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Point

■天敵のヘビから巣を守ってもらうため、別種のヘビを巣に住まわせるアリが存在する

■そのアリは、天敵のヘビが侵入してきたらすぐに避難・撃退行動を取るが、味方のヘビには何もしない

■産卵シーズンというアリが攻撃的な時期に、他の生物が巣の中に同居しているのは異例のこと

シジミチョウの幼虫や食虫植物など、アリと共生する生物たちはいくつか存在します。しかし今回ご紹介するのは、同じ「ヘビ」に敵と味方がいるというちょっと変わったアリです。

琉球大学の研究により、マダガスカルに生息するアリには、天敵から巣を守るためにヘビを味方につける種がいることが報告されました。

研究主任の城野哲平氏によると、アリの天敵となる生物もまた別種のヘビであり、アリは2種類のヘビを見分けて、まったく異なる対応をするとのこと。

ヘビから身を守るためヘビに頼る、なかなか大胆な発想ですね。

研究の詳細は、8月14日付けで「Royal Society Open Science」に掲載されています。

Novel cooperative antipredator tactics of an ant specialized against a snake
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.190283

三つ巴の関係性

マダガスカルに生息する学名「Aphaenogaster swammerdami」というアリは、地中下に巨大な巣を作ってコロニーで生活しています。

しかし不運なことに、アリを主食とするヘビも同じ地域を生息場所としています。

学名「Madatyphlops decorsei」と呼ばれるこの種は目が退化した盲蛇ですが、マダガスカルでも最大級のヘビで、天敵がほとんどいません。

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彼らの唯一の天敵と知られるのが「Madagascarophis colubrinus」というヘビ。地元の住民は、このヘビを「アントマザー(アリの母)」と呼んでいます。

アントマザーは、アリに攻撃することも攻撃されることもなく、きわめて平和的にアリの巣の中で同居している様子が頻繁に観察されているからです。

「住んでもいいから、巣を守って」

今回研究チームによって、この2種類のヘビに対するアリの対応の違いが明らかになりました。

まず、天敵である盲蛇が巣に侵入してくると、アリは急いで幼虫や卵を安全な保護場所に避難させました。しかし、逃げるだけでは盲蛇を追い払えず、アリだけで撃退することも困難です。

一方、盲蛇の天敵であるアントマザーが巣に入ってきても、アリは攻撃も避難もせず、友好的に受け入れていました。研究チームは「アントマザーを巣に住まわせる見返りとして、天敵からの保護を頼んでいるのではないか」と推測しています。

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さらに、アントマザーが好んでアリの巣に訪れることから、巣の中の温度や湿度もヘビの居心地が良いよう一定に保たれているとのこと。アントマザーも、居住空間を提供してくれるアリを襲うことはしないでしょう。

こうしたアリとヘビの関係性が観察されたのは、世界でも初めてとのこと。

以前にもヘビがアリの巣の中で発見されるという事例は報告されていますが、それはどれも冬の時期だけです。冬はアリの産卵シーズンではないので、巣の活動も停止状態にあり、他の動物が住んでしまうケースが多いといいます。

よって、アリたちが非常に敏感で攻撃的になる産卵シーズンに、ヘビが巣の中に同居していることは異例のケースなのです。

巣を守ってもらう代わりに住居を提供するアリとヘビの関係。生き物の世界でも、等価交換は存在するようですね。

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reference: psychologytoday / written by くらのすけ
天敵のヘビから身を守るために別のヘビに助けを求めるアリがいる