山人音楽祭 2019【赤城ステージ】 ヤバイTシャツ屋さん

こやまたくや(Gt/Vo)はラスト前のMCで「G-FREAK FACTORYみたいなかっこいいバンドが俺らみたいなバンドを呼ぶリスクってあると思うんです。それでも呼び続けてくれてることに感謝してます! その感謝をちゃんと音楽のかっこよさで返します!」と絶叫していたが、何がリスクなんだろう? ヤバTはロックの「〜であるべき」をことごとくぶっ壊してきたじゃないか。

まぁそんな無粋なことはいい。ヤバTの求心力は凄まじく、まだ正午にもなっていないというのに赤城ステージのフロアはみるみる人で溢れていく。リハですでにクラウドサーフが起こるほどヒートアップしたところへ、再び3人が勢いよく登場。「かわE」からペース配分全く無視で、曲が進むごとにBPMも上昇して、「あつまれ!パーティーピーポー」の頃にはモッシュピットが大渋滞。クラウドサーファーが多すぎる(笑)。もちろん前方だけじゃない。そりゃこやまに「あっぱれパーティーピーポー!」なんて褒められたら、誰も彼もパリピになる他ないじゃないか。ヤバTのライブだからこそこんなに脳みそをカラにしてパリピになれるんだから。わかりやすい努力を見せないバンドが曲のキャッチーさと圧倒的にタフになった演奏でアリーナを沸騰させているんだから、「ちゃんと音楽のかっこよさで」感謝を返してる。

しばたありぼぼ(Ba/Vo)が放つぶっといスラップから始まる「DANCE ON TANSU」、早口のツインボーカルが他の追随を許さない(追随したいバンドがいるかは不明だが)新曲「癒着☆NIGHT」へのオーディエンスの反応もすこぶる良い。

真面目なMC以外は相変わらずオチもないもの。「しばたがG-FREAKのメンバーの顔面平均値にもっとも似てる」とか、「いやそれを言うならもりもりもと(Dr/Cho)やろ」とか、こやまは言うにこと欠いて、もりもとのことを「可愛いからぐんまちゃん」と断定するなど、意味も脈絡もない。瞬発力のみ。だが、それが暴れながら笑い続けるライブを生む。サークルモッシュの渦中にいる人はアドレナリンを放出しながら、研ぎ澄まされた「楽しい!」に突き動かされているはずだ。

ラスト1曲を前に、冒頭のMCで自分たちがここにいることの存在理由を明かしたこやま。あらゆるフェスに引っ張りだこな彼らの素の表情に触れられた貴重な時間でもあった。


文=石角友香 撮影=HayachiN

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