日本ゲームシナリオライター協会は、バンダイナムコエンターテインメント2017年12月7日より配信を開始し、2019年1月8日サービスを終了したRPGレイヤーストーリーズ ゼロ』の全シナリオWeb上で公開した。

 これは配信が終了したゲームシナリオを文化資産として保存、公開するゲームシナリオアーカイブの活動の一環で、この『レイヤーストーリーズ ゼロ』の全シナリオ公開はその第一弾となる。『レイヤーストーリーズ ゼロ』のシナリオは利用規約を同意の上、pdfファイルで閲覧が可能となっている。

 『レイヤーストーリーズ ゼロ』は、アニメゲームマンガと多方面で展開するクロスメディア展開を前提に、ユーザーが制作に参加するコンテンツとして「みんなでゲームをつくろうプロジェクト」として発足。キャラクターデザイナー、声優、漫画家主題歌ボーカリストオーディションによって選定した。ゲームシナリオは「シナリオ工房 月光」が務め、Webアニメゲームを同時展開してストーリーと世界観が描かれた。

 本作の舞台は2037年の渋谷。そこは拡張現実の発展によって、人々のイメージがそのまま現実で実現できる様変わりした社会だった。人々は個々のパーソナルアシスタントAI「ACT」と交流しつつ生活をしているが、主人公はある日、イオン=ミルナと名乗るアシスタントAIと出会うところから物語がはじまる。

 現実と拡張現実、設定が作りこまれた個性豊かなAIたち、さらにゲームWebアニメストーリーの連動が巧みで、ユーザーからは高い評価を得ている。エピソード形式だが、ストーリーサービス終了までに完結を迎えており、有終の美を飾るにいたった。当時、ゲームクリアの感想をtogetterでまとめたユーザーのらいおねさんは、すでにシナリオの復刻を望んでいたり、サービス終了を惜しんでゲームストーリーを独自にアーカイブ化する人が現れるなど、熱意あるファンを生み出した。

 本作は拡張現実テーマにしつつ、ゲームだけではなく、マンガアニメと連動するという意欲的なストーリーなだけあって、ゲームシナリオだけサービス終了で楽しめない事態に陥っていたが、今回の「ゲームシナリオアーカイブ」の全シナリオ公開によって、補間的にだが、ストーリーを確認できることになったのは朗報だろう。

 とはいえ、ゲームシナリオは、書面上にだけ存在するのではなく、ゲームとして動くことによって始めて本領を発揮するもの。だが時代は、オンラインゲームソーシャルゲームストリーミングゲームサービスといったプラットフォームやサービスの多様化があり、以前にようにユーザーの手元に必ずパッケージという形で完全なゲームデータが存在することが少なくなってきている。

 サービス終了と共に、ゲームプレイできなくなってしまう問題に今後、ゲーム業界やユーザーはどうすればいいのか。まだまだ課題は残されているが、弊誌、電ファミニコゲーマーでも独自に「日本モバイルゲーム産業史」というプロジェクトを進めており、モバイルゲームの証言や記録を残そうしている最中である。

 『レイヤーストーリーズ ゼロ』に限らず、今後も第二、第三弾とサービス終了したゲームシナリオが公開されることは、ゲーム文化を残す上で重要な取り組みといえる。「ゲームシナリオアーカイブ」の動向には引き続き注目だろう。

(画像は『レイヤードストーリーズ ゼロ』公式サイトより)

 以下、『レイヤーストーリーズ ゼロ』のシナリオ公開にあたっての「ゲームシナリオアーカイブ」の前文を転載しておく。

ゲームシナリオアーカイブについて

 

ゲームシナリオはその性質上、単体で存在するものではありません。

ゲーム器機の代替わり、サービスの終了などでプレイ環境が失われてしまえば

現状ではシナリオを知る機会は失われてしまいます。

近年、ゲーム作品を学術的に研究する試みも始まっています。

日本ゲームシナリオライター協会では、アクセス不能になってしまうゲームシナリオについて、これを文化資産として保存、管理し公開していく道筋をつけていきたいと考えています。

今回、バンダイナムコエンターテインメントさまのご厚意により、「レイヤーストーリーズ ゼロ」の全シナリオを公開することができました。

ゲームシナリオを文化としてアーカイブ化していく試みについて、ぜひ、みなさまのご協力をいただければと思っております。

よろしくお願いいたします。

ライター福山幸司

85年生まれ。大阪芸術大学映像学科で映画史を学ぶ。幼少期に『ドラゴンクエストV』に衝撃を受けて、ストーリーメディアとしてのゲームに興味を持つ。その後アドベンチャーゲームに熱中し、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』がオールタイムベスト。最近ではアドベンチャーゲームの歴史を掘り下げること、映画論とビデオゲームを繋ぐことが使命なのでは、と思い始めてる今日この頃。
Twitter@fukuyaman