致死率の非常に高い家畜伝染病アフリカ豚コレラ」(日本で発生している「豚コレラ」とは別のもの)が、韓国で初めて公式に確認された。

韓国の農林畜産食品省は17日、ソウル郊外の坡州(パジュ)の養豚農家から前日にあった「豚5頭が高熱で死亡した」との通報に基づき調査を行った結果、アフリカ豚コレラに感染していたことを確認したと明らかにした。

翌18日には、東隣の漣川(ヨンチョン)でも発生が確認、20日には坡州の別の養豚農家2ヶ所からも通報があった。発生地点の共通点は、南北朝鮮を分断する軍事境界線に近い地域だということだ。とりわけ、漣川の養豚農家は、軍事境界線に面した百鶴面(ペッカンミョン)にある。

そのことから、「アフリカ豚コレラ北朝鮮から感染が広がったのではないか」との見方が示されている。

北朝鮮で畜産関連業に従事した経験を持つ脱北者で、グッド・ファーマーズ研究委員を務めるチョ・チュンヒ氏はデイリーNKの取材に「アフリカ豚コレラの発生原因は飼育環境と周辺の環境など様々な要素を考慮すべき」としつつ、「発生地域が軍事境界線に接した地域だけあり、北朝鮮との関連性を完全に排除できない」と述べた。

北朝鮮の慈江道(チャガンド)では今年5月、アフリカ豚コレラの発生が発生したことが確認されたが、お世辞にも防疫が徹底しているとは言い難い状況であることも「北朝鮮発病説」と関係しているだろう。

(参考記事:アフリカ豚コレラ、北朝鮮全土に拡散か

アフリカ豚コレラのみならず、伝染病が発生しても、北朝鮮当局には住民の移動を統制したり、汚染された食品を販売を禁止したりする程度しかできることがない。そのための予算も設備も不足しているからだ。

(参考記事:北朝鮮、移動禁止令でアフリカ豚コレラ拡散防止

この伝染病との関連は不明だが、平壌から北東に40キロ離れた平安南道(ピョンアンナムド)の順川(スンチョン)では、飼育中の山羊が大量死する事件が起きている。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、順川(スンチョン)のセビョル協同農場では、「草を肉に変えよ」という朝鮮労働党の畜産奨励策に基づき、9年前から草食の家畜を飼い始めた。

畜産は順調に進み、飼っている山羊は300頭にまで増えた。ところが、今年8月になって事態が急変した。気管支炎など様々な病気が一気に拡散し始めたのだ。

「放牧地が様々な寄生虫に汚染され、ダニの被害も重なり、死ぬ山羊が現れ始めた」(情報筋)

7月末から9月にかけて、生まれたばかりの山羊が原因不明の下痢で全部死んでしまった。

「農場で飼っていた山羊の7割が死んでしまい、今ではほとんど残っていない」(情報筋)

管理不備に加え、非衛生的な飼育環境が問題を引き起こしていると情報筋は見ている。

農場は、山羊を周囲の山に放牧しているが、毒草の除草や、草の消毒などをまともに行っていない。放牧されても新鮮で清潔な草を食べられず、畜舎に戻れば非衛生的な環境があ待っている。

金正恩委員長は2015年1月、洗浦(セポ)地区畜産基地建設と関連し「人民生活を高めるには、農業をうまくやることと共に、畜産業と水産業を発展させ、食べる問題を解決しなければなりません」と述べた。また、その年の新年の辞でも「党の構想通りに洗浦地区畜産基地建設を力強く推し進め」るよう促している。

デイリーNKジャパン