ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。

【漫画の一部を読む】

 社主おすすめのマンガを紹介している本連載。不定期かつ細々ながら今年で丸6年を迎え、いよいよ100回間近となりました。いつもご愛読ありがとうございます

 さて、第99回目となる今回は、毎年この時期恒例となった漫画家さんインタビューをお届けします。

 今回お会いしたのは、少年漫画誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて2017年から連載開始、現在は漫画アプリ少年ジャンプ+」に移籍して連載中のギャグ漫画『トマトイプーのリコピン』(~3巻、以下続刊)の作者・大石浩二先生です。

 前作『いぬまるだしっ』(全11巻)以来約5年ぶりとなる本作は、ひょんなことから不思議の国「キュートピア」に迷い込んでしまった女子中学生・めめちゃんが、トマトの苗から生まれたトイプードルのリコピン、そしてファンシーでキュートな動物の仲間たちと触れ合う物語。その愛らしい表紙に惹きつけられて、手に取った方もきっと多いはず。

 ジャンプ作品としては異色の愛らしい絵柄ながら、連載開始以来、何度もTwitter上で何千何万というリツイートを得て、大きな話題を集めてきた『リコピン』。今回はその生みの親、大石先生に本作ができるまでのいきさつ、隠されていた作品の「裏設定」、リコピンのこれから、そして先生ご自身のことまで、たっぷりと語っていただきました。

●「ガンパクリしたようなキャラ」で勝負する

――たぶんこの記事の冒頭で「ファンシーでキュートな物語」とか何とか適当に書いて紹介すると思うんですけど、本当にまんまとだまされました! ファンシーな表紙に惹かれた、いわゆる「ジャケ買い」だったんですけど、いざ読み始めてみたら「なんじゃこりゃ!」っていう(笑)

  けれど、そこでくじけずしっかり読んでみると、時事ネタを取り入れてギャグに昇華していく先生のスタイルに、自分が作ってる「虚構新聞」に通ずるものを感じて、今回ぜひお話をうかがいたいなと思いました。そもそもどういう経緯で『リコピン』という作品を描こうと思われたんですか?

 2008年から4年間くらい「週刊少年ジャンプ」で『いぬまるだしっ』という漫画をやってたんですけど、もう週刊ではギャグが続かないってギブアップ気味にやめた感じだったんですよ。『いぬまる』の頃はまだ20代だったんで、若さで続けてた部分があったんですけど、連載中から「次、できるのかな? でも、やらなきゃいけないな」って思ってて。

 しかも連載中にちょうど腰を悪くして作業効率が落ちて、原稿を描く速度が2分の1くらいになっちゃったんですね。だから次は物理的に週刊連載は無理だと思って、漫画というよりはすごく短いページで、今話題になってるニュースを斬ったり、今の世の中ここがおかしいっていうのを突いていったりするコーナー的な企画が面白いんじゃないか、と。

――「コーナー的」っていうのは、どんな感じの企画を考えていたんですか?

 多くて5ページくらいの読み物みたいな感じですかね。でもそれだと「ジャンプ」の読者は読んでくれないので、思いっきキャラクターに寄せて。サンリオをガンパクリさせてもらった感じのかわいいキャラが毒を吐くような。

――「かわいい毒舌キャラ」といえば、何か某局の番組でそんな感じの……

 「ねほりんぱほりん」でしたっけ。あれが始まる前から、そういう企画をやろうと思ってたのに、先に始まって悔しかったところがあるんです。

――先を越されてしまったんですね……!

 ただ、想定外だったのは、僕は企画読み物だと考えてたのに、「ジャンプ」からはちゃんとしたギャグ漫画だと思われていて、連載が決まったときは十数ページの普通の週刊連載になってしまったんです。なので、読み切り版『リコピン』の時にはいなかったツッコミ役のめめちゃんを入れて、ボケとツッコミの形式に変えたんです。

●ネタが強いギャグ漫画/週刊、という地獄

――キュートピアには「文の泉(センテンス・スプリング)」や、リコピンと仲間たちが通っている「森の友だち学園(森友学園)」とかありますが、こういう時事をいじるタイプのネタがお好きなんですか?

 基本的に「ジャンプ」の漫画っていうのは、キャラクターを見るものなので、キャラ同士の掛け合いとかの方が読者が望んでることではあるんです。僕も本来それをやるべきではあるんですけど、苦手と言うか、それを得意とする人が僕以外にもいっぱいいるんで、僕の得意な方向はちょっと違うかな、と。だから、何かひとつ大きな社会の問題だったり、すごくニッチなところをつつくようなものにしてますね。

――なるほど。あと、ギャグ漫画の中にも時事に乗っからないタイプがあると思うんですが、そっちでやろうと思ったりは?

 そうですね……、まあいろんなタイプの笑いが好きですけど、最近のギャグ漫画ってキャラクターの属性を普通と違うようにするものが主流だと思うんです。

――「普通と違うようにする」というのは……?

 「○○さんは××」みたいに、特殊な女の子を、普通の人が「この人は変だ」って見るような。

――ああ、確かに最近そういうタイプコメディ漫画多いですね。「無口」とか「コミュ障」とか「距離感おかしい」とか、そういう感じの女の子主人公になってる感じの。

 ただ、そのやり方は僕にはちょっと向いてないなっていうのがあって。読んでても最初は面白いなって思うんだけど、3、4回読むと「もうこのキャラはいいだろう」って、ちょっと飽きてきちゃうところがあるんです。そうするとやっぱり飽きない作品はネタが強い。(『ギャグマンガ日和』の)増田こうすけ先生のような、ネタが強いギャグ漫画は飽きずにずっと読めるので、僕もそっちの方がいいなって。

 ただ、僕も『いぬまる』の時にネタが強いギャグ漫画を週刊でやって地獄を味わったんで、いろいろ考えた結果、5ページが限界だと思ったんです。けど、ふたを開けたら5ページどころじゃなかったっていう。

――ギャグの週刊連載ってそんなにキツいものなんですか……

 単純に体力がキツいですね。原稿が描けなくて。締め切り当日、最後のコマのセリフだけ抜けた状態の原稿を担当が取りに来て、そこから担当が会社に帰るまでにセリフを考えることもありました。思い付かないときは「担当、事故んないかな」って。

――さっき「話題になってるニュースを斬ったり」という話がありましたが、『リコピン』の場合、時事の中でもネットに斬り込んだネタが多いですね。ソシャゲ(第6話「くじとゴリラとやみ」)とかユーチューバー(第17話「ハロー! ユーチューブ」)とか。

 『いぬまる』の時は、逆にネットのネタはほとんど入れてなくて、大半がテレビのネタだったんですよ。『いぬまる』当時って誰か有名人をネタにしても、みんな分かってくれたんです。でも最近はユーチューバーだったり、歌い手踊り手だったり、若者はネットの方をよく見てて、今テレビで出てる人をネタにしても「誰だよ」ってなっちゃうんです。

 逆にTwitterのトレンドで「○○さんが入籍」っていうのを見て、僕は「誰だよ」って全然知らないけど、実はめちゃくちゃ人気のある人がいっぱいいる。だから、今はそれぞれの人にとって有名人が違う時代になっていて、『リコピン』を始めるあたりから、テレビを基準にする今までのやり方だとちょっとまずいぞって思いましたね。

――実際、Twitterで『リコピン』のネタが回ってくるのを何度も見かけましたし、そういう意味で先生の狙いはうまくいっているように見えます。

 今は思ってないですけど、「ソシャゲ」回なんかはSNS受けを狙ってた時期に描いたもので。とにかく月曜日に「ジャンプ」が出て、『リコピン』が一番話題になってほしいって思ってました。ただ、ある意味、話題になってはいたんですけど、紹介のされ方が「ジャンプの漫画が」になってるんですよ。「リコピンが」じゃなくて。「何でジャンプの宣伝してるんだろう。ジャンプは宣伝しなくていいだろう」って。

――(笑)ネット基準なのに、リコピンの身長が「梅沢富美男の顔1.5個分」とか出てきますけど、梅沢さんはセーフなんですね。

 梅沢さんはまあ、あそこまで昔の芸能人だと大丈夫かな、と。『リコピン』はすごく新しいかすごく古いかのどっちかなんですよね。みちょぱか梅沢、みたいな。

――梅沢さんに限らずですが、偽名・伏せ字慣れしてる読者からすると、リアルネームが飛び交う『リコピン』は読んでて結構ヒヤヒヤするんですが、あれ大丈夫なんですか?

 いや、怖い思いをするのは、僕じゃなくて担当さんなんで。僕は怖がらずにやって、怒られたら全折れしようと。僕の中のジャッジとしては「企業とか芸能人とか大きいところには強く出よう。その他大勢の人を傷つけるようなものはやめよう」っていうのがあって。それでもたまに暴走することがあるんで、そこは担当さんが止めてくれます。

――個人的に一番「これヤバい」ってヒヤヒヤしたのは3巻の「受信料」の回(第28話「リコピンのひみつきち」)でした。よく載りましたね、これ……

 「受信料払え」って来た人の態度が悪くてムカついたんですよ。僕、ちゃんと受信料払ってるんですよ。BS・CS映らないのに、その分も払ってて。値段がどうとかじゃなくて、今はいくらでも見られなくする方法があるのに、何でやらないんだろう。まあでも、こういうことをして何かあったら「全部僕が勝手にやった」って切り捨ててもらっていいんで。

――カッコいいですね! ギャグ作家さんとしての矜持(きょうじ)を感じます……!

●笑いのラインをどこに置くか

――当初の予定とは違う感じで始まった「ジャンプ」での週刊連載を経て、今年(2019年)7月からは漫画アプリ少年ジャンプ+」に連載を移されました。紙媒体から電子媒体に移って、何か作り方に変化はありましたか?

 「ジャンプ」の読者って「いないいないばぁ」で笑う子どもから、落語で笑う大人まで読んでるんで、自分が面白いと思うラインをどこに置くかっていうのがすごく難しいんです。お笑い好きの人だけを笑わせようとするとすごく狭くなっちゃうし、かと言って小学生だけ、というのは僕がやれる範囲じゃない。だから、今まで合計して5、6年くらい「ジャンプ」でやってるんですけど、ギャグに対して「絶対にこれでいける、会心の出来だ」と思えたことが1回もなくて。

――「全年齢を笑わせるギャグ」って確かにめちゃくちゃ難しいですね……

 お金を出して買ってもらってるというプレッシャーが「ジャンプ」にはあったんですけど、今の「ジャンプ+」は気軽に無料で読めるっていうのもあるじゃないですか。だから、そのプレッシャーはなくなった感じですね。

 それ以外だと、後から修正が利くっていうのも楽ですね。出した原稿がそのまま載ってしまう紙だと、後になって「あのツッコミやめたい」ってなっても直せないですよね。あと、時事ネタを使おうとしてるんだけどパンチが弱いときに、ほかのもっと面白いニュースが出てきて変えることもあります。「スーパースター出てきてくれ……!」ってところで、野々村議員が出てきて「スーパースターきたー!」みたいな。だから、僕みたいな作風の人にとって締め切りって邪魔なんです。けど、これも「ジャンプ+」に行ったらましになりました。

――「修正が利く」といえば、特に「ラップバトル」回(第18話「ふれあいしんぼくかい」)は初出時に比べてずいぶん変わったという指摘がありますね。

 あれは本来コミックスに載せてる方が正解だったんですよ。締め切りギリギリまで5回くらい差し替え続けたんですけど、最終的に「これにしてください」って言ったのと違うものが載ってしまって。ギリギリまでやりとりしてた僕がまず悪いんですけど、その時は当時の担当にすごい怒って。「担当者出せ!」って集英社に電凸して。

――誰が担当者なのか知ってるのに、わざわざ会社を通して連絡したんですか(笑)

 伏線をいろいろ計算したのに、担当が「これでいいや」って伏線を全く無視したものを載せたのが許せなくて。

――『リコピン』の場合、内容を変えるだけじゃなく、「ジャンプ+」には載ってるのに、単行本には収録されなかった話が結構ありますよね。この前先生がTwitterアカウントに載せた「QR決済」ネタなんかは2万回以上もリツイートされてたのに、単行本には入ってなくて意外でした。

 あれは本当に限定的なネタなので、コミックスに載せるのではなく、その時に消費すべきネタかな、と。ただ、コミックスに載せなかったのはもったいないなと思って、「7pay」がやらかしたときに「今だ!」と思ってTwitterに載せたんです。移籍してからそういう限定的なネタを強めてる感じなので、3巻でも「どれ載せようかな。これ載せていいのかな」っていうのが結構あって。

――いっそ未収録回だけをまとめた「裏1巻」とかどうですか?

 載せられなかった回は、クオリティというより倫理的な問題が理由なんで、どうでしょうね。

――倫理的(笑)。ということは「大石先生の『リコピン』ノーカット無修正版が読めるのは「少年ジャンプ+」だけ!」ってことになりますね。

●「幻の最終回」の秘密

――何より大きな未収録回としては、「ジャンプ」で連載されていた時の『リコピン』最終回も、単行本には収録されていないんですよね。単行本派なので、連載時の「幻の最終回」が読めなくてすごく残念だったんですが、どんな展開だったんでしょう?

 「実はキュートピアは人類が滅びた後の遠い未来の地球だった」という展開でした。

――えっ、それは結構衝撃的な結末……!

 もともと『リコピン』は縦軸のない物語ではあるんですけど、「ジャンプ」での連載が決まったときに、何となく伏線のようなものは入れておこうと思ったんですよね。「『ONE PIECE』って何だろう」みたいな。だから、実は「ボクらぜつめつきぐしゅ」の回(第27話)に出てきた「キュートピアレッドリスト」の「絶滅」の中に、伏線として「Homo sapiens(ホモサピエンス)」がしれっと入ってるんですよ。

――ええええ、本当だ! 全然気付きませんでした……!

 ほかにもリコピンが住んでるフロランタン地方の地図も東京の形に即してて。

――えー!

 めめちゃんとリコピンが出会ったハニトー地区が千代田区あたりなんですよ。穴掘り系アイドルミーアキャッツのライブハウス(第7話「キュートピアのアイドル」)が、ちょうど秋葉原の辺りにあって。だから「ハニトー地区の広さは、こっちの世界で言うと東京の千代田区くらいだよ」っていう注釈も、実は本当に千代田区で。ちなみに、リコピンパパの会社(ブラック企業)のある場所が集英社です。

――リコピン、ちょっとしたSFじゃないですか。そして何となく「けものフレンズ」的な感じも……。

 でもこれ僕、「けもフレ」より先に考えてたんですよ。「ねほりんぱほりん」に続いて先にやられてちゃって。ガチガチのSFっていうわけじゃないけど、すごく読み込んだ人は分かってくれるかなっていう。

 冨樫義博先生の『レベルE』の野球部の回がすごく好きで、そういう「最初は誰が犯人か分からない」ことをやりたいなって思ってたんですよ。『いぬまる』でも、最初は誰がいぬまるのお父さんか分からないようにしたりして。そういう伏線に気付いた人がいると、僕が楽しいですよね。

――分かります。自分の細かいこだわりまで、読者に気付いてもらえるとうれしいですよね。

 「ジャンプ+」第8話の「エンドレスハロウィン」では、何度も何度もハロウィンを繰り返す「エンドレスエイト」ネタをやって、もちろんそれに気付かなくても面白くなるようにはしてますけど、コメント欄に「8話だからループネタね」っていうのがあってうれしかったですね。もうちょっと伏線をしっかりやれれば良かったんですけど、急に「あと3週で連載終了」みたいになったんで、「ジャンプ」では割とバッドエンドみたいな形になっちゃって。

――そういうことだったんですね。で、「ジャンプ+」に移籍した後は、「PLUS SIDE」として「ジャンプ最終回とは別の世界線に。

 最終回の路線で行くと笑えないんで、単純にギャグだけの別の世界線に行きました。

――なるほど。『リコピン』は「ジャンプ」時代からネットネタが強かったので、むしろ今の「ジャンプ+」の方が相性がいいんじゃないですか?

 『リコピン』は週刊連載中から、Twitterバズるのを意識していた部分があって、実際に初期のころから画像を切り取られて何万RTとか結構やられてたんですよ。なのに、全然『トマトイプーのリコピン』とかいわれず、まるで自分が描いたかのように「こんなに伸びるとは思わなかった!」とかいわれて。「いやお前の手柄じゃねーよ」とか思いつつ、まあ言うのも野暮なので何も言わないんですけど。

――「バズる」という意味では、「ジャンプ+」連載なのに、講談社の「週刊少年マガジン」編集部に突撃した回(第41話「出版社見学に行こう」)は、公開直後からものすごくバズって話題になりましたね。ライバル誌をがっつり宣伝するという、出版社の枠組みを超えた以上のコラボは本当に驚きでした。

 『いぬまる』が終わって休んでた時に、いろんな出版社から声をかけていただいたんですけど、その時に講談社の方とお付き合いができて。「次もジャンプでやりたい」って思ってたんで、お断りしてたんですけど、それでも何カ月かに1回連絡をくださってたんです。そこで、せっかくだから講談社への取材も兼ねて、『リコピン』のネタにしたいと思って、ダメ元で「講談社使っていいですか?」って聞いたら、「がっつりやりましょう」ってことになりました。

――おお、意外にもあっさりと……! 逆に集英社側でNGってことはなかったんですか?

ジャンプ+副編集長・中路氏 全くなかったです。できるんだったら全然OKで。僕も講談社見てみたかったので。

――両出版社の偉い人たちの間で、実現に向けてもっとけんけんごうごうのやりとりがあったのかと思ってました。

 意外とハードル低くて、みんなやろうとしないんだけど、実はやれたんですよね。

――うーん、ひょっとすると「こんなことできない、無理だろう」って、最初から決めてかかる自分の中の思い込みの方が大きなハードルなのかもしれないですね。

 取りあえず何でも言ってみて、担当さんからダメっていわれたらダメって感じですね。そういう誰かがいるから、無茶なこともいえるし、止めてもくれる。逆に止められない限りはやってもいいかなって。

――そうすると、担当さんの判断が重いですね……。

中路氏 ネタが上がってくるのが直前ってこともありますけど、基本自分からNGは出さないようにしています。

――講談社見学回はさっき挙がった冨樫先生の『レベルE』のように、ちゃんと読めば最初から仕掛けに気付けるようになっている構成も素晴らしいと思いました。

 最後の講談社グッズプレゼントも含めて、取材するときから「こうするしかない」って思いました。ページをめくるたびに気付く人のパーセンテージがちょっとずつ上がるよう、段階的に気付くポイントを増やす構成をがんばってって感じで。

●影響を受けた作品

――ここからは作品から少し離れて、先生自身のことについておうかがしたいのですが、まずは漫画家を目指されたきっかけを教えてください。

 昔から4コマ漫画とかを描いてはいたんですけど、本格的に漫画家になろうとまでは考えてなくて。大学の授業中によく4コマを描いて隣の人に見せてたら「面白い」って結構いわれたんで、「そんなに面白いんならプロになれるかな」って調子に乗って、福岡でやってたジャンプのスカウトキャラバンに持って行ったのがきっかけですね。

 そのあと1年くらい編集部とやりとりしてたんですけど、急に「ジャンプ」で代原(代理原稿)が必要になることがあったんです。当時ギャグ漫画はパッと載せられるっていうことで「ちょっと描いてみない?」っていわれて描いたものが運良く載って。代原のギャグ漫画って大体、読者アンケートの最下位なんですけど、そうでもなかったらしくて、じゃあ増刊でもやってみようかと。

――そこから連載につながっていったんですね。やっぱり昔から漫画がお好きだったんですか?

 昔から読んでましたね。と言っても、マニアックなのじゃなくて『ドラゴンボール』とか『スラムダンク』とか、みんなが普通に読んでるジャンプ作品が基本で。今の若い子は分からないですけど、あの時代って「ジャンプ」が話題の共通項だったじゃないですか。「水曜日ドラゴンボールが野球で中止になった」とか、「ナメック星の5分が長い」とか。

――同世代なので分かります(笑)。影響を受けた漫画家さんや漫画作品ってありますか?

 ギャグ漫画で言うと、やっぱり『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!! マサルさん』のうすた京介先生がすごく衝撃でした。『マサルさん』より前に描かれた読み切りを読んで「この人、面白い漫画描くなあ」って。「ジャンプ」みたいな少年誌のギャグって、それまではコメディ要素が強かったんですね。青年誌ではネタ要素の強い作品もあったんですけど、あんなにネタ要素の強いギャグ漫画を「ジャンプ」でやるっていうのが斬新というか。それまでコミックスギャグ漫画って買わなかったんですけど、『マサルさん』からはギャグ漫画を買うようになりました。

 そこから先の直接的な影響だと『幕張』の木多康昭先生ですかね。『いぬまる』を始めるときに、うすた先生が『ピューと吹く! ジャガー』を連載されてたんで、その方向性でぶつかっちゃうと跳ね返されて絶対に勝てないし、別の方向性ということで、どちらかと言うと木多先生の方向だったかもしれないですね。あと、絵やギャグテンポなら「ヤングキング」で連載されていた吉本蜂矢先生の『デビューマン』にすごく影響を受けてます。

――漫画以外の作品ではどうですか?

 ヒットした映画なんかは大体見るようにしてます。小説だと、ホラー作家の小林泰三さんの作品は毎回ビックリするオチになってて、構成の参考になりますね。ホラーなのに1ページ目に答えがあったりとか。

――最近読まれた中で、おすすめの漫画ってありますか?

 最近でもないんですけど、森田まさのり先生の漫画が好きで、今だと『べしゃり暮らし』とか。あとドラマにもなった『宇宙を駆けるよだか』の川端志季先生の作品も好きですね。

●「面白かったね」で終わらない方法

――なるほど。そして、いよいよ最後に「リコピンのこれから」についてお聞きしたいのですが、どんな感じに展開していくんでしょう?

 「講談社見学」回もそうなんですけど、SNSで話題になってもそこで止まっちゃって、それがきっかけでみんなが『リコピン』を読みだすようになるとか、コミックスがすごく売れるとか、そういうわけでもないんですよ。

――えっ、そうなんですか。

 人生をかけて今までで一番面白いネタが描けたとしても「面白かったね」っていわれて終わっちゃう気がする。だからたぶん、根本的にやり方を変えないとダメなんじゃないかなって最近は思いますね。普通だったら新キャラが出てくるとかなんでしょうけど、『リコピン』はそうじゃないと思うんで。

――やり方を変える、ですか……。

 例えば、海外のクリエイターズトイの世界だと、まずキャラクターフィギュアを出して、そこから人気が出てきて漫画化するとかあるんですよ。『リコピン』も最初に企画してた段階では、キャラ先行でもいいんじゃないかって思ったんです。「ジャンプ」だけじゃなくて、「週刊ヤングジャンプ」とか「週刊プレイボーイ」「non-no」みたいな女性誌にも1ページずつ載って、「何かこのキャラ最近よく見るよね」っていわれたら、「漫画が面白い」じゃなくても勝ちだなっていう。

 だから、もうちょっとリコピンのグッズとか出してほしいんですけどね。サンリオみたいにグッズから入って「こんなのあるんだ」っていう。マンガを読んでキャラを好きになってもらってから、そのキャラグッズを買ってくださいっていうのが「ジャンプ」のやり方だと思うんですけど、その逆でやってほしいんですよ。僕は漫画を描くことしかできないんで。

――今日先生が持って来られたリコピンのぬいぐるみみたいなグッズがもっと増えるといいですよね。ちなみに、これって売ってないんですか?

 これは読者プレゼント用に100体くらい作ったんですよ。

――(ぬいぐるみを触りながら)これ、すごくよくできてるじゃないですか。普通に買いたいんですけど、市販する予定ってないんですか?

 今メルカリとかで何万円にもなってて貴重なんですよ。(中路氏に向かって)市販してくださいよ。

(※中路氏、特にリアクションなし)

――では、今後の展開っていうのはストーリーにとどまらず、キャラグッズを含めたもっと広いものを考えておられるということですね。

 「いちおう漫画もあるよ」って言うか、どっちかって言うと「漫画はもう別にいい」みたいな。好きな人には漫画を読んでほしいですけど、LINEスタンプとかサンリオ的な売れ方をしてほしいです。

――いいですね。リコピングッズをどんどん広げて、まんまとやられる人を増やしていきましょう(笑)。最後に、本当に毎度ベタな締めで恐縮なんですが、『リコピン』の読者、そしてねとらぼ読者のみなさんにひと言お願いします。

 今日はわざわざこんな汚いところ(※集英社)にお越しいただいて、僕のような、かわいいだけが取り柄の漫画家インタビューしていただきありがとうございました

 そうだ、いつか、ねとらぼさんの編集部も見学させてください!

――それはぜひ!

 さすがに今日明日とかではないですけど、忘れたころに伺わせていただきます!

――では、いつかねとらぼ編集部が漫画になるのを楽しみにしてます!

『トマトイプーのリコピン』大石浩二先生(左)と、「虚構新聞」社主UK(右)