高度経済成長期に大量に建築された団地。現在ではその団地の多くが築40年を越え、「団地の老朽化」が深刻な社会問題となってきています。

今回の記事では、団地の老朽化の現状とそこから派生する諸問題、また団地の将来について深堀していきます。

団地の老朽化の現状

現在、日本における団地の約3割が入居開始から40年以上経過しているという状態です。それらの団地は40年という歳月による物理的な老朽化だけでなく、社会的老朽化、そして入居者の高齢化など、さまざまな問題が表面化してきています。

団地の老朽化

物理的老朽化

築40年以上経過している団地ですから、物理的な老朽化は避けることができません。40年という歳月を経ていれば水回りや外壁など、あちこちが劣化してきています。

またそれらの劣化から耐震上の問題が発生しているという団地もあります。そのような物理的老朽化が起こった状態からさらに悪循環が起こり、老朽化により団地の空室が増え、空室が増えると修繕のための資金確保も行えなくなる、といった状態に陥っている団地もあります。

社会的老朽化

実は老朽化に関しては物理的なものだけでなく、築40年ともなると「社会的老朽化」も起こっています。

社会的老朽化とはどのようなことかというと、例えば間取り一つにしても、40年前に求められていた間取りと、現在求められている間取りとでは大きく異なります。以前は「部屋数」が重視されていましたが、今は部屋数が減っても広いリビングのほうが好まれるようになってきているなど、時代とともにキッチン(K)からダイニングキッチン(DK)へ、そしてリビング付きダイニングキッチンへ (LDK)へと生活スタイルも変わってきています。

また、老朽化した団地に関しては「5階建エレベーター無し」という物件も多くあります。現在、そのような条件ではなかなか居住者も集まりにくく、特に4階、5階での空室が増えています。現代の子育て世代にとって、5階建エレベーター無しというのはなかなか受け入れられないというのが実情のようです。

入居者の高齢化

そして最後に、「入居者の高齢化」です。当時30歳だった入居者も、40年経過した現在では70歳。もちろんそれ以上の年齢の居住者も多くいます。

団地生活による階段の上り下りは厳しくなります。また、車椅子などを利用し始めるような場合にはエレベーター無しの団地では生活することが難しく、転居する高齢者もいます。

さらに高齢化が進むと、今度は相続が発生するようになり、高齢化により団地の空室は増えていく一方です。この団地の高齢化はますます加速していき、入居者全体の40%を超えるとも言われています。団地居住者の半数近くが高齢者となり、コミュニティの弱体化も懸念されています。

入居者の高齢化

団地老朽化による諸問題

では、団地老朽化に伴い今後どのような問題が発生する、もしくは現在発生しているのでしょうか。

団地の老朽化やそのほかの理由も重なって、団地の空室率は年々増加しているのが現状です。この状態が続くと団地が廃墟と化し、「衛生環境の悪化」や「景観の悪化」、「治安の悪化」などに繋がっていくことが懸念されています。

また、団地に空室が多いということは経済も活発に動きませんので、間接的にその団地のある地域経済にとっても良い影響は与えません。

団地老朽化問題

若い世代に人気のリノベーション

現在、団地の大規模なリノベーションによる再開発が活発に行われている地域もあります。

例えば、東京郊外の多摩ニュータウン昭和46年から入居が始まった多摩ニュータウンも、団地の老朽化により高齢化率が増加し続けていました。そこで、最も古くからあるエレベーターの無い5階建「諏訪二丁目住宅」を「ブリリア多摩ニュータウン」へと変貌させます。ブリリア多摩ニュータウンは、以前の5階建の団地23棟から14階建の高層マンション7棟へと変わり、高齢化の進んでいた地域に子育て世代の入居者を獲得することに成功しています。

また、無印良品とUR都市機構リノベーションプロジェクトを行い、老朽化が進む団地を再生しようとする動きもあります。このプロジェクトでは無印とURがコラボし、若者が好みそうな「おしゃれな団地」を作り上げています。この企画では通常の募集の2倍の応募者を獲得することができ、20代、30代が8割を占めているとのことです。

団地の再開発に向けた今後の課題

団地の老朽化が社会的な問題となるなか、徐々に企業や地域が動き始めています。しかし、団地の再開発はまだまだ法律的な部分でも敷居が高く、課題も多く残っています。

区分所有法による改修は住民の3/4以上の賛成、建て替えに関しては4/5以上の賛成が必要となっています。さらに、取り壊しによる建て替えには「全員の同意」が必要となります。しかし近年の改正により、少しずつではありますが敷居は低くなっており、耐震性不足のマンションについては条件の緩和が行われるなどの変化も起こりつつあります。

それでもまだまだハードルが高い団地の再開発。団地老朽化問題の解決は個々で行うことは難しく、国、地域、企業の協力が求められます。