高校までの先生とは違い、大学の先生は自身の研究に没頭しているためか、個性的な方が多いように感じる方もいるのではないでしょうか。
そのため、大学の先生は映画の主人公に設定しやすいのかもしれません。今回は「大学の先生が主人公の映画」をピックアップしてご紹介します。

『インディ・ジョーンズ』シリーズ(1981年)

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スティーブン・スピルバーグジョージ・ルーカスタッグを組んで作り上げたのが『インディ・ジョーンズ』シリーズです。主人公は、マーシャル大学で教鞭を執るインディアナジョーンズ教授で「インディ」という愛称で呼ばれます。世界的に名の知られた考古学者なのですが、冒険家でもあり、しばしば大学の授業そっちのけで世界各地の遺跡へ出かけるのです。冒険時のスタイルは、フェドーラ帽(中折れハット)をかぶり、レザージャケット姿で、牛追いムチを自在に使うというもの。

レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年)
インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)
インディ・ジョーンズ最後の聖戦』(1989年)
インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年)

上記の4本の映画で、この元気すぎる教授の大活躍を見られます。また、若き日のインディを描いた『インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険』(邦題)というテレビシリーズもあります。

『HACHI 約束の犬』(2009年)

ご主人の上野英三郎博士が亡くなった後も、秋田犬ハチ公渋谷駅で上野博士を待ち続けました――という「忠犬ハチ公」の物語。この日本人なら誰でも知っているお話を、舞台を海外に移して映画化したのが本作。上野英三郎博士に当たるのが主人公のパーカー・ウィルソン教授、渋谷駅に当たるのがベッドリッジ駅です。

実際の上野英三郎博士は東京帝国大学の教授でした。本作のリチャード・ギア演じるパーカー・ウィルソン氏は大学の教授であることはわかるのですが、正確に何大学のどんな学問の教授なのかは不明です。

元が「忠犬ハチ公」なので当然かもしれませんが、とにかく涙なくしては見られない作品です。たとえリチャード・ギアの「ハァ↑チィ↓」の発音に日本人としてものすごく違和感を感じても、泣いてしまうこと請け合いです。

ちなみに、本作は『IMDb』(インターネット・ムービーデータベース)で「☆8.1」を獲得するほど高く評価されており、掲示板では「ハチのいじらしさに思わず号泣してしまった」などの感想が見られます。

『容疑者Xの献身』(2008年)

東野圭吾先生の人推理小説ガリレオ』シリーズでは、帝都大学理工学部物理学科の湯川学准教授が探偵役を務めます。2007年にはフジ系でテレビドラマ版が放送され、湯川学准教授を福山雅治さんが演じたこともあって人気作となりました。

本作は東野先生の同名小説を原作としますが、テレビドラマガリレオ』の映画版で、湯川准教授ほかのキャストはいつものメンバー。湯川准教授と対決するゲストスター役には堤真一さんが配されています。

堤さんが演じるのは、かつて湯川と大学で同窓だった天才数学者・石神哲哉。現在の職業は「高校の数学教師」ですので「物理学科准教授vs数学教師」。2人の演技対決も本作の見どころとなっています。

『アンドロメダ…』(1971年)

マイケルクライトンといえば『ジュラシック・パーク』などのベストセラーで知られていますが、SF作家としての彼の名前を一躍高めたのが小説『アンドロメダ病原体』(1969年)。『アンドロメダ病原体』はアメリカでベストセラーになりましたが、これを映画化したのが本作です。

スタンフォード大学の生物学教授ジェレミー・ストーン博士が自宅でパーティーを開いていると、軍人たちが博士を呼びに来ます。「wild fire(野火)です」としか言いませんが、博士はそれで理解し、奥さんが心配する中、彼らと一緒に出掛けます。

人工衛星がアメリカ中西部の小さな村ピーモンドに落下。衛星に何か未知の病原体が付いていたらしく、村人のみならず鳥までもが全滅するという事件が起こっていたのです。アメリカ全土から最も優秀な学者たちが秘密の施設に集められ対処することに……というストーリーです。

本作は一級のスリラーであり、見事なSFドラマに仕上がっています。ちなみに『アンドロメダ病原体』は、2008年にリドリー・スコット/トニー・スコット製作でテレビドラマ化もされています。しかし、もし未見であればぜひ1971年版の本作を先にご覧ください。

『いつだってやめられる 7人の危ない教授たち』(2014年)※日本公開は2018年

大学の予算削減のあおりを食ってクビになった神経学者のピエトロ博士は、自分の才能を生かして一発逆転の手を思いつきます。同様に不遇な目に遭っている考古学者、人類学者、言語学者、経済学者などを集め、新しいドラッグを作って売りさばくことを提案するのです。「オレたちを追放した大学を見返してやる!」と意気上がるセンセーたちでしたが……というコメディー映画。

EU域内でも国によって失業率には高低があって、特にイタリアは失業率が高いといわれます。ギリシャの財政危機でもそうでしたが、国が経済的に低迷すると教育関連予算が削られることが多いのです。緊縮財政の中、ギリシャでも多くの教師が職を失いました。高等教育を受けて「博士号」も持っているのに職がない! そんな事態はイタリアでも起こっており、そのような背景がこのような映画を作らせたのでしょう。

本作がスマッシュヒットとなったため、続編『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』、さらに『いつだってやめられる 闘う名誉教授たち』が作られました。「今度こそ」という落ちこぼれインテリたちの頑張りが笑えます

『スフィア』(1998年)

こちらもマイケルクライトンの小説(『スフィア -球体-』)を原作とする映画です。イントロ部分は『アンドロメダ病原体』ととてもよく似ています。ただ、話の発端は人工衛星の落下ではなく、太平洋の海中で見つかった巨大な宇宙船です。

海洋生物学者のベス・ハルパリン博士、数学者ハリー・アダムス博士、天体物理学者のテッドフィールディング博士、心理学者のノーマン・グッドマン博士の4人が呼び出され、深海に沈んだ宇宙船に送り込まれます。その宇宙船の中には謎の巨大な球体がありました。海底基地を設営して調査を続けるのですが、やがて不思議な現象が起こるようになって……というストーリーです。

スフィアの秘密が少しずつ明らかになっていく過程がぞくぞくする作品で、終盤に向かって急激に盛り上がり……ラストでうまく落としてくれます。

『教授のおかしな妄想殺人』(2015年)※日本公開は2016年

ウディ・アレン監督の手に成るコメディー映画で、アメリカ合衆国東部のある大学に着任した哲学科のエイブ教授が主人公です。エイブ教授は、精神的な危機に陥っていました。仕事に身が入りませんし、恋愛にも燃えられず、生きることに意味が見いだせないのです。

教え子のジルはエイブ教授に恋するのですが、本人は全く気持ちが盛り上がりません。ただただツライ日常なのですが、ある日ダイナーで悪徳判事のうわさを聞きます。エイブ教授は、その悪徳判事を完全犯罪で殺す計画を巡らせます――するとあら不思議、気持ちが前向きになり活力が湧いてくる……というお話。

気分の落ち込みは誰にでもあることですが、それをヘンな方法で乗り越えていく主人公の姿には思わず笑ってしまうでしょう。ウディ・アレンらしい皮肉たっぷりな笑いの中に切なさを感じるダークコメディーとして一級の作品です。

『ジュラシック・パーク』(1993年)

本作もマイケルクライトン原作の映画です。マイケルクライトンは、何かのせいで大学教授たちが呼び出されるというイントロが十八番(おはこ)のようで、『アンドロメダ…』『スフィア』だけでなく、本作でも使われています。

本作『ジュラシック・パーク』の場合は、資産家のジョン・ハモンドが、恐竜を現代に復活させた「テーマパーク」に専門家を招くところから始まります。古生物学者のアラン・グラント博士と古植物学者のエリー・サトラー博士が、3年分の化石発掘の経費を持つというハモンドの提案に釣られて参加します。さらに数学者イアンマルコム博士も加わります。マルコム博士はカオス理論の専門家という設定です。

本作は後に続く『ジュラシック・パーク』シリーズの第一作ですが、今さら説明するまでもなく傑作です。今見ても十分に面白く、CGで作られた恐竜たちも決して色あせていません。スピルバーグ監督の演出手腕が優れているので世代を超えて面白いのです。

『神は死んだのか』(2014年)

哲学科のジェフリー・ラディソン教授は無神論者で、自分の講義を取った学生には「God is dead.」(神は死んだ)という文を書かせて提出させます。しかし、クリスチャンの学生ジョシュ・イートンは、信仰があるので自分はできないと拒否します。ラディソン教授は、それなら神がいることを証明してみせろとジョシュに迫るのでした。ジョシュと教授の議論が起こり……というストーリー。

日本と違い、アメリカ合衆国では信仰と科学が時に激しく対立し、数々の訴訟事件が起こるなどしています。それらの葛藤を基に映画化したのが本作というわけです。本作にどれほどの説得力があるのかについては、実際に自分で見て判断してください。


大学生の先生が主人公の映画をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。インディアナジョーンズ教授などは、考古学者なのか墓泥棒なのかわからない人ですが、映画によっては非常に面白い大学の先生が登場します。

そうでなければ多くの映画で主人公になったりはしないでしょう。読者のみなさんの周りにも、映画の主人公が務まりそうな「変わった先生」がいませんか?

(柏ケミカル@dcp)

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