草むらに横たわる少女の腹を少年が蹴り上げ、馬乗りで殴打。少女は立ち上がるも首を絞められ、最後は跳び蹴りで倒される。周囲では仲間の笑い声が……。

 9月上旬、東京都江戸川区河川敷で発生した暴行の様子の動画がツイッターに投稿され、ネット上に拡散。加害者は同区立中学2年生の男子生徒で、被害者は別の中学に通う同学年の女子生徒だった。

 社会部記者の解説。

「動画が撮影されたのは今年5月上旬。女子生徒と母親は葛飾署に被害相談したが、その後、取り調べに応じなくなってしまった。男子中学生はまだ13歳なので、警察としては非行事案として児童相談所に送致するのが精一杯のようです」

 暴力をふるった男子中学生と同じ中学に子供を通わせる保護者はこう嘆く。

「動画が拡散されてから、学校に街宣車が乗りつけるなど、大きな騒動になりました。9月6日に保護者説明会が開かれましたが、副校長は『大丈夫です。こんなことでうちの中学はダメになりません』と繰り返すだけで、非常に頼りない印象を受けました」

 現時点では暴行も動画が拡散したきっかけも、地元の不良グループの内輪揉めとみられている。だが、ネット上では、グループの中に主犯格の上級生がいるとされ、加害者と共に名前や顔が拡散されてしまった。

特定された顔や住所は一生消えない「デジタルタトゥー」に

 炎上すると次々に個人情報がさらされていく状況を、ITジャーナリストの篠原修司氏はこう分析する。

「加害者を特定するという行為が、もはや一つの“お祭り”のようになっている。『こいつを許せない』『罰したい』という怒りが、ネット上でエンターテイメント化しているのです」

 情報を拡散するのは、乱立する「まとめサイト」や「トレンドブログ」と呼ばれるサイト。その運営者には“私刑”の意味合いだけでなく、別の目的もある。

明らかに広告収入狙いです。ほとんどのサイトがPVを集め、クリック報酬型の広告から収入を得ている。グーグルなどがこのようなサイトに広告を出さないでくれればいいのですが、今は既存のマスコミ報道との線引きをどこでするのかが難しいようです」(同前)

 さらに今回の事例では、若い世代の情報リテラシーの無さも浮き彫りに。

インターネットにそのような動画を投稿すれば、どのような結果になるのかがわかっていない。特定された顔や住所は一生消えない『デジタルタトゥー』となり、本人たちが大人になったときに就職等で苦労することになるのです」(同前)

 誰もが気軽に情報を発信できるようになった昨今、陰で笑う連中も増えている。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年9月26日号)

画像はイメージです  ©iStock