柳生博が、倉本聰脚本の帯ドラマ劇場「やすらぎの刻〜道」(毎週月~金曜昼0:30-0:50ほか、テレビ朝日系ほか)に出演することが明らかになった。柳生が連続ドラマにレギュラー出演するのは、約20年ぶりとなる。

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ドラマ「非情のライセンス」第3シリーズ(1980年)や「飛び出せ!青春」(1972~73年)など、数々のドラマ・映画で活躍した柳生は、クイズ番組「100万円クイズハンター」(1981~1993年テレビ朝日系)の司会者としても知られる名優。

1970年代後半に子供たちがいじめに遭ったことをきっかけに山梨・北杜に移住し、八ヶ岳に雑木林を復活させる活動に励む他、“野鳥の会”会長も務め、その忙しさから拘束時間の長いドラマや映画は「ほとんど全てオファーを断ってきた」という。

しかし今回、倉本と“運命の再会”を果たしたことで出演を決意。柳生自身「最後のドラマ出演のつもり」と語る、奇跡のキャスティングが実現した。

出演決定の経緯について、柳生は倉本が家を訪ねてきた時のことを振り返り「2階のテラスに出たら、サングラス姿のアブナイ感じの男たちが車でやって来て、『オイ、柳生ーっ!』って下から怒鳴るんですよ。この辺りで僕を呼び捨てにする人はいないので、てっきり“反社会的”な方々だと思って、『どちら様ですか』と対応したら、『オレだよ、倉本だよ!』って…(笑)」と説明。

そこから一緒に飲んだ際、「どうやらそのとき僕が『なぜ俺を(「やすらぎの郷」に)出さないんだ!』と倉本さんに言ったらしいんです。酔っていたから覚えていないのですが…(笑)」と、まさかの“逆オファー”だったことを明かした。

柳生は前作「やすらぎの郷」から視聴しているといい、「ほとんどのキャストの方と共演した経験があるので、まるで“テレビ同窓会”のような気分で…(笑)。今までこんなにも大挙して年寄りたちが出てくる番組なんてなかったですから、倉本さんは本当にスゴイことを考えるよねぇ」としみじみ。

撮影は8月半ばからスタートしており、「この現場は昔ながらの伝統が息づいていて、まるでタイムスリップしたみたいでうれしかったですね」と感慨深く語った。また、「僕にとって、この作品が最後のドラマ出演のつもりです」とも語っており、御年82歳の柳生の名演を堪能できる貴重な機会となりそうだ。

同作は、老人ホーム「やすらぎの郷 La Strada」に入居する往年のスターたちのその後を描くとともに、彼らの人間模様を見詰めてきた脚本家・栄(石坂浩二)によるシナリオ「道」を劇中で映像化する物語。

柳生は「道」の第2章ともいえる、橋爪功・風吹ジュンが主人公を務める“平成編”に登場。村のまとめ役ともいうべき存在の“荒木”の晩年を演じる。「道」の“平成編”は11月スタート予定。

柳生博コメント

――久しぶりとなる連続ドラマ出演を決意された理由を教えてください。

連続ドラマに出演するのは、もう20年ぶりぐらいです。45年以上前、息子のいじめをきっかけに、かつて自分がひとり旅で訪れた八ヶ岳南麓に移住しました。八ヶ岳の雑木林を再生させる活動をはじめ、長年務めてきた“日本野鳥の会”の会長の仕事も忙しく、拘束時間の長いドラマや映画の仕事はほとんど全てオファーを断ってきたんです。

この「やすらぎの刻~道」の出演を決めたのは2年前、倉本(聰)さんとバッタリお会いしたのが、いちばん大きいですね。庭仕事を終えて夕方、ワインでも飲もうかなと思って2階のテラスに出たら、サングラス姿のアブナイ感じの男たちが車でやって来て、「オイ、柳生ーっ!」って下から怒鳴るんですよ。この辺りで僕を呼び捨てにする人はいないので、てっきり“反社会的”な方々だと思って、「どちら様ですか」と対応したら、「オレだよ、倉本だよ!」って…(笑)。

そこから一緒に飲み始めて、どうやらそのとき僕が「なぜ俺を(「やすらぎの郷」に)出さないんだ!」と倉本さんに言ったらしいんです。酔っていたから覚えていないのですが…(笑)。

また、“姫(=九条摂子)”役の八千草薫さんも八ヶ岳に別荘をお持ちで、旧知の仲。いまや僕を呼び捨てで呼ぶのは倉本さんだけですし、「柳生くん」とくんづけで呼ぶのは八千草さんと瀬戸内寂聴さんだけです。そういう古くからのつながりがあるお二人が関わっている作品だからこそ、出演を決めました。

――「やすらぎの郷」、そして「やすらぎの刻~道」はご覧になっていましたか?

「やすらぎの郷」も、この春始まった「やすらぎの刻~道」もずっと拝見してきました。ほとんどのキャストの方と共演した経験があるので、まるで“テレビ同窓会”のような気分で…(笑)。今までこんなにも大挙して年寄りたちが出てくる番組なんてなかったですから、倉本さんは本当にスゴイことを考えるよねぇ。しかもみんな、いい芝居をしていてスゴイなぁと感心していました。だから僕もずっと“やすらぎ”の世界に入りたくて、再会したとき、つい倉本さんに要望しちゃったんでしょうね(笑)。

――久しぶりにドラマの撮影現場に立たれた感想は?

機材などはすっかり新しくなっていますが、この現場は昔ながらの伝統が息づいていて、まるでタイムスリップしたみたいでうれしかったですね。昔、映画に携わる人間のことを“活動屋”と呼んでいた時代は、売れているか否かなんて関係なく、1歳でも年上なら敬っていたものです。たとえば石原裕次郎さんと初めてご一緒したとき、当時、大スターの裕次郎さんが「おはようございます」と椅子を持ってきてくれて、「コーヒーがいいですか? 紅茶ですか?」と聞いてくれたんですから。でも実は僕のほうが年下だったことが分かって、後で怒られちゃったのですが…(笑)。

この「やすらぎの刻~道」の現場にも年上を敬う伝統が残っているので、大変感激しています。

――倉本さんとのエピソードを教えてください。

倉本さんとは、特に単発ドラマ時代の「東芝日曜劇場」でいろいろな役をいただきました。その打ち上げで倉本さんとお酒を飲むのが好きでしたね。倉本さんはいたずら好きで、僕は度々ドッキリに引っ掛けられました(笑)。

これまでいろいろな作家さんとお仕事をしましたが、実は一番緊張するのは倉本さんの脚本。一字一句間違えないで演じないと怒られるので…。今回もセリフにものすごいプレッシャーを感じていました。結局、2つぐらい間違えてしまいましたけどね(笑) 。

――「道」平成編の見どころを教えてください。

このドラマは、田舎の生活が本当にリアルに描かれています。舞台は僕が住んでいる(山梨・)北杜市のすぐ近くですが、物語に描かれている老人たちと子供世代、孫世代との関係性は、まるで僕の周りを見ているかのようです。

また、荒木は嫌なヤツかもしれないけれど、彼も“時代”というものに翻弄されながら生き抜いてきた、ひとりの人間なんです。昔の日本はこうだったよなぁ、今の田舎はこうなんだよなぁ、とこんなにもリアルさを実感した作品は初めて! 役者さんも誰ひとり格好つけて演じている人はいないし、僕自身、ズバリ“適役”だと思っています。僕にとって、この作品が最後のドラマ出演のつもりです。ぜひ“平成編”も多くのみなさんにご覧いただきたいですね。(ザテレビジョン

柳生博が、11月スタート予定の「道」“平成編”に登場!