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純粋主義者の夢のクルマ、マツダMX−5

前編に引き続き、ノミネート車両を見ていこう。「純粋主義者の夢のクルマ」 と評するのはマウロ・カロ。どんなクルマでも、路面や速度を問わず、コーナーカメラマンが欲しい角度にクルマを向けることができる腕利きだが、彼にそういわせるクルマとはなんだろうか。フロントエンジン・リアドライブ1150kgを切る軽量なマツダMX−5ロードスターのことだ。

AUTOCARの読者なら説明不要な名車だが、今回ノミネートしたクルマチューニングを受けた2.0Lエンジンを搭載する最新モデル。最高出力は7000rpmで182psを発生。風のように走るが、スポーツバージョンではない今回の試乗車には、ビルシュタイン製のダンパーは装備していない。ロンドンタクシー並みに大きいステアリングの切れ角と、機械式リミテッドスリップデフを装備することで、ドライバーズカーとして優れた内容を備えている、とマウロ・カロは期待を寄せる。

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お手頃ドライバーズカー選手権2019

走り出してすぐ、マツダトップ3に残るであろうことは明確だった。今回のノミネート車両の中で唯一のFRという理想的なレイアウトだということだけでなく、例えばフェラーリポルシェ、アリエル・アトムなど格上モデルとも充分に太刀打ちできる、優れたハンドリングは看過できない。

新たに獲得したエクストラパワーのおかげでコーナーへの進入時の自由度が増しただけでなく、脱出もアストン マーティンDB4 GTを駆るスターリング・モスよろしく、アクセルペダルをコントロールしてノーズの向きを整えるだけ。すべてが直感的で漸進的だから、挙動を感じ取る時間は充分にあり、思案することなく意のままに操れる。

フルスロットルまで使えるドライビングスタイルは、一般道でも有効。マット・ソーンダースは「常に最高。滑らかに路面を走り、制限速度内でもエンジンをしっかり回して楽しめる。英国の郊外の道にジャストフィットで、免停確実なバカバカしいスピードを出す必要性をまったく感じない」 とべた褒めだった。

一昔前のAMG並の俊足を持つセアト・レオン

ただし、マツダMX−5ロードスター1台では日常利用で支障をきたす場合、日本では目にすることがないが、セアトがラインナップするホットなステーションワゴンとの組み合わせが良いだろう。今回の選手権にもノミネートしている。

セアト・レオンクプラの「クプラ」は高性能バージョンのサブブランド名に独立した。最高出力300psを発する2.0Lの4気筒ターボエンジンは、フォルクスワーゲンゴルフRとの共用。ハッチバックレオンはFFだが、エステートボディは4リンク道となり、0-100km/h加速は5秒を切る俊足の持ち主。マウロ・カロのメモには、一昔前のAMGの6気筒を積んだステーションワゴン並のパフォーマンス、と記されていた。

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セアト・レオンクプラ300ST

爆発的に速いが、繊細さも残されている。一般道でのタンパーの設定で詰めが甘いものの、積極的にペースを速めていっても、後輪駆動ベースのようなコーナリングマナーがそれに答えてくれる。しかし、マット・ソーンダースがこう添える。「ノミネート車両の中に並べると、3万3000ポンド(429万円)もするクルマには見えません。お手頃なクルマ、という観点で見ると少し枠外に思えます」

このBBADCにおいて、価格価値という支点は重要なポイント。同じ理由で疑問が出たクルマが、2万9995ポンド(389万円)のプライスタグを下げるヒュンダイi30 Nファストバックだった。だが、3万2000ポンド(416万円)のフォードフォーカスSTにも負けない275psのハイパワーに、アダプティブダンパー、リミテッドスリップデフ、アクティブエグゾースト、変更可能なドライビングモードの設定にクーペライクなボディのシルエットダックテール風スポイラーなど、装備や魅力も満載だとは思う。

ゴルフGTIに一歩及ばぬヒュンダイi30

実際、新しいi30 Nファストバックは、ホットハッチ市場で充分に健闘できる内容を持っている。同じi30 Nのハッチバックと変わらない、フロントタイヤと直結したようなシッカリとしたステアリングフィールを備え、九十九折のコーナーをハイスピードで駆け抜ける自信を与えてくれる。コーナーの出口でスロットルを一気に開けても、トラクションコントロールパワーを路面へと伝え、無駄なスピンで力が抜けることもない。

そのトレードオフなのか、ステアリングへ伝わる感覚が希薄になっている。エンジンレスポンスも切れ味が悪く、トランスミッションのフィーリングもどこかぎこちない。ペダルレイアウトにも改善の余地があり、サーキットを走らせた時のフィーリングは決して悪くないものの、先輩のホットハッチに並ぶには、あと1〜2年は必要そうなことも事実。

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お手頃ドライバーズカー選手権2019

その先輩ホットハッチとは、言わずもがなゴルフGTI。7代目ゴルフクラブスポーツSの仕上がりを見るに、伝統的なGTIのイメージを超えることも可能なことはわかっているが、新しいGTI TCRはどうだろうか。評価は多少分かれたものの、ゴルフGTIはTCRになっても、現実世界で驚くほど有能な万能選手であることは変わらない。

「今回のノミネート車両の中で、最も発表の古いクルマながら、内面でも外面でも新鮮味を感じさせるのが不思議」 と評するのはサイモン・デイビス。やや穏やかなステアリングレスポンスは、フォーカスSTよりも一般道向きだとしていた。エンジン290psにまで高まり、クラスの中でトップクラスの力持ちとなり、強調された吸気音とともに、音響面での魅力も高い。

一般道では、サーキット走行前提のミシュランパイロットスポーツカップ2タイヤが、乾燥路面でなら、ステアリングの極めて高い正確性と濃密なフィーリングを与えている。だがサーキットでの挙動の落ち着きやフィードバック、インタラクティブさという点では、ミニと同様にどこか恐怖心が拭えない。限界を迎えると突然反応が鈍くなり、フロントタイヤの圧倒的なグリップ力やリアタイヤを自由に操れる喜び薄い。ぎこちなさが残り、1975年に登場したホットハッチの主軸となるパフォーマンスではないとも感じる。

FFツートップ、タイプRとメガーヌRS

ホンダシビックタイプRはどうだろう。特段新しいモデルではなく、ノミネートした理由はフォードフォーカスSTとの比較対象という側面もある。だが基準点としてAUTOCARも大好きなクルマだ。「ボディサイズは大きく、デザイン美しいわけではありません。一般道では少しやりすぎに感じるものの、サーキットでの安定性やグリップ力、走行スピードドライバリティやボディのコントロール性などは、対抗できるモデルが見つからないと思えるほど。ほとんどレースカーの水準です」 とマット・ソーンダース

わたしはそこまで高く評価していないが、マット・ソーンダースの意見は正しい。320psという最高出力は今回のノミネート車両では最も最もパワフル。加えてクルマの挙動は常に落ち着いており、他のモデルにはない、マニュアルトランスミッションの機械的なフィーリングが、運転という体験をさらに豊かにしている。「FF車でありながら、ほかのFFのクルマとは一線を画しています」 と記すマウロ・カロ。

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フォードフォーカスSTパフォーマンス・パック

シビックタイプRも最終選考の有力候補だが、もっとも近接したライバルとなるのが、度肝を抜かれるほど速く機敏なルノーメガーヌRS300トロフィー。不思議なことにどの審査員もメガーヌトップ3にランクインさせることはなかったのだが、総合評価で見ると、決して無視できない仕上がりであることには違いない。

サイモン・デイビスとマット・ソーンダースマット・プライヤーが乗り心地を指摘する。引き締められたカップシャシーは、英国の一般道にはフィットしないものだった。サイモン・デイビスは余りにも硬いスプリングレートと落ち着きのないステアリングを、4倍に濃くしたエスプレッソのようだ、とし、「極めて活発なフィーリングでしばらくは楽しめるものの、最終的には荒々しくまとまりがなく感じてしまいます」 とまとめている。

マット・ソーンダースは、以前はルノー・スポール謹製の油圧ステアリングが完璧なライン取りを実現してくれ、シャシー性能はミドシップスポーツカーのように素晴らしいクルマだったのに、と漏らしていた。

一般道とサーキットでの2日間

わたしは、レカロ製のバケットシートと運転に集中できるシンプルインテリアは、ホンダに充分対抗できる雰囲気が魅力的だと思う。速く走る準備をドライバーに求めてくるようだ。4輪操舵システムには不自然さがつきまとうが、メガーヌRS300並みのコーナリングスピードを、他のクルマが出せるとは思えない。

また、シャシーが叶える機敏な身のこなしと、300psを叩き出す1.8Lターボエンジンの軽快な楽しさにも感心する。ウェールズ地方に伸びるカーブの続く、ところどころ湿潤路面が入り混じった、時には完全にウェット状態の道での走りは、ルノーの評価を高めるのに充分。引き締まったフロントサスペンションが時折アンダーステアも露呈するが、一度ノーズがターンインしてしまえば、リアタイヤである程度軌道を調整することも可能。

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ルノーメガーヌRS300トロフィー

サイモン・デイビスは、過去のルノー・スポールベストといえる水準には届いていないが、エキサイティングで手応えを楽しめるドライビングだと、まとめていたが、納得できる。

一般道とサーキットで1日づつ、2日間に渡って5名の審査員が試乗し、スランドウ・サーキットの打ち合わせ室で上位3位を決定する。どの審査員も、一般道かサーキットか、どちらの評価で、ホンダマツダトップランクインさせているようだ。わたしとしては、後輪駆動マツダMX−5ロードスターよりも、前輪駆動ホンダシビックタイプRの方が、より強く印象に残るクルマだったと思うが、どちらも素晴らしく、3位以上での通過は間違いないだろう。

審査結果は(3)にて、マット・ソーンダースにまとめてもらおう。


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