8月31日9月1日と新潟でMGC三菱ガス化学アイスアリーナCUP(MGC杯)が開催された。今回が第1回となる新しい大会で、新潟県連の選手、及び近県の選手を中心に、フィギュアスケートの発展と競技レベルの向上を目指す目的で創設された大会だ。通年リンクが完成したのが2014年。まだそれほどの年数は経っていないのだが、既に全日本ノービスで優勝した中井亜美を筆頭に、活躍する選手を輩出しつつある。そしてこの大会には新潟県外からも有力選手が出場した。今回はその中から、東北・北海道ブロックに出場する有力選手を紹介したい。

【写真を見る】東北・北海道ブロックの注目選手たちの画像をもっと見る!

■ 今季がラスト。悔いのないシーズンを送りたい、佐藤洸彬

岩手大学、大学院に通いながら競技生活を続けてきた佐藤洸彬。今季にかける思いは強い。

「自分の中では今シーズンがラストだと決めています。精一杯やり切ろうと思っています」。

プログラムは、フリーは昨シーズンからの持ち越し、ショートは新作、“チャップリンメドレー”だ。これも佐藤操先生の振り付けだという。

「ここまでお世話になってきていますし、自分にも操先生の振り付けが合っていると思います。その操先生の曲で競技生活を終えたいな、と考えています。昨シーズンのような男らしさを表現するプログラムもいいんですが、自分にはやはり楽しく、笑顔で滑れるプログラムが合っているのかな、と思います」

今の調子についてはこう語っている。

「練習ではトリプルアクセル、4回転、どちらも降りているんですけど、本番で入らない。どちらかというと4回転の方は自信がついてるので、そこまで心配していないんです。今回、フリーで2本トリプルアクセルが入ったことは、自分でもびっくりで(笑)。いつもは不安があったんですが、きょうは不安なくスムーズに入れたのでそれが良かったのかと思います」

彼の練習を見たことのある人ならば理解してもらえると思うのだが、練習でのジャンプは本当に素晴らしい。ただそれが試合で発揮できない状態が長らく続いていた。それがここにきてかなり克服できてきているように感じる。

「昨シーズンのユニバーシアードでそこそこ手応えのある試合ができて、その時、試合に入り込む感じがつかめたと思います。それまではお客さんへのアピールを意識していて、その反応に左右されるところがあったのかな。今シーズンに入ってからは、もちろんお客さんにはアピールするし、自分の伝えたいことを表現するんですけど、それを踏まえた上で自分に集中する、自分に入り込むっていうことできてきたように思います。いつも公式練習、6分間まではいいと言われるんですが、それを今シーズンはそのまま、試合本番に持っていけるようにしたいと思います。技術というよりはメンタル面が課題だと思うので、いいメンタリティにしていきたいと思います」

ラストシーズンを迎えて、ようやく長年の課題を克服する糸口をつかめたようで、全日本での演技が今から楽しみだ。

■ 今季は活躍を期待したい、千葉百音

昨シーズン、活躍を期待されていた千葉百音選手。残念ながら全日本ジュニア、全国中学校大会では良い演技ができなかったのだが、今年3月の北日本大会では復活の演技を披露した。

「右足の踵を痛めていたんです。全日本ジュニアの頃が一番ひどかった。ルッツフリップを跳ぶときに、正しいフォームでトウを突けばそれほど痛くないんですが、疲れてきてフォームが崩れると痛い状態でした」

当時はそう不調の理由を語ってくれたが、それから半年後、MGC杯で再び話を聞いた。

「今はもう完全に怪我なく滑れています。ループがこの大会前の練習から不安定で、不安がありました。ブロックまでには仕上げたいです。今年はノーミスで力を出しきれるようにがんばりたい」

ルッツフリップアテンションがついたり、回転不足を取られたジャンプが多かったため、見た目の印象ほどの点数は出なかったのだが、ジャンプの軸が細く美しく、ルッツフリップをそれぞれ2回ずつ組み込んだ意欲的な構成のフリープログラムだった。

「全日本ジュニアで自己ベストを出すことが今シーズンの目標です。来シーズンはジュニアグランプリ出場をねらいたい」

今季アピールできれば、来年はジュニアグランプリの選考会に呼ばれるはずだ。活躍を期待したい。

ブロック大会からアピールを目指す、渡辺倫果

MGC杯には出場していないのだが、見逃せない有力選手として渡辺倫果を紹介したい。

中学生の頃に、単身カナダに渡る決断をした彼女。それまでは東京の選手だったのだが、スケート留学を許可してくれる学校を探し、青森山田中学校に転入したのだ。今シーズンは夏場から意欲的に大会に出場。カナダのローカル大会、げんさんサマーカップ、そして再びカナダのローカル大会と、3週連続のハードなローテーションをこなした。げんさんサマーカップでは3+3を回避し、安全策のプログラムで臨んだ。この時期は調子を落としていたのだという。

ジュニアグランプリの選考会が終わった後、悔しくて、気持ちに波が出てしまって、今、自分で気持ちの整理をつけているところです」

彼女は5月の選考会で、ジャンプに関してはアピールできる素晴らしい演技ができたものの、ジュニアグランプリの代表に選ばれなかったのだ。

「ノーミスしたんですけど、多分ステップとか、PCSで他の選手と差があったのが選ばれなかった理由だと思います」

ずっと落ち込んでしまい、練習に取り組む気持ちになれなかったようだ。ただこのサマーカップの直前、中京大学のリンクで他のトップ選手達の滑りを見て、ようやく自分の取り組むべき課題と向き合う気持ちになれたのだという。今回のブロック大会から、再びアピールをして国際大会の出場を勝ち取ってもらいたいものだ。(東海ウォーカー・中村康一(Image Works))

佐藤洸彬、MGC杯でのショートプログラムの演技