滋賀ふるさと観光大使を務める西川貴教が2019年9月21日、22日の2日間、滋賀県草津市の烏丸半島芝生広場で大型野外フェス『イナズマロック フェス2019』を行い、2日間で9万5千人を動員した。

滋賀県出身の西川は、2008年に同県の観光大使に就任。「音楽を通じて地元にお返しがしたい」と、滋賀県の全面バックアップのもと2009年にこのイベントをスタートさせた。昨年10回目を迎え、単なる音楽イベントという枠を超えた滋賀県風物詩にまで発展した。

「イナズマ」の大きな特徴は、ライブが行われる有料エリアのメインステージ「雷神ステージ」だけでなく、誰でも無料で入場できるフリーエリアが充実していること。メジャーアーティストやアイドルのライブが行われる「風神ステージ」、ご当地キャラクターが出演する「龍神ステージ」、飲食ブースや滋賀県観光PRコーナー、授乳室やベビーカー置き場などが設けられており、地元の人も気軽に楽しめる”地域のイベント”として定着したのが、10年を超えて愛される秘訣といえる。

今年の「雷神ステージ」には、西川貴教をはじめ、日向坂46UVERworld、THE RAMPAGE from EXILE TRIBE、ゲスの極み乙女。ももいろクローバーZ など全15アーティストが出演。また、ハマカーン、ひょっこりはん、トレンディエンジェル、尼神インター、三四郎、藤崎マーケットなど、12組の人気芸人も客席を盛り上げた。

1日目は台風17号の影響が心配されたが、開場する頃には小雨となり予定通りスタート。橋川渉草津市長による開会宣言に続き、3人組バンドのBRADIOが登場。彼らは2014年に風神ステージに出演、今年は雷神ステージでRISING ACTをつとめるまでに成長した。真行寺貴秋(リードヴォーカル)は、「5年前風神ステージに立った俺たちが今、雷神ステージに立ってる!夢しかないぜ、イナズマ!」と喜びを叫び、「Flyers」「Overnight Superstar」「Back To The Funk」の3曲をプレイ、ファンキーなステージで会場を盛り上げた。

 

トップバッターは、音符模様の白いワンピースで登場したイナズマ初出演の日向坂46。今年7月にリリースした最新シングルのヒット祈願として、ドラゴンボート琵琶湖を横断したという彼女たち。「そんな縁のある場所でできるのは嬉しい」と、その新曲「ドレミソラシド」を披露。他にもキュンキュンダンスが話題となったデビュー曲「キュン」など、全5曲をプレイした。可憐なパフォーマンスに加え、複雑なフォーメーション、息の合ったダンスで会場を盛り上げた。

 
Da-iCE

Da-iCE

続いてはこちらもイナズマ初登場、2014年メジャーデビューの5人組ダンス&ボーカルグループ、Da-iCE。「タオルを振って僕らと一緒に楽しんでくれますか」と盛り上がった「パラダイブ」ほか、今年6月にリリースしたベストアルバム「Da-iCE BEST」にも収録されている新曲の「イチタスイチ」「TIME COASTER」など、全7曲を披露した。「イナズマが念願のステージです」と抜群の歌唱力とキレのあるダンスで観客を魅了した彼らは、2020年1月から3月にかけて国立代々木競技場 第一体育館と大阪城ホールを巡るアリーナツアー『Da-iCE BEST TOUR 2020 -SPECIAL EDITION-』を開催する予定だ。

Da-iCE

Da-iCE

Da-iCE

Da-iCE

 

続くKEYTALKは、2017年から3年連続で出演の4人組バンド。昨年は幕張メッセでのワンマンライブも成功させ、今年も夏フェスを大いに賑わせた。彼らにとって夏の締め括りともなるイナズマでは、「BUBBLE-GUM MAGIC」「MATSURI BAYASHI」「桜花爛漫」など6曲をパワフルにプレイして会場を盛り上げた。ギターの小野武正は9月19日が誕生日。「西川(貴教)さんと一緒。あとで西川さんとツーショットが撮りたいですね」と笑顔を見せた。KEYTALK11月6日に6枚目のアルバムのリリース、それに合わせて全国ツアーも予定している。

 

続いては、昨年に引き続き2度目の登場となる西川貴教。西川は、自身の主催するイベントだから毎年出演するのではなく、他のアーティストと同じようにその実力で出演権を獲得したいと言う。その発言通り、この一年でシングルとアルバムをリリース、そして自身初の全国ツアーを成功させ、さらに大きくなってステージに戻ってきた。ライブでは『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』のエンディングテーマ「Roll The Dice」、オープニングテーマ「His/Story」をはじめ、『映画刀剣乱舞』の 主題歌「UNBROKEN (feat. 布袋寅泰)」、さらに西川自身が声優として主演する劇場上映作品『Thunderbolt Fantasy 西幽玹歌』(10月25日公開)の主題歌で10月23日リリースの「Crescent Cutlass」を初披露。「誰のファンとか、曲知ってるとかどうでもいい。今日この日は、誰にとっても残された人生の最初の1日、一番大切な瞬間」と言い、その大切な時間を目一杯満たすような圧巻のステージで客席を魅了した。

 
超特急

超特急

昨年に続き3回目の出演となるメインダンサー&バックボーカルグループの超特急は、メンバーのユースケが膝の負傷などで療養中のため、カイ・リョウガ・タクヤ・ユーキ・タカシの5人で登場。雷神ステージに因み、”雷太鼓”をつけた衣装でイベントを盛り上げる。「超えてアバンチュール」に始まり、ライブの鉄板曲「SAY NO」「浮つきWAVES」「バッタマン」など、ノンストップのパフォーマンスで会場を沸かせ、客席からはメンバーが大きく動くたびに黄色い声や大きな歓声が上がった。ただカッコいいだけではない、思わず観客が笑顔になるユニークなステージングを見せた。2019年から2020年にかけて大阪城ホール国立代々木競技場 第一体育館でのアリーナツアーも控える彼ら、今後のステージにも注目だ。

超特急

超特急

 

西川と同じく滋賀県出身6人組バンドのUVERworldは、2009年のイベントスタート以来、最多出演している常連組。楽器隊が音を鳴らす中、TAKUYA∞(Vo)はステージに走り込むようにして登場。今年2月にリリースしたシングル「Touch off」をはじめ、「EDENへ」「ナノ・セカンド」「ODD FUTURE」「IMPACT」など全8曲をプレイ。「今日眠りにつくとき、今日見たあのアーティストのことを思い出す。でもなぜだかUVERworldのことを思い出しちゃう」客席に集まった人にそう思わせたいとTAKUYA∞は言ったが、まさにそうなりそうな熱いメッセージの込められた曲たちだった。夢を追う人、追う勇気が出ない人、そして夢が見られなくて苦しんでいる人…すべてのオーディエンスの背中を押し続けているUVERworld。今年デビュー15年、結成20年という節目を迎え、12月19日、20日には初の東京ドーム2DAYS公演を予定している。

 

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE

1日目の最後は、16人組ダンス&ボーカルグループTHE RAMPAGE from EXILE TRIBE。昨年に引き続き2度目の出演、今年はトリをつとめることになった。DJ IZOHのプレイでステージの雰囲気が一気に変わったところで、メンバーが大きな歓声に迎えられて登場。「HARD HIT」「Fandango」、そして7月リリースの新曲「WELCOME 2 PARADISE」など、甘い歌声と圧巻のダンスで、迫力あるパフォーマンスを見せる。まるで、会場全体が巨大なクラブになったかのようだ。メンバーがステージを所狭しと動き回り、ポーズをキメるたびに客席からは黄色い声が上がった。さらに「Dirty Disco」の途中で、ステージ袖でライブを見ていた西川をメンバーがセンターに連れ出し、THE RAMPAGE from EXILE TRIBE×西川貴教という音楽ジャンルを超えたコラボが実現。西川は、抜群の歌唱力でサビを歌い上げた。

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE

アンコールでは10月2日リリースの新曲「SWAG&PRIDE」、そして「100degrees」をプレイ。夜の琵琶湖ほとりがダンスビートに包まれて、1日目が終了した。

2日目は、石田三成の甲冑姿で登場した三日月大造滋賀県知事が開会宣言。RISING ACTは東海エリア出身・在住の10人のメンバーで結成されたユニット、BOYS AND MENがつとめた。2016年のオープニングアクト以来2度目の出演となる彼らは、トレードマークである学ランをまとって元気いっぱいのパワフルなステージで「進化理論」「炎・天下奪取」などを披露。今回の出演は「西川の兄貴に直接お願いして出演権を掴んだ」という。最後はT.M.Revolutionの「HOT LIMIT」のイントロに乗って学ランを脱ぎ、黒ガムテープであつらえた「HOT LIMIT」スーツ姿に変身。「YMCA」をT.M.Revolutionにちなんで「TMCA」に変えて歌い、会場を盛り上げた。

 

トップバッターは2年連続で通算6回目の出演となる、西川貴教ヴォーカルをつとめるバンドabingdon boys school。「a.b.s.が一年振りに、この地に何かを残しに帰ってきたぞ」とライブをスタートさせた。「キミノウタ」「PINEAPPLE ARMY」に続いて「DOWN TO YOU」では、イナズマ出演11年皆勤賞のMICRO(HOME MADE 家族)もステージに登場、西川と阿吽の呼吸を見せた。ラストナンバー「JAP」まで全5曲、音の厚いパフォーマンスでバンドの実力を見せつけた。最後に西川が「来年ツアーやります」と発表すると、客席から大きな歓声が上がった。

 

続いてはイナズマ初登場、2004年に結成されたスリーピースバンド、打首獄門同好会うまい棒を歌った「デリシャスティック」、おなじみの菓子をテーマにした「きのこたけのこ戦争」など、ゴリゴリのメタルサウンドにユニークな歌詞、そしてステージ両脇のモニターに映し出されるユニークなPVで、観客をあっという間に虜にする。「夏の曲と冬の曲、どっちがいいですか」と客席に意見を求めてプレイを決めた「なつのうた」、いろんな海の魚と魚料理を連呼した「島国DNA」、カバー曲おどるポンポコリン」など全7曲を披露。幅広い年齢から愛される、バンドの魅力が全開のステージだった。9月25日には、結成15周年ベストアルバム『獄至十五』がリリースされる。

 

2009年結成、2014年にメジャーデビューした5人組ロックバンドのキュウソネコカミは、2015年以来2度目の出演。15時40分の出番になると激しい雨が降りはじめたが、「メンヘラちゃん」「推しのいる生活」をはじめ、今年5月に配信リリースした「ギリ昭和 ~完全版~」など、全7曲を雨に負けない高いテンションでプレイした。ラストナンバー「TOSHI-LOWさん」では、ヤマサキ セイヤ(Vo&G)が上半身裸になり、黒ガムテープで作った「HOT LIMIT」スーツ姿を披露。観客に足を支えられながら客席の上を歩く、彼らのライブではおなじみのパフォーマンスを繰り広げ、強い存在感を残した。

 

先週デビュー5周年ライブを行ったゲスの極み乙女。は、2016年以来2度目の出演。独特なポップセンスを持つ楽曲に、ちゃんMARI(Key)が奏でる鍵盤が独特の奥行きを出す。川谷絵音(Vo)は「T.M.Revolutionは姉のカセットテープに入っていたアーティスト。音楽を好きになったきっかけだった。呼んでいただいて感謝しています。西川さんのファンの前でプレイできること、姉が一番驚いています」と話した。実は2016年のイナズマは、ゲスの極み乙女。の出演直後に会場付近に雷雲が発生し、ここでイベントが中断、中止となった。「(あの時)僕らで終わっちゃったのがすごく気まずくて。今日は最後まで楽しんで」と、「猟奇的なキスを私にして」「ロマンスがありあまる」をはじめ、6曲をプレイ。最後は「キラーボール」で客席を揺らし、無事に次のバンドにバトンを繋いだ。

 

2日目に出演予定だったGRANRODEOは、メンバーのKISHOW (谷山紀章)の怪我でキャンセル。急遽代わりに出演することが決定したのが、西川貴教である。1日目と同じ衣装、同じ曲順ではあるものの、パフォーマンスはさらに進化、ますます攻めたプレイで聴かせる。西川は、途中で雨がパラパラと降ってきたのをものともせず、雨雲を動かすほどの力強い歌声で「この雨、最高の俺への演出だろ」とニヤリと笑ってみせた。そして「来るはずだったGRANRODEOの分まで暴れさせてもらいます」「GRANRODEOがいてくれないのが本当に寂しいですが、治して戻ってきて」とエールを送った。

 

続いては2011年以来、2度目の出演となったミクスチャー・ロックバンドのDragon Ash。暗くなった空のもと、楽器と声が奏でる音楽に、ダンサーメンバーのDRI-VとATSUSHIが感情を体現してゆく。「AMBITIOUS」から始まり、「Mix it Up」、hideのカバー曲ROCKET DIVE」のほか、7月配信の最新曲「FLY OVER」など全7曲を披露、客席もパフォーマンスを受けて思い思いに体を揺らした。本番前、Kj(V&G)が西川に「ご迷惑をおかけしました」と伝えたところ、「いいんだよ、待ってた。迷惑かけたと思うなら、いいライブで返して」と言われたエピソードも披露。「誠心誠意、身を削ってやらせてもらう」とパワフルなステージを届けた。

 

2日間の大トリを飾るももいろクローバーZは、3年ぶり4回目の出演。客席に無数のメンバーカラーのペンライトが輝く中、太い歓声に迎えられて登場した。キュートな声に力強いダンスの「労働賛歌」や「サラバ、愛しき悲しみたちよ」、ロックなパフォーマンスを見せる「あんた飛ばしすぎ」、しっとりした歌とクールなダンス「天国のデタラメ」、代表曲のひとつ「走れ!」など全7曲をノンストップでプレイ。会場を熱く盛り上げ、一つにした。

アンコールで「笑ー笑」をプレイしたあと、高城れにが「今日のビッグイベント、私たちが大トリってキツくない? 神様…あの人の夢を見させて…」と天に祈ると、T.M.Revolutionバラードナンバー「Meteor -ミーティア-」のイントロが始まり西川貴教が登場。歌い上げる西川の周りでももクロのメンバーがしっとりと踊るコラボレーションが実現。客席からも大きな歓声が上がった。西川が「(大トリを)この4人に頼んで本当によかったです。せっかくなんで、もう1曲やらせてもらっていいですか」と、会場に残っていたMICRO、BOYS AND MEN打首獄門同好会キュウソネコカミもステージに呼び込み、毎年イナズマのラストを飾っているナンバー「Lakers」を全員でプレイ。最後には西川がBOYS AND MENのメンバーに胴上げされるというハプニングもあり、西川本人もびっくりしたようだった。

時折雨の降る曇り空の2日間ではあったが、出演者が退場した後の空には大きな花火が打ち上がり、無事に2019年のイナズマは幕を閉じた。

西川はイベント終了後に「決意と覚悟のDay1 宿命と試練のDay2 それぞれに、それぞれしかないドラマがありました!出演いただいたアーティスト、芸人、パフォーマーのすべての皆様、 関係者、スタッフの皆様、そしてお越しいただいた皆様、本当にありがとうございました。」とツイートした。


9月30日から始まる2019年度後期のNHKの連続テレビ小説スカーレット』に出演する西川。滋賀県が舞台となるドラマで、役者としても地元を盛り上げていく。

文=フジタアヤコ

『イナズマロック フェス2019』2日目 西川貴教