厚生労働省が発表した「平成30年(2018)人口動態統計の年間推計」によれば離婚件数は年間20万7,000組にもなり、およそ3分に1組の割合で夫婦が離婚している計算になります。
このデータからもわかるとおり、離婚は他人事ではなく、あまり考えたくはないことですが、どの夫婦にも離婚の可能性があります。
今回は、万が一離婚することになってしまった際に、どのぐらいのお金が出ていくのかをご紹介します。

 

ケース~つい出来心で…

ケース~つい出来心で…
42歳のAさんはB株式会社に勤めるサラリーマン。40歳の妻とは16年前に結婚し、現在は14歳の長男と8歳の長女と4人でAさんが購入したマンションに暮らしています。
しかし、Aさんには誰にも言えない秘密が一つあります。実はAさん、半年前から同じB株式会社に勤める26歳のCさんと男女の関係にあるのです。きっかけはCさんからの積極的なアプローチで、Aさんも悪いこととはわかっていながら、つい出来心で一線を越えてしまったのでした。
そんなある夜、Aさんが残業を終えて帰ると、妻が鬼の形相でリビングに座っています。嫌な予感がしてふと机を見ると、そこにはAさんとCさんが仲良く手を繋いでホテルに入っていく姿を撮った写真がありました。
「ああ、終わったな…。」Aさんは心の中で呟きました。その後、Aさんは妻と離婚することになってしまいました。

 

離婚の際に出ていくお金にはどんなものがある?

夫の不倫が原因で離婚することになった場合に出ていくお金には、主に(1)妻に対する離婚慰謝料、(2)婚姻中に形成した財産の財産分与、(3)子供がいる場合は子供の養育費、(4)年金分割による将来の年金の4つがあります。

(1)離婚慰謝料とは?
離婚慰謝料とは、離婚によって精神的苦痛を被った者に対して行う金銭的賠償のことをいいます(民法710条)。
今回のケースでいえば、Aさんと妻はAさんの不倫が原因で離婚していますから、Aさんには、当然ながら、妻に対して離婚慰謝料を支払う義務があります。
離婚慰謝料はいくらになる?
個々人によって受ける精神的苦痛の程度が異なることや、離婚に至る経過も千差万別であることなどから、離婚慰謝料の額について決まった相場というものはありません。
裁判では、①婚姻期間、②支払側の資力、③有責性、④未成年の子の有無などが総合的に考慮されて離婚慰謝料の額が決められています。
したがって、今回のケースでは、①婚姻期間が16年であること、②Aさんはサラリーマンであり、ある程度の資力があると考えられること、③Aさんの不倫が離婚の原因であること、④未成年の子が2人いることなどが総合的に考慮されて、Aさんが支払うべき慰謝料の額が決定されます。
なお、件数が少ないので相場を示すものではないですが、ある調査では、婚姻期間が10年から20年の場合における夫の不倫による離婚慰謝料の平均額は283万円(3件の平均)との報告がなされています(千葉県弁護士会編「慰謝料算定の実務」第2版)。

(2)財産分与とは?
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を離婚に際して分与することをいいます(民法768条、771条)。財産分与は、基本的には、夫婦財産の清算を目的としてなされます。
以下、Aさんらには次のような財産があることを前提にご説明します。
Aさん:預貯金550万円(全て結婚後に貯蓄)。マンション(Aさん名義。結婚後に購入。)時価1,000万円、住宅ローンAさん単独債務者)1,500万円。
妻:預貯金150万円(結婚後、父の死亡により相続)。
長男:預貯金100万円(Aさんが給料から貯蓄)。
長女:預貯金50万円(Aさんが給料から貯蓄)。
財産分与の対象となる財産は?
夫婦共有名義の財産は、いわゆる共有財産として原則的に分与の対象となります。
なお、たとえ一方の単独名義となっていても、夫婦が協力して形成した財産という実質があれば、いわゆる実質的共有財産として分与の対象となります。
これに対し、夫婦の一方が婚姻前から所有する財産や、婚姻期間中であっても相続などによって単独名義で取得した財産は、いわゆる特有財産として原則的に分与の対象とはなりません(民法762条1項)。
また、財産分与が夫婦財産の清算としてなされる以上、夫婦以外の第三者の名義となっている財産は、原則的に財産分与の対象とはなりません。ただ、これも実質的判断として、第三者名義であっても、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産と認められる場合は、分与額の算定基礎として考慮されます。
したがって、今回のケースでは、Aさん名義の預貯金及びマンションは、Aさんの単独名義ですが、結婚後に形成された財産であることから、分与の対象になります。他方、妻名義の預貯金は、妻が相続により取得したものですから、分与の対象にはなりません。長男と長女名義の預貯金は、夫婦以外の第三者の名義ですが、いずれもAさんの給料をその原資としており、Aさんの給料は夫婦が婚姻期間中に協力して得たものですから、いずれも分与の対象となります。
財産分与の分割割合は?
基本的には夫婦の財産形成に対する貢献度は等しいと考えられることから、財産分与を受ける割合は原則として2分の1となります。
マンションと住宅ローンをどうするか
不動産の時価がローン残高を下回る場合には、不動産を売却してもローンが残るだけですので、夫婦の片方(今回のケースでいえばAさん)が住み続けてローンの支払を続けるというのが一般的です。
Aさんが支払うべき財産分与の額は?
財産分与の対象となる財産は、Aさん名義の預貯金550万円、Aさん名義のマンション時価1,000万円、長男名義の預貯金100万円、長女名義の預貯金50万円で、合計額は1,700万円です。
また、Aさんが単独債務者である住宅ローン1,500万円は、結婚生活に関連して負担した債務であり、財産分与時に債務も清算するのが公平だといえることから、財産合計額1,700万から住宅ローン1,500万円を差し引いた200万円をAさんと妻で2分の1ずつ分けることになります。
したがって、Aさんは妻に対して、財産分与として100万円を支払うことになります。
なお、以上の結論は、長男及び長女名義の預貯金をいずれもAさんが取得することを前提としています。長男及び長女名義の預貯金には手を付けたくないということであれば、Aさんと妻との間に不公平が生じないように留意しつつ、別の方法を考える必要があります。

(3)養育費とは?
養育費とは、衣食住や教育といった子の監護に要する費用のことです。
養育費の支払期間はいつからいつまで?
養育費の支払期間は、離婚した日から始まります。
そして、通常は、20歳になって成人するまで養育費を支払い続けることになります。
ただし、協議や調停といった話合いで決定する際には、例えば、「大学に進学したときは大学卒業まで、大学に進学しなかったときは20歳まで」などという形で合意することもあります。
養育費はいくらになる?
以下では、Aさんが年収600万円のサラリーマン、妻が専業主婦、長男が14歳、長女が8歳であることを前提にご説明します。
養育費の額については、裁判所が、養育費の算定をする際の参考となる表(養育費算定表)をまとめており、基本的にはこの算定表に従って決まります。
今回のケースでは、「表3 養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)」を用います。したがって、Aさんが支払うべき養育費の額は、毎月約10万円となります。

(4)年金分割とは?
年金分割とは、当事者の一方からの請求により、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することができる制度のことです。
この制度により、婚姻期間中のAさん厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)は、原則として2分の1の割合で妻と分割されることになります。
その結果、Aさんの将来の年金額はおおよそ月数万円ほど減ることになります。

 

まとめ

まとめ
Aさんが出来心でやってしまった不倫は、離婚という結果をもたらすだけでなく、現在及び将来にわたってAさんに大きな金銭的負担を負わせることになってしまいました。
Aさんと同じような状況にある方には、一刻も早く不倫を止められることを強くおすすめします。不倫の代償はあまりにも大きいのです…。

 

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