事故を起こした新1000形は2002年デビュー。重量の重い先頭車両を採用していたため乗客の被害は抑えられたとの声も
事故を起こした新1000形2002年デビュー。重量の重い先頭車両を採用していたため乗客の被害は抑えられたとの声も

品川(東京)と三浦半島神奈川)を結ぶ京浜急行電鉄(京急)の横浜市内の踏切で9月5日、大型トラックとの衝突事故が起きた。

当該列車は「快特」で、当時は京急の最高速度である時速120キロで走行。トラックが立ち往生した踏切の340m手前にある信号に踏切の異常が表示され、列車の運転士ブレーキをかけたが間に合わず激突し、トラックの運転手は死亡、列車に乗っていた乗客30名以上が負傷した。

事故に関する報道でクローズアップされたのが、京急という鉄道会社の"独自性"だ。

例えば、京急線を走る列車の先頭と最後尾車両は、すべてモーターがついた重量のある車両になっている。コストも高くなるのだが、そのおかげで今回はトラックと衝突しても、列車の乗客側の被害が抑えられたとの声がある。

ただ、京急が両端の車両を重いものにしているのは、単に安全面の理由だけではない。鉄道ジャーナリストの梅原 淳氏が解説する。

「最後尾を重い車両にすることで、車両の位置を検知するセンサーが確実に働き、それによって素早く信号やポイントの切り替えができます。ほかの鉄道会社のように車両が軽いと、検知が不安定になることがあるため、車両が通過してから信号やポイントを切り替えるまでに時間の余裕を持たせるのですが、京急はそういったよけいな時間がない分、タイトなスケジュールで多くの列車を走らせることができるんです」

また、京急はポイントの切り替えや信号の管理を自動化せず、熟練の職員が行なっている。運行ダイヤや現場の状況を熟知している職員のほうが、非常時に素早い対応ができるという考えからだ。

「京急には事故や故障で列車が止まっても、『影響のない区間は行けるところまで走らせておこう』という考えがある。鉄道オタクの間では"逝(い)っとけダイヤ"と呼ばれ、評価されています」(鉄道専門誌記者)

京急がこうした独自性を重視してきた理由は、JRの存在だ。品川~横浜間のドル箱路線で並走するJRに対抗するため、京急はさまざまな努力を続けてきた。その結果として、2015年には国交省が主管する日本鉄道賞の「高度な安定輸送実現」特別賞を受賞している。

ところが今回の事故では、京急が採用していなかった、踏切が異常を検知した時点で車両に自動でブレーキがかかる仕組みがあれば防げたとの意見もある。前出の梅原氏は、

ヒューマンエラーを防ぐため、各社が踏切の異常と連動する自動ブレーキを導入し始めたのは最近のこと。まだまだ少数派です」と京急を擁護するが、これから明らかになる事故原因の内容によっては、自動ブレーキの採用を求める声が高まる場合もありえる。

ただ、自動ブレーキデメリットを指摘する意見もある。

「往来が多い踏切は異常を検知することが多い。そのたびに自動ブレーキが作動し、列車が止まるとなると、ダイヤの乱れが増え、乗客からのクレームも多くなるのでは」(前出・鉄道専門誌記者)

強気のダイヤがウリだった京急はどう判断するか?

写真/時事通信社

事故を起こした新1000形は2002年デビュー。重量の重い先頭車両を採用していたため乗客の被害は抑えられたとの声も