世界中の人々から愛され続ける魅惑のディズニー音楽の数々。その中から選りすぐりの楽曲を、THE ORCHESTRA JAPANとニューヨークヴォーカリストたちが奏でるコンサートディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2019』が、9月21日(土)に文京シビックホールにて初日を迎えた。

以下で、初日の前日に行われた本番さながらの公開リハーサルの模様をお届けする。

セットリストほかネタバレあり 当日の楽しみにとっておきたいという方はご注意ください

公演のテーマは「きっと、叶う☆ Wish, Hope, Dream」。前半に様々なディズニー映画やパークショーの中から選び抜かれた楽曲の数々を、後半にアニメーション映画アラジン』の楽曲全編を披露するという二部構成になっている。第一部50分、休憩20分、第二部80分。合計約2時間半の公演だが、実際に体験してみると本当にあっという間の夢のようなひとときだった。

劇場ホールに入った瞬間から、ステージ上の色とりどりの照明と心躍るディズニー音楽のBGMに、まるでテーマパークに足を踏み入れたような高揚感を味わうことができる。

続々とオーケストラ奏者が着席すると、暗闇の中、指揮者と8人のヴォーカリストが位置につく。ヴォーカリストたちの「ワン・マンズ・ドリーム♪」の歌声とともに、夢と魔法の世界の始まりだ。オープニングを華々しく彩るのは、東京ディズニーランド®️のステージショー『ワンマンズ・ドリームII-ザ・マジック・リブズ・オン』より、「ワン・マンズ・ドリーム」。2004年に始まったこのショーは、日本のディズニーファンに愛され続け早15年。今年12月にはついにフィナーレを迎えることが発表されている。人々にパークでの実体験を思い起こさせる、粋な選曲と言えるだろう。

ヴォーカリストたちは、各々ライトを手に歌い踊る。実は開演前のアナウンスでも案内があるのだが、本公演にはグッズのライトを振りながら楽しめる楽曲が複数含まれている。よりステージと一体となって楽しみたいという方は、開演前にロビーで「ファンシーカラー☆ダイヤモンド・ライト」(¥3,500)を購入しておくことを強くおすすめする。

華やかなショーで幕を開けたあとは、今年2月に日本で公開された映画『メリー・ポピンズ リターンズ』より、「メリー・ポピンズ リターンズ 序曲」と「幸せのありか」が2曲続けて披露された。

ここでふと気付いたことがある。指揮者のリチャード・カーシーは、曲が終わる度に振り返り、可能な限り一人ひとりのヴォーカリストたちへ拍手を送っていた。ちょっとしたことかもしれないが、彼の温かい人柄が垣間見える瞬間だった。

指揮者 リチャード・カーシー

指揮者 リチャード・カーシー

続いては、ファン待望の「ファン・リクエスト! ソングス」コーナーだ。毎年全会場で実施されるお客様アンケートで、リクエストが多かった曲の中からピックアップするのだという。今回は2万件を超えるリクエストから計5曲が選ばれた。その中でも特に印象深かった「ホエン・シー・ラヴド・ミー」(『トイ・ストーリー2』より)と「トゥルー・トゥ・ユア・ハート」(『ムーラン』より)の2曲をご紹介する。

「ホエン・シー・ラヴド・ミー」では、ここまでフルオーケストラエネルギッシュな曲が続いたところで一転、ピアノをメインとした切ない旋律のバラードが奏でられる。哀愁漂うメロディと歌声に、思わず映画のワンシーンが思い浮かんで涙腺が緩んでしまう人も多いのではないだろうか。

そして「トゥルー・トゥ・ユア・ハート」だが、この曲は第一部で一番の盛り上がりと言っていいかもしれない。ヴォーカリストたちのパワフルな歌声とチャーミングなダンスも見どころなのだが、なんといっても前述のライトによるステージと客席の一体感を味わってほしい。
ヴォーカリストオーケストラ奏者はもちろん、指揮者のリチャードまで指揮棒ではなくライトを振っているのだから驚きだ。ナビゲーター・ささきフランチェスコの解説にあったが、本公演では音楽のみならず、光や照明の美しさの表現にも注力しているのだという。ちなみに、ペンライトがなくても腕振りで参加することができるので安心してほしい。ペンライトの有無なんて気にせず、心行くまで楽しもう。


第一部のフィナーレを飾るのは、フルオーケストラの魅力が存分に発揮されるであろうビッグナンバー、レスピーギ作曲の交響詩「ローマの松」(『ファンタジア/2000』より)だ。ここにきて初めて舞台中央にスクリーンが登場し、ディズニー・アニメーションとオーケストラのコラボレーションを堪能することができる。

重厚かつ壮大な音楽が、ホール中の空気をこれでもかと振動させる。音だけでも身震いするほどの迫力だ。そこに、想像力とアイディアに満ち溢れたディズニー・アニメーションが加わるのだ。スクリーン上では、オーケストラの演奏と絶妙にシンクロしながらザトウクジラの大群が空を泳ぎ、鳥たちは海を飛ぶ。オーケストラの演奏とアニメーションとが、クライマックスに向けて一気に高みを目指して進んでいく様に、ただただ圧倒された。

第二部では、本公演の目玉となる『アラジン』(アニメーション版)全編が披露された。オーケストラの演奏、ヴォーカリストのパフォーマンス、アニメーション映像の3つが見事に融合したエンターテインメントだ。それはまるで、ミュージカル一本をギュギュギュッと凝縮させたような濃密な時間だった。ニューヨークでの激戦のオーディションを勝ち抜いてきた8人のヴォーカリストたちは、歌、ダンス、芝居、全てにおいて観客を心から楽しませてくれる。

 (C)1992 Disney

(C)1992 Disney

 (C)1992 Disney

(C)1992 Disney

 (C)1992 Disney

(C)1992 Disney

演出も工夫が凝らされていて面白い。指揮者・リチャードをアブーとして扱ったり、指揮台を魔法の絨毯に見立ててアラジンジャスミンが座ったり。驚くべきことに、リチャードが指揮を振りながら一役者としてセリフを発する場面も。指揮者であり、ピアニストであり、俳優であるという多才な彼だからこそ実現した演出だろう。

 (C)1992 Disney

(C)1992 Disney

 (C)1992 Disney

(C)1992 Disney

第二部を通して改めて感じたのが、『アラジン』という作品には素晴らしい楽曲が本当にたくさん詰まっているということだ。何を今さらそんな周知の事実を……と思われるかもしれないが、例えば「ホール・ニュー・ワールド」のような誰しもが知っているナンバーだけではなく、歌詞のない、タイトルもあまり知られていない映画のワンシーンの楽曲一つひとつが、実に魅力的なのである。その事実は、「ディズニー・オン・クラシック」というフルオーケストラのコンサートを生身で体感したからこそ気付くことができたように思う。

Presentation licensed by Disney Concerts. (C)Disney

Presentation licensed by Disney Concerts. (C)Disney

本公演は、9月21日(土)から12月23日(月)までの間に全国24都市49公演を巡る予定だ。聴き馴染みのある思い出たっぷりのディズニー音楽に、ぜひ身を委ねてみてほしい。最高のオーケストラヴォーカリストたちが、瞬く間に、あなたを夢の世界へ誘ってくれるはずだ。

取材・文=松村蘭(らんねえ) 写真=オフィシャル提供