ショッピングセンターの駐車場などで、駐車券やゲートをなくす例が増えています。精算をしなくても容易に出庫できてしまうものの、不正駐車はむしろ減少するそうです。

ナンバープレートを撮影して出入りを管理

駐車場の駐車券は、今後なくなっていくかもしれません。

従来、ショッピングセンターの有料駐車場などでは、出入口にゲートを設け、駐車券により利用時間や料金を管理するといった、駐車券を中心としたシステムでした。ところが2019年現在、イオンヤマダ電機といった大型量販店のいくつかの店舗において、駐車券やゲートをなくし、入庫車両のナンバープレートで管理する「スマートパーク」という方式を導入しています。

駐車券方式はある意味「匿名」ですが、「スマートパーク」は、駐車場内のカメラで個々の車両のナンバープレートが撮影され、そのデータで1台1台の利用状況がわかるようになります。よって、出入口のゲートも基本的には不要になり、駐車料金の精算は駐車場内の店舗入口などに設置された精算機で行い、駐車場の出口では何もせず出庫できるというわけです。精算時は、駐車券を通す代わりにナンバープレートの4桁数字を入力します。

しかし、なかには料金を払わずに出庫してしまうケースもあるかもしれません。これについて、「スマートパーク」のシステムを開発・管理するピットデザイン(東京都千代田区)の営業担当は次のように話します。

「未精算車両の割合は、カメラによる抑止力もあり、ゲート式よりもむしろ低下しています。最初は精算方法がわからず未精算で出ていってしまう方もいらっしゃいますが、後日利用された際に、精算機で未払い分を精算していただく仕組みがあります」(ピットデザイン 営業担当)

故意に駐車料金を払わない悪質なドライバーについては、その車両ナンバーを登録し、次回来場した際には店側の関係者へメールで通知するシステムがあるそうです。

また、万引き犯など要注意人物の車両に対しても同様に関係者へメール通知が可能とのことで、ヤマダ電機のある店舗では、「スマートパーク」の導入前後6か月比較で万引き点数が22.8%減少したといいます。

ゲートがあると売上が落ちる?

ピットデザインの担当者によると、カメラで「見られていること」が犯罪の抑止力になるといい、駐車場内での盗難や当て逃げなどに対しても、抑止効果があるそうです。

とはいえ、こうした防犯の効果は、導入が進むにつれ副次的にわかってきたもので、店舗側がこの方式を導入する理由の多くは、“客除け”になってしまうゲートを廃止できる点にあるといいます。

「ゲートがあるだけで、『入庫しにくい』『駐車券を取ることが煩わしい』といった理由から、店舗の来客数が落ちてしまうことがあると言われています。本当はゲートを付けたくない、しかし付けないと無断駐車が発生する、そこでゲートによらない方法として選ばれているのだと思います。実際、来客数が向上したという実績も多くご報告いただいています」(ピットデザイン 営業担当)

別の目的でこの方式を導入する店舗もあります。本州や四国のイオン店舗で「スマートパーク」を最初に導入したイオンスタイル仙台卸町店(仙台市若林区)は、駐車場の出入口が1か所しかないために発生していた出庫・入庫渋滞を解消するためだったそうです。その後は渋滞がなくなったといいます。

なお、導入店舗のなかには入口にあえてゲートを設けている場合もありますが、これは満車時に車列が伸びて渋滞することを防ぐ交通整理を目的としたものだそうです。ピットデザインの担当者によると「ゲートなしが基本」だといいます。

※一部誤字を修正しました(9月23日13時50分)。

駐車券を廃止したショッピングセンター駐車場の例(2019年9月、乗りものニュース編集部撮影)