エクソシスト』(73)、『フレンチ・コネクション』(71)などで知られる巨匠ウィリアムフリードキンの監督作『恐怖の報酬』(77)の“オリジナル完全版”ソフトが、9月18日より発売となった。実はこの作品、日本では最近までほとんど観ることができなかった“封じられていた名作”だということをご存知だろうか?

【写真を見る】フリードキンの名作『恐怖の報酬』が長年封じられていたワケとは?

本作『恐怖の報酬』は、1953年に公開されたアンリジョルジュ・クルーゾーによる同名の傑作フランス映画をリメイクした作品。ならず者が集まる南米の小さな町に流れ着いた4人の犯罪者たちが、巨額の報酬と引き換えに、山の奥地の油田で起きた火災を消化するため危険物ニトログリセリンを普通のトラックで運ぶことになり、その道中に様々な過酷な試練に襲われるというスリラーだ。

キャリアで最も勢いがあったフリードキン監督が自ら企画、製作を主導するほど全精力を傾け、さらには当時としては破格の2000万ドル(現在の100億円相当)というとてつもない金額が出資され、完成までに2年という歳月が費やされた本作。そんな超大作であるにも関わらず、日本をはじめ多くの国では、近年までほとんどこのオリジナル版を観ることができなかった。

フリードキン作品といえば、極端で情け容赦ない描写から物議を醸すことも多く、本作も北米公開時には賛否が真っ二つに分かれた。それよりもさらに不運だったのが、公開された1977年の6月は、『スターウォーズ/新たなる希望』(77)が一大ムーブメントを巻き起こしている、まさに真っ最中だったということだ。

この影響を受けたことで興行的に大失敗に終わった本作は、北米以外ではフリードキンに無断で約30分もカットされた短縮版として公開。正当な評価を受けることのないまま、長きにわたりその後一切上映がされない状態に。というのも、本作にはユニバーサルパラマウントが共同出資していたが、責任回避のためか作品の権利を積極的に主張せず、権利が誰のものなのかはっきりしない状態だった。世界的に上映不可なだけでなく、北米以外ではDVDすら発売されていなかったのだ。

フリードキンはそんな状況に業を煮やし権利者を特定すると、2013年にデジタルリマスターに着手。同年に公開されると欧米各地で絶賛され、ようやく正当な評価を受けることになったのだ。日本では短縮版のTV放送や、1990年北米版VHSが発売されただけで、めったに観ることができないものと思われていたが、昨年についに40年以上の時を経て、デジタルリマスター版としてオリジナルが公開。そしてこの度国内初のディスク化、発売となったのだ。

そんな本作を祝うようにソフトの内容は超豪華。2枚組の≪最終盤≫には、フリードキンとニコラス・ウィンディング・レフン監督による対談をはじめとする100分超の映像特典に、日本での劇場大ヒット後に行われたフリードキン監督の最新インタビューを含む、全88ページの作品資料も付属する充実ぶり。長らく観ることのできなかった本作をこれからはいつでも観られるように、マストで手に入れておきたいところだ!(Movie Walker・文/トライワークス)

長きにわたり封じられていたあの名作がついにソフト化!