hiv-1903373_640_e

Image by Darwin Laganzon from Pixabay

 世界でもたった2ヶ所しかない、天然痘ウイルスを保管する研究所のひとつで爆発による火災が発生したそうだ。

 事故は9月16日ロシア、ノヴォシビルスク州にある国立ウイルス学・生物工学研究センター(Russian State Centre for Research on Virology and Biotechnology)、通称VECTORで発生した。

 ロシアメディアは、爆発によって従業員1名が火傷を負い、集中治療室に搬送されたと伝えている。

―あわせて読みたい―

ウイルス流出。フランスで2349本のSARSコロナウィルスのサンプル試験管を大量紛失
歴史上遂行された10の生物化学兵器を使った国家間、地域間の攻撃
永久凍土から古代ウイルスが解き放たれ、世界的に流行の恐れありと懸念する科学者(フランス研究)
今後10年内に致死率を高めた疫病によって6ヶ月で3000万人の犠牲者が出るとビル・ゲイツが警告
20万種近い未知のウイルスが海で発見される。これまで発見されていた既知のウイルスの数を上回るほどの数

バイオハザードの危険性はなしと報告

 VECTOR(国立ウイルス学・生物工学研究センター)からの声明によれば、爆発が起きた部屋にバイオハザード(有害なウィルスによる危険性)物質は保管されていなかったとのこと。

 6階建ての研究所ビルの5階でガスボンベが爆発し、火災が発生。爆発の衝撃で窓ガラスが割れたが、建物の構造自体は問題がないという。

 また研究所があるコルツォヴォ市市長も、事故による感染の危険は一切ないと強調しているそうだ。

事故が起きたのはソ連の元生物兵器研究所

 米ソによる冷戦真っ只中の1974年に設立されたVECTORは、かつては生物兵器を開発することが目的とされていた。

 しかし、現在では世界最大級の感染症治療や診断器具の研究所となっており、豚インフルエンザHIV、エボラ、天然痘などのワクチンが開発されている。

 天然痘1980年にWHOによって根絶が宣言されたが、テロリスト生物兵器として利用する可能性が懸念されるために、万一に備えて本研究所で保管されていた(ほかは米国疾病管理予防センターにしかない)。

 天然痘ウイルスは非常に危険度が高く、エボラウイルスと同様に、最高のバイオセーフティを誇るレベル4クラスの施設でしか扱いが許されていない。

iStock-955514826_e

Image by Hailshadow/iStock

本当に感染の危険性はないのか?


 メディアの取材を受けた感染症の専門家であるジョセフ・カン博士によると、炎自体はウイルスを殺すには十分熱いだろうが、爆発が生じているためにそれを拡散させ、現場周辺が汚染されている恐れがあるという。

 「ウイルスは弱いので、100度以上で死にます。ただ、爆発の衝撃によって保管されていた場所から拡散してしまった可能性があります。」

 爆発の規模やそのときの風といった条件にもよるが、現場の10メートルから数百メートルの範囲は汚染の危険があるようだ。

References:iflscience/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52282658.html
 

こちらもオススメ!

サイエンステクノロジーについての記事―

なぜウォンバットのフンは四角いのか? など奇妙な研究が勢ぞろい。2019年イグ・ノーベル賞10部門の受賞研究発表
視覚障害を持つエンジニアが開発したスマート白杖、先端テクノロジーで歩行をサポート
「ベンタブラック」よりもさらに黒い。世界一真っ黒の記録を更新した素材が偶然の発見により生み出される(米研究)
そう遠くない未来に、メッシュ型の脳インプラントで脳の病気や依存症が治療できる時代に(米研究)
知的好奇心があふれ出す。フォローするべき5つの科学系インスタグラムアカウント

―知るの紹介記事―

休暇中のパイロット、家族と飛行機に乗ろうとしたところトラブルが発生。自ら操縦を申し出て予定通りフライト(イギリス)
子供の頃飼っていた愛犬と泣く泣く別れた女性。7年後に引き取った老犬が同じ犬だったことの奇跡(アメリカ)
犬はニオイを嗅ぐだけで飼い主の恐怖心を感じ取ることができる(イタリア研究)
「イヌイット族は自らの大便を凍らせてナイフとして使用していた」噂の逸話を科学者が検証してみた。無理だった(米研究)
秘術、錬金術、カバラ教・・・世界最大のオカルト図書館が更に充実度をアップさせオンライン無料公開中!
天然痘ウイルスを保管していたロシアの研究所で爆発事故が発生。バイオハザードの危険性は?