山人音楽祭 2019【赤城ステージ】 打首獄門同好会

本番前、運動会シーズンに合わせて、大澤敦史(Vo/Gt)いわく、“バトン”という名のうまい棒が観客に配られる。そして、けたたましいSEとともに現れた大澤は、それに負けないぐらいの大声で「『山人音楽祭』へようこそ! 受け取った“バトン”を振りながら聴いてください!」と挨拶代わりの「デリシャスティック」をカマす。そして、フロアに落ち着く時間を与えずに「オッケー山人遊ぼうぜ!」という呼びかけとともに「こどものねごと」、そしてスラッシュっぽい空気感を感じさせながらもサビの開放感が気持ちいいきのこたけのこ戦争」と立て続けに披露。

MCでは「声がよく響くから」という理由で、観客が聞き取りやすいようにゆっくり話す大澤。ただでさえ安定感のあるパフォーマンスが、彼の語り口で余計にどっしりしたものに感じられるのは、きっと本人も想定外だろう。

そんな重厚感たっぷりにライブを進めながらも、相変わらずVJによる映像はキャッチー。「布団の中から出たくない」なんてキャラの萌え感が半端ない。仕事としてはステージ上に集中すべきなのだけど、ついそっちばかり見てしまう。「ひとバンドぐらいこんなバンドがいてもいいじゃないか」という大澤のMCは、そんなこちらの心を見透かしたようだった。「猫の惑星」「はたらきたくない」と小さい子供の心すら奪うクオリティの高い萌え映像とともに、相変わらずソリッドで落ち着いた演奏が展開される。

いくらこっちがハイクオリティな映像にキュンキュンしようが、「島国DNA」でマグロのビニール人形がいくつもフロアを舞おうが、「おどるポンポコリン」でサークルモッシュが起きようが、彼らのパフォーマンスはミリもブレない。一見するとド派手だが、映像やその他の演出とのバランスを取りながらステージが続いていくのである。

最後は、日本の大豊作とみんなの幸せな秋への祈りを込めた「日本の米は世界一」。フロアをブチ上げながら、非の打ち所のないパフォーマンスを見せた3人。しかし、ハプニングはライブ後に起きた。なんと、主宰者G-FREAK FACTORYが打首の結成15周年をケーキで祝ってくれたのだ。予想外の温かさに包まれながら、彼らはステージを後にしたのだった。


文=阿刀“DA”大志 撮影=HayachiN

打首獄門同好会