当たるのか、それとも神様の悪戯にまんまと騙されてしまうのか? 結果が楽しみですね。

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木星の衛星イオ最大の火山「ロキ」が今月中にも噴火しそう