知ってた? 「はつえんとう」は2種類ある
「はつえんとう」と呼ばれるものは、実は2種類ある。
「発煙筒」
ひとつは「発煙筒」。その文字が示すように、煙を発する筒状の器具だ。火薬(マッチで火をつけるように)で点火すると、大量の煙を噴き上げる。
おもな用途は、山岳事故や海難事故などで救助を求めるといった非常時のことが多い。したがって、周囲からの視認性を高めるために煙には赤などの色が着けられている。
TVなどで海外のサッカーの試合を見ていると、スタンドで発煙筒の煙が上がっていることがあるが、あれはもちろん正しい使い方とは言えない。
また、映画や演劇の演出効果用に使われたり、防災避難訓練などで火事の煙の代わりに用いられることもある。
軍事用や警察用に発煙筒が使われることがあるが、もはやこうなると発煙筒ではなく発煙弾に近い。煙幕を張って敵からの攻撃を逃れたり、敵(犯人)を攪乱するためにも使われる。
「発炎筒」
もうひとつが、今回のテーマである「発炎筒」だ。これも文字どおり、炎を発する筒状の器具だ。
クルマを所有している人なら、運転席側のドアポケットかダッシュボード下あたりに備え付けられている、あの赤いプラスティック製の筒だ。
日本では、クルマの保安基準によって車載が義務づけられている。
とはいえ、実際に発炎筒を使用したことのある人は、意外と少ないかもしれない。
それでも高速道路では、発炎筒が使用されている機会を見ることは多い。
車両の故障や事故が発生した場合、道路工事区間がはじまる手前の地点、交通違反などでパトカーに路肩へ停止させられた場合(この場合は自分ではなく警官が使用するが)など。
では、その使い方などについて紹介していこう。
発炎筒の正しい使い方を確認しておこう
愛車に発炎筒が積まれていることは知っていても、まじまじと発炎筒を見たり、使い方を予習したりしている人は多くはないかもしれない。
発炎筒にはキャップが付いており、このキャップの部分にマッチ箱の発火用紙のような素材が付けられている。
これでマッチに火を点けるように発炎筒の先端を擦れば、発炎筒は点火する。
踏切内でクルマが止まってしまった場合などでも発炎筒を使う機会がある(できれば、そんな機会に遭遇したくはないが)から、使い方は確認しておこう。
もっとも、事故や故障などのトラブルが発生した場合、まずはハザードランプを点灯させて路肩など道の端にクルマを駐めること。
それから同乗者をガードレールの外側に避難させる。発炎筒を使用するのは、そのあとだ。
発炎筒と、三角停止表示板(これについては後で説明する)は、クルマから50m以上後方に置く。悪天候や道路の形状で見通しが悪い場合は、もっと後ろに置いてもかまわない。
それから、携帯電話か高速道路なら路肩にある非常電話を使って救援を頼むことになる。
なお、三角停止表示板については車載は義務づけられてはいないが、高速道路上で故障や事故などによってクルマを停めざるを得ない場合は、三角停止表示板などの停止表示器材を設置しなければならないという義務がある。
期限切れの発炎筒、車検は通らない?
車載用発炎筒の有効期限は、JIS(日本工業規格)で4年と定められている。
新車を購入した場合、最初の車検は3年目だから発炎筒の期限はおそらく問題ないだろう。
だが2度目の車検(5年目)や、中古車を購入した場合の車検時には期限が切れている可能性が高い。
では、車載の発炎筒が期限切れの場合、車検には通らないのだろうか?
答えは「大丈夫!」。道路運送車両法では発炎筒などのJIS規格に適合した非常信号用具の車載が義務づけられてはいるが、発炎筒の期限については問題視されていない。
とはいえ、万が一のときに発炎筒が期限切れで使いものにならなかったら、非常信号用具としての意味がない。
たまには愛車に備えられた発炎筒の有効年月をチェックして、期限が大幅に過ぎていたら交換しておきたい。
なお、古い発炎筒は勝手に捨てずに、新しい発炎筒を買った店に回収してもらおう。
発炎筒に代わるLED非常信号灯も
最近では、発炎筒に代わる非常信号用具として、LED非常信号灯が普及しつつある。
これは文字どおりLEDを使用した懐中電灯型の非常信号灯で、これを車載していれば発炎筒の代わりと見なされ、車検はクリアできる。もちろん、国土交通省保安基準適合品でなければならないのだが。
トラブル時の設置方法などは、発炎筒と同じ。それでも発炎筒と違って火を使わず、スイッチONで点灯させるだけだから、女性やお年寄りでも扱いやすい。
製品にもよるが、発炎筒とほぼ同じサイズのものもあるので、愛車の発炎筒ホルダーに収まってくれる。
価格は1000円前後から手に入れられるから、期限切れの発炎筒を買い換えるならLED非常信号灯に代えるのも一考だ。懐中電灯の代わりになるものもある。
ただし、発炎筒と違ってLED非常信号灯は電池が切れていたら使いものにならない。くれぐれも電池残量のチェックは、常に怠りないように。
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