ソフトバンク(宮内謙社長)、英アーム(サイモンシガースCEO)、博報堂(水島正幸社長)の3社は、企業のデータ活用と新規事業開発を支援する合弁会社・インキュデータを設立した。アームが昨年8月に買収した米トレジャーデータの顧客データ統合基盤「Arm Treasure Data enterprise CDP(eCDP)」の導入・利用に関するコンサルティングサービスを提供する。各社の出資比率は非公開だが、ソフトバンクが筆頭株主となる。10月1日から事業を開始する。

オリジナルで読む



 新会社のインキュデータでは、データ活用に取り組む企業向けに、単にシステム構築や単発のデータ分析を行うだけでなく、データ活用戦略の立案から、博報堂の知見を加えたマーケティング施策の実施、既存事業の改善、新規事業の創出まで、データを軸にした企業変革を包括的に支援していくことを目指す。

 ソフトバンクの法人事業部門でデジタルマーケティング事業を統括し、今回インキュデータの社長に就任した藤平大輔氏は、日本企業におけるデータ活用で課題となっている点を「社内に大量のデータが存在するものの、部門ごとにサイロ化しており、個別的な分析・活用にとどまっている」と指摘。大手企業に豊富な導入実績をもつeCDPを用いることで、データの統合とタイムリーな分析を可能にする。

 また、従来はITベンダー広告代理店、コンサルティング会社などに分散していたサービスを同社がワンストップで提供するのが特徴。これまでも各社の連携でデータマーケティングの支援に取り組んだ実績はあったが、ユーザー企業からみて契約・相談先が複数社に分かれるよりも、データ活用の専門企業が窓口となって戦略の実施を支援したほうが実効性が高いと判断した。「現在は分析ツールの導入や、一回きりのマーケティング施策の実施で終わっている企業が多い」(藤平社長)といい、新会社ではユーザー企業のデータ活用をPDCAサイクルとして継続的に支援する。

 藤平社長はさらに、「データ活用の短期的なKPIを追求しすぎると、ユーザーデータの取り扱いがないがしろとなり、企業の信用失墜につながりかねない」と話し、個人情報保護の観点での法的整合性や、合法な取り扱い方法であっても企業の評判を落とすリスクなどについて、専門家の視点からノウハウの提供を行っていくと説明。特定個人のデータをAIで分析する性質のサービスに対して社会の目が厳しくなる中、ユーザー企業とのプロジェクトでは取り扱うデータが適切な利用許諾を得たものかを十分検討するとともに、第三者である同社自身はデータを保有せず、データ活用支援の領域で事業を展開する方針を強調した。(日高 彰)

インキュデータの藤平大輔社長