ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、孤児であり兵士であった少女・ヴァイレットが、自動手記人形=手紙の代筆業を通じて、かつての上官・ギルベルトの最期のことば「愛してる」の意味を知っていく物語である。京都アニメーションの圧倒的な映像美は全世界が知るところだが、それにふさわしいこの物語の魅力をひとりでも多くの人へ届けたくて、筆を執っている。

◆「愛してるを、知りたいのです」
 主人公ヴァイレットは、戦場しか知らない無垢な少女だ。テレビシリーズ全14話(うち1話は番外編)では一から手紙の代筆に取り組むものの、その純粋さゆえに言葉を字面どおりに捉えるなど、立ち止まることもしばしばだった。それでも彼女は、健気に愛を知ろうとする。なかなか言い出せない家族への気持ちを。恋心を。ときには最期のことばを手紙に書き、届ける。その手紙によって想いがまじわった瞬間の輝きは、確実にヴァイレットへ変化をもたらしていく。豊かで繊細なアニメーションと音楽に包まれて、彼女の心がすこしずつ花開いていく様(さま)は美しく、愛おしい。

◆「手紙なら、伝えられる」
 一方で、ヴァイレットが理解していくのは、愛だけに留まらない。人の心に触れれば触れるほど、失う悲しみを知ってしまったり、自らの戦場での過ちに気づいたり、心の痛みを抱えるようになってしまう。

彼女の悲しげな表情にこんなにも胸が詰まるのはどうしてだろう。戦うことしか知らなくて見えなくなってしまうこと。思いがけず、大切ななにかを失うこと。消せない過去に苦しむことも。そうしたことに、後から気づいてしまうことも……。

なんだか、自分にも覚えがある。だからだろうか。ヴァイレットと彼女に関わる人々の、それぞれの試練へと向き合う懸命な姿は、心の奥の方まで響いてくる。明日へ向かう勇気を、生きる勇気を与えてもらっているのは私の方だ。そしてきっと、私だけではない。これは彼女の手紙の力であり、そして、京都アニメーションの作品の力そのものであるように思える。

◆外伝
 現在公開中の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝」(以下、外伝)では、全寮制女学校に通うイザベラ=ヨークのもとへ家庭教師に就くところから物語は幕を開ける。のちに明かされる過去を背景に、他の学生と関わらず、孤独に過ごそうとするイザベラ。そんな彼女を守るように寄り添うヴァイレットは、劇中で「騎士姫様」とも囁かれるほど、凛々しく逞(たくま)しい。

二人の想いのやり取りには初見でも目と心を奪われるだろうが、ヴァイレットの今までを見守っていればいるほど、周りから与えられてきた想いを、少しずつ分け与えていく様(さま)により一層心を打たれてしまう。

また、茅原実里さんの手がける「エイミー」は、作品に寄り添った心に響く主題歌だ。遠く離れてしまった大切な人と、名前を通じた繋がりを想うこの歌と共に、エンドロールには、制作に携わったすべての人の名前が載せられている。耳を傾けながらスクリーンを見つめ続けた。1枚の手紙を、最後の一文字まで大切に読むように。私の体の内側から、そして、いろいろな場所から聴こえる落涙の音が、静かに音楽と混ざり合っていく。まるでこの作品に込められた想いと、私たちの想いとが、まじわっていくようだった。

◆「永遠」の物語
 外伝には「永遠と自動手記人形」という副題がついている。世の中は移ろいが激しい。季節のめぐりを感じることよりも、過ぎ去るなにかの喪失感が胸を掠めるばかりだ。それでも、もうたとえいまは存在していなくても、ずっと自分の胸に残り続けるなにかは存在する。少なくともこの作品との出逢いは、確かに私たちに「永遠」があることを感じさせてくれる。

そして、外伝の公開と共に、来年1月公開予定だった「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は「鋭意製作中」と発表された。公式サイトhttp://www.violet-evergarden.jp/ )には、今年4月に発表された石立太一監督からファンへの「手紙」が掲載されている。

監督だけではない。作品に触れた誰もが、彼女の幸せを願わずにいられない。また、作品を通じて多くの心が救われることも、心から。だから私は、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」をいつまでも、心から待っている。

撮影:飯本貴子