さまざまな作物の収穫が盛んになる秋。イモ類もおいしい季節ですが、一口に「イモ」といってもいろいろな種類があります。中でも、粘り気のある種類として知られるのが「ヤマイモ」ですが、野菜売り場には、「ナガイモ」「ヤマトイモ」という名称のイモもあります。これらはすべて同じイモなのでしょうか。料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。

ヤマイモは「ヤマノイモ科」の総称

Q.「ヤマイモ」とは、どのようなイモなのでしょうか。

関口さん「ヤマイモは一般に『山芋』という種類のように思われがちですが、実際には『ヤマノイモ科』に属するイモ類の総称です。『イチョウイモ』『ツクネイモ』『ナガイモ』などがヤマイモの仲間です。

これらヤマイモの仲間の中で、ナガイモが最も多く栽培されており、8割を超えています。産地は北海道青森県だけで全体の7割近くになります。旬はナガイモの場合、春掘りの4、5月、秋掘りの12、1月と2回ありますが、その他のイモは秋から冬にかけて旬を迎えます」

Q.それぞれの特徴を教えてください。

関口さん「ナガイモ(長芋)は水分が多く、みずみずしいため、サクサクッとした軽い食感が特徴で、すりおろすと『とろろ状』になります。その名の通り、見た目の形状も長い円柱形です。

ツクネイモは、こぶし形の丸いイモです。強い粘りがあり、ナガイモに比べて水分が少なく、すりおろすと濃厚でもっちりとした感じになります。ダイコンにも含まれている『ジアスターゼ』などの消化酵素があり、ピリッとした刺激があります。奈良県の伝統野菜『大和野菜』に認定されている『大和いも(ヤマトイモ)』も、ツクネイモです。

イチョウイモは名前のごとく、イチョウのような扇型の部分と、茎のような細長い部分とを合わせたような形状をしています。ツクネイモと同様、強い粘りがあり、ナガイモより水分が少なく、すりおろすと濃厚でもっちりとします。ジアスターゼなどの消化酵素も含んでいます。なお関東では、イチョウイモが『大和芋』として流通しています」

Q.「ヤマトイモ」は、奈良県と関東で違うイモを指すということでしょうか。

関口「はい。奈良県など関西地域ではツクネイモのことを指し、関東地域ではイチョウイモを指します」

Q.ヤマイモの粘り気の正体は何でしょうか。栄養面も含めて教えてください。

関口さん「多糖類の水溶性食物繊維がネバネバの正体です。オクラやモロヘイヤ、ナメコなどのネバネバ成分と同様、免疫機能を高め、コレステロールや糖の吸収を抑制したり、肝機能や腎臓の働きを強化したりするなどの健康効果が知られています。コレステロール低下、高血圧や動脈硬化の予防にも役立ちます。

また、ヤマイモは生でも食べることができ、先述したように、消化酵素であるジアスターゼやアミラーゼを含み、胃もたれの改善や解毒作用もあります。ヤマイモに含まれる『コリン』という栄養素は、脳機能の維持や改善にも役立ちます。疲労回復や滋養強壮、病後の体力回復、虚弱体質の改善にも向いています」

Q.適切な保存方法は。

関口さん「乾燥を防ぐため、土が付いたまま新聞紙などに包み、風通しの良い冷暗所に置いておきます。洗って切ったものはラップに包んで冷蔵庫に入れ、早めに消費してください。皮をむいて輪切りにしたものにラップをして冷凍したり、すりおろしたものを保存袋に入れて冷凍したりすることも可能です」

Q.ヤマイモの特徴を生かした料理を教えてください。

関口さん「すりおろしたヤマイモをそのまま一口大にすくってフライパンで揚げ焼きし、しょうゆを絡めて、のりで巻く磯辺焼きはお勧めです。熱を加えると、生のときとは全く違ったモチモチ、フワフワ感が楽しめます。強い粘りが特徴なので、お好み焼きのふんわり感を出す『つなぎ』にも適しています」

オトナンサー編集部

すりおろすと粘り気が増すヤマイモ