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インスピレーションは至るところから

「大きな荷重が掛かるだけでなく、まるで火星探査機のように砂漠を滑らかに走り廻るからです」と、彼は言う。

このクルマでは、シボレービッグブロック454エンジンルーツスーパーチャージャーを組み合わせており、そのパワートルク630ps、92.6kg-mにも達している。

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バリリアン・スチール

「巨大なまるで蛇のようなベルトがお気に入りです」と、チャンは言う。「次のモデルアメリカンホットロッドにインスパイアされた作品ですが、実際の車両とは違い、すべてのメカニカルコンポーネントが目視可能です」

チャンは至るところからインスピレーションを得ている。

バリリアン・スチールのエアロダイナミクス性能は、そのフレームやシャシー、さらにはインレットとエグゾーストパイプの影響を受けるとともに、インボードブレーキシステムは、チャンが若いころのジャガー(彼はEタイプ、特にイーグル社が徹底的なレストアを行ったモデルがお気に入りだと言う)にインスパイアされたものだ。

一方、チャンにとって3Dプリンターはその作品作りには欠かせない存在となっており、「可能性の世界を広げてくれました」と、彼は言う。

カギは3Dプリンター ひとびとも理解?

「例えば、バリリアン・スチールのフロントフェンダーはCADでデザインした後、データ3Dプリンターへと送り、樹脂でこの独特な『竜の鱗』を成型しています。こうして作った樹脂の型から鋳型をおこし、スチール製のフェンダーを製作したのです。ホイールハブの装飾にも、多くの工夫が必要でした」

3Dプリンターがもたらす創造性により、チャンは自ら製作したエグゾーストパイプ内面のように、外から見えない部分により多くの精力を傾けることが出来るようになったという。

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フラックス・キャパシター

スティーブ・ジョブスは、外から見えないコンピュータ内部に拘る理由を訊かれたとき、こうした見えない部分への拘りこそが全体に影響するのであり、単に問題無いというレベルと、素晴らしい製品を分けているのだと答えています」と、チャンは話す。

注文を受けて製作したのはバリリアン・スチールだけであり、その他の作品は家具や家の設計といった仕事の合間に、チャンが自らのために創り出したものだ。

それでも、こうした作品は独特の方法でひとびとを結び付けていると彼は言う。

「ひとびとは毎日クルマと接しています。クルマとはどういうものかということを理解しており、どれほど突飛なデザインであろうと問題ではありません。わたしの作品も理解して頂けるはずです」

番外編:動く芸術

2019年8月25日から9月2日までネバダ州のブラックロック砂漠にあるブラックロックシティで開催されるバーニング・マン・フェスティバルは、1986年サンフランシスコで始まり、1990年に会場をブラックロック砂漠へと移している。

この毎年開催されるフェスティバルでは、反消費主義や自己表現といった、さまざまなアイデアが奔流のようにほとばしっているのを目にすることができるが、ここでも米国の自動車に対する愛は健在であり、主催者に「突然変異の乗り物部門」を新たに設けさせ、「動く芸術」としての作品展示を可能にしている。

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ミスターフュージョン その2

この部門のスターのひとつであり、2012年から毎年展示されているのが、ヘンリーチャンデザインと製作を手掛けたミスターフュージョンだ。

ラスベガス在住のデザイナーであり彫刻家でもある彼は借金までして、豆鉄砲のような16本のエグゾーストパイプをまるで迎撃ミサイルのように並べ、チューブラーフレームがリア中心に置かれたV8エンジンを取り囲む、長く、低く構えた異形の6輪マシンを創り出している。

自己表現としては、まさにこれ以上の存在など無いのかも知れないが、反消費主義としては失敗だろう。

その巨大なオフロードタイヤと、磨き抜かれたスチールのボディは、どちらかと言えばデトロイトに対する賛辞にすら見える。


クルマとは動くアート デザイナーに訊く アイデアは映画やゲームから 後編