首都圏を襲った非常に強い台風15号。強風によりゴルフ練習場のネットが民家を直撃するなど、深刻な被害も出ました。そんな中、ご近所トラブルも多発しているようです。

●ツイッターでも「傷をつけちゃった」「屋根がふってきた」

ツイッターではトラブルに関する投稿が相次いでいます。隣のバイクが倒れて自分のバイクに傷がついたという人は、謝罪され見積もりを出す事になりましたが、相手からは「僕のバイクも傷ついたと思うので僕も見積もり出します」と言われたそう。

駐車場から看板が飛んできて傷が入ったという人は、ディーラーで見積もりを取りましたが、「相手が『そんなの信用できないからこっちで直す』の一点張りとか意味が分からない…」と嘆いています。

他にも「台風で隣の隣の家の屋根がふってきて、車と外壁に傷付いたらしい」、「台風で吹っ飛んだウチの雨戸が隣の家の車庫に激突して傷をつけちゃった」、「台風で隣の家の屋根がぶっ飛んでうちの車が傷だらけになりました」などの投稿がありましたが、どう対処すべきか悩む声も多くみられました。

●「車に傷ができたから修理代をくれ」

また、子育て情報サイト「ママスタ」の掲示板にも「お隣さんに怒られて腹が立つ」(http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=3404470)と題したスレッドで、庭に置いておいたものが隣の家の車を傷つけたという投稿がありました。

スレ主は木やガラクタを置いていたそうですが、隣の家まで飛ばされ、住人から「車に傷ができたから修理代をくれ」と言われたそうです。スレ主は「台風がきたから仕方ないじゃないですか?災害は避けても通れない道だから」と疑問を呈します。

この投稿に対し、「怒られて当たり前」、「飛散するものを放置してるなら主に非がある」、「個人賠償保険入ってないの?入ってればそれで弁償出来るよ」など様々な声が寄せられていました。

自然災害でものが飛んで他人の所有物を傷つけてしまった場合、弁償しなければならないのでしょうか。畑中優宏弁護士に聞きました。

●弁償しなければならないかはケースバイケース

庭に置いておいた木やガラクタが台風で飛び、他人の所有物を傷つけてしまった場合、土地工作物責任による損害賠償義務を負う可能性があります。ですが、弁償しなければならないかどうかは、ケースバイケースといえます。

ーー弁償しなければならないのは、どういう場合ですか

この損害賠償義務が生じるのは、簡単に言うと、土地や土地に置いてある物の設置・保存のしかた、木の植え方などに欠陥があった場合です。

例えば、予想される台風が来れば飛ばされることが明らかな状態なのに、何も防止策を取っていなかったというような場合、損害賠償義務が生じる可能性があります。

●対策していたのに飛ばされた場合は?

ーー対策していたのに、台風の勢いが予想以上に酷くて物が飛んだ場合はどうですか

予想される台風に備えて一定の防止策をとっていたのに、台風の勢力が予想外に強力であったために物が飛ばされてしまったというような場合には、土地や土地に置いてある物の設置・保存のしかた、木の植え方などに欠陥があったとまではいえず、損害賠償義務が生じない可能性もあります。

また、仮に損害賠償義務が生じたとしても、飛ばされた物によって所有物を傷つけられた側に、台風が来ることが予想出来たのに無防備な状態で所有物を屋外に放置していた、というような落ち度があれば、損害賠償の額を減らしてもらえる可能性もあります。これを「過失相殺」といいます。

ーー物が傷つけられた側に落ち度がなかったかも検討されるのですね

さらに、仮に損害賠償義務が生じた場合であっても、自動車保険、火災保険、傷害保険などに加入していて、その特約として個人賠償責任保険にも加入していたという場合、保険金を受け取ることができるケースもありえます。

これについては、加入している保険のしおりなどで保険金を受け取ることができるケースかどうかを確認する必要があります。

【取材協力弁護士】
畑中 優宏(はたなか・まさひろ)弁護士
公立小学校の教員を8年間勤めた後、弁護士をめざして司法試験に合格しました。学校現場の問題には詳しく、相談も多く受けています。
事務所名:弁護士法人湘南よこすか法律事務所 逗子事務所
事務所URL:http://www.sy-law.jp

台風15号で「屋根がふってきた」「車が傷だらけに」ご近所トラブル多発 弁償は必要?