ついに始まったラグビーワールドカップ日本大会。開幕戦は日本代表ロシア代表を30-10で下し、悲願の決勝トーナメント進出へ大きな一歩を踏み出した。

 記者は東京スタジアム(味の素スタジアム)で行われたこの開幕戦をスタンドで観戦。会場の雰囲気や動線などをリポートしたい。

 開幕戦のキックオフ19:45、その前に開会式のセレモニーが18:30に始まることが決まっていた。サッカーW杯(ブラジルロシア)、五輪(リオ)を現地観戦した身としては2時間前にはスタジアムに入ることを“掟”としていたが、いろいろ立て込んでしまって新宿駅を出発したのは18時

 東京スタジアムへは京王線で最寄りの駅の飛田給まで約25分、試合開催日には特急が臨時に止まり、20分ほどで着くとアナウンスされていた。JRから京王に乗り換える動線となる西口改札には日本とロシアの国旗が描かれた案内看板を持っている駅員や英語で口頭で案内している駅員もおり、外国人にも親切であった。

 無事に京王線特急に乗ったのが18時ちょうど。帰宅の途につく通勤客と赤白のジャージをまとった人、テンションの高い外国人グループなどでラッシュ並みの混雑であった。飛田給駅には5分遅れで到着。その際英語と韓国語中国語そしてロシア語でもアナウンスが流れたのには驚いた。今後は試合の当該チームに合わせてフランス語スペイン語などでも行われるのだろうか。

 試合2時間前、開会式5分前にもかかわらず、改札から徒歩10分ほどで入場ゲートまでたどり着いた。拍子抜けするほどのスムーズさ。ゲートは確かに人でごった返しているが、「チケット券面に書かれているゲート以外からもご入場いただけます」というアナウンスが繰り返され、正面だけではなく空いている両サイドにも観客を振り分けていた。

 過去のラグビーのW杯では、入場ゲート前ですでにベロベロになっている人がいるというのがお約束になっているのだが、そんな外国人も皆無。ロシア国旗を手にさっそうとゲートをくぐるロシア人もいた。

 競技場への持ち込み禁止物がチケットに大きく書かれている。「武器」「飲食物」「ビン・カン」「長傘」「自撮り棒」「ドローン」……。ここで大きく問題となるのは「飲食物」だ。大会スポンサーの大手ビール会社の利益を守るため、いかなる飲食物も持ち込み禁止となっている。

 荷物チェックでは警備員からリュックに手を突っ込まれ、「食べ物、飲み物はないですね?」と念を押される。そのあと驚くほど簡易な金属探知機、チケットのQRコードチェックを経て、晴れて入場となった。ここまでわずか10分くらい。「当日は混雑により入場に60分以上かかる場合もあります」とチケットには書いてあったが、入場ゲートに融通を利かすことによってスムーズに入れた。海外では「武器」持ち込みの心配があるが、ここは日本。セキュリティチェックガードは低いようだ。

 しかし、地獄はここから始まった。競技場内で飲食物を調達しようとすると、どの食べ物も「売り切れ」。あまたある飲食ブースにはどこも「SOLD OUT」の文字が無慈悲にも踊っていた。その告知が少ないブースは長蛇の列。「なんで1時間前で食べ物が売り切れてんだよ!」「補充しないのか!」と怒号も飛ぶ始末。「次からは改善します」と係員は謝罪していたが「次はないんだよ!」と強烈なひと言をぶつける人もいた。

 飲み物ブースは別れているのだが、生ビール1000円」という文字にひるむ。さらにはソフトリンクが売り切れているブースもあった。

「持ち込み禁止にしておいてそりゃぁないよ……」。飲まず食わずで駆けつけた記者は呆然とした。

 座席を探そうとするも開会式の演出で真っ暗で、席すら探すのに苦労する。ウロウロしていたら外国人ボランティアから「お座席大丈夫ですか?」と日本語で声をかけられ、席の場所はわかったのだが、喉の渇きに耐えられない。

◆「命の水」を発見!

 開会式が終わった瞬間、人が一気にコンコースに溢れ出てきてさらなる行列が。トイレ、飲食ブースの列が混在してどこが最後尾かまったくわからない。

 ドリンクブースの最後尾を探してウロウロしていると、コンコース外にひっそりとしたブースが。「給水所」と書いてある。なんと飲料水の無料サービスコーナーがあるではないか。周知されていないのか、水なんか飲みたくないのか、人気もなく「飲み放題」。ドリンク難民となった記者にはまさに「命の水」となった。

 ラグビー観戦につきものだというビール。「ビールを切らすな」という大号令があったかどうか、ビールの売り子はやたら多い。実際、試合中もスタンドを何人もウロウロしていたし、一人で何杯も買い求める外国人もいて、開幕前に心配されていた「ビール難民」は回避されそうだが、お茶やジュースソフトリンク明らかに不足しているように見えた。

 試合開始5分前、日本代表が出てくると地鳴りのような歓声が。とにかく観客の「赤白ジャージ」着用率がハンパない。スタンドは満員、こんなに大勢のラグビーファンを見たのは始めてだ。ロシア人もかなりいて、サッカーW杯でさんざん聞いた「ロォーシーア! ロォーシーア!」の大合唱。宇宙飛行士の格好をした一団がスクリーンに映され歓声を浴びる。

 テン・カウントから、カウントダウン大合唱してキックオフ。立ち上がりはピンチが多く、周囲の女性や子どもたちから悲鳴があがったが、後半は持ち味の早いテンポで、トライを重ねロシアに快勝した。

 帰りはコンコースが大行列。4万5000人が一気に出るので仕方ないが、入場時に開けていたサイドゲートを閉め、正面だけに絞ったものだからなかなか列が動かない。駅に向かう歩道橋も人人人。そんなイライラを解消してくれたのが大会ボランティア。「ハイファーイヴ!」とか「イエーイ!」といって笑顔でタッチを求めてくる。大会初日で大変なこともあったと思うが、いい意味で日本人らしくない「おもてなし」に感心した。

 大会2日目からは日本以外の強豪国同士の戦いが始まる。会場内「持ち込み禁止」、飲食物不足問題は改善してほしいところだが、交通や大会運営に大きなトラブルはなく、ホスト国として順調な滑り出しといったところではないだろうか。

取材・文・撮影/遠藤修哉(本誌)

―[ラグビーワールドカップ2019日本大会]―


トライを決めると火が吹き上がる