いま、定年後に、引き上げられた年金受給まで耐えられずに破産する「定年破産」が増えている。背景にあるのは役職定年や定年再雇用による賃金の低下、さらに晩婚化で住宅ローンや高い教育費が60歳をすぎても重くのしかかる。定年破産を回避するにはどうすればいいのか?

 マーケティングアナリストの原田曜平氏と経済評論家の佐藤治彦氏によれば、定年破産者が増えている大きな背景として、“平成”という時代が大きく影響しているという。そこで将来、定年破産に陥らずに生き残る方法について語ってもらった。

◆「定年破産」を防ぐために、僕らに必要なものとは?

経済評論家 佐藤治彦氏×マーケティングアナリスト 原田曜平氏

佐藤:私は58歳で、まさに定年破産世代。確かに、都心でも同年代の破産者は近年増えています。

原田:彼らは20~30代にバブルを経験し、「お金がなくてもカードがあるから」と丸井で買い物をしていた世代。不景気になって本人は節約したつもりでも消費意欲は下の世代よりも高いですよね。

佐藤:一度生活レベルを上げると下げるのは難しいですから。ファッションにお金をかけた世代のため、ユニクロしまむらなどで服を買うことに抵抗感を持っている同世代の男性も結構いますよ。

原田:生きてきた時代の影響を強く受けているといえます。

佐藤:家にしてもバブル以前は住宅ローンの返済期間が今より短く、退職金を丸々手元に残せました。ところが、近年は不動産の価格が上昇。退職金でローンの残債を払い、これが今の常識になっています。だから定年以降にお金に困る人が多いのです。社会の構造も昔とは変わり、団塊世代のやり方を参考にしようにも今は通用しません。

原田:それなのにこの世代は、万能感というか根拠のない自信を持っている人が多い。「なんとかなる」といった楽観論で定年破産を招いた人も少なくないはずです。

佐藤:長生きしている分、経済の浮き沈みも体験した世代ですが、「いずれ景気が良くなる」と本気で信じている人が多い。これも根拠のない幻想ですが、単に彼らが悪いわけではありません。そんな幻想を抱かせる情報を流していたメディアや私以外の経済評論家の責任でしょうね(笑)

原田:彼らは40代後半のインターネット第一世代より上の最後のマスメディア世代。特にテレビの影響を強く受け、CMなどの影響でクルマ、時計などにお金をかける“最後の消費世代”でもある。ですが、今の若者は質の低いモノに慣れすぎており、定年破産世代のほうが質の良いモノを知っているとの見方もできます。まあ、退職間際なのに消費者の側であること自体、問題ですけど……。

◆若者から学ぶ意識が定年破産を防ぐ!

佐藤:おっしゃる通りです。定年破産を防ぐためには、意識をガラリと変えるべき。例えば、住宅は分譲信仰が根強いですが賃貸に替えたり、保険だって死んだ後は関係ないのだから病気の早期発見の保障が手厚いものに切り替えるのもいいでしょう。

 ただし、それ以上にやるべきなのは料理や掃除などの家事。私は45歳を過ぎた男の必修科目は家庭科だと思っています。世代的に敬遠する男性もいますが、こういう部分から自分を変えることで心の平穏につながり、離婚など人生の破綻を避けることもできます。

原田:ほかにも変わるという点で若い人と接する機会を増やしたいですね。若者は動物的嗅覚を持っていて、時代に適応する能力に長けています。お金についても慎重な分、使いどころを知っており、上の世代には見習うべき点は多い。偏見を取っ払い、観察していいと思ったものを取り入れる。

佐藤:プライドの高い人は抵抗がありそうですね。でも、そんな人ほど見えを張って定年破産に陥りやすい。相手が若者でも恥ずかしがらず、洋服を買いに行っても若い店員さんに選んでもらえばいいんです。話すきっかけになります。

原田:何か始めるならインスタグラムはいいかも。文章を投稿するツイッターフェイスブックだと内容によっては周囲に引かれる場合もありますが、インスタなら写真メインなのでそのリスクも少ない。「そこで承認欲求を満たしても……」みたいなことを言う人もいますが、それでもいいと思うんです。それがきっかけで新たな発見ができるかもしれませんし、自分自身を変えることもできます。

佐藤:今は新元号に替わって盛り上がっていますが、経済的にも厳しい時代になると予想されます。私にとっては令和ではなく景気が冷えるという意味で「冷和」。だからこそ今の40代は“変わる”ことを受け入れ、それに備えていかなければなりません。

原田:なるほど。佐藤さんの考えに近いですけど、私はゼロという字を入れた「零和」ですね。日本の経済はすでに成熟しており、今後の大きな成長は望めません。現状維持で精いっぱいだから今後定年を迎える人は大変だと思います。

佐藤:確かに、今の30~40代がこれから生活レベルを上げたり、貯金をするのは平成の時代より厳しいでしょう。けれど、この世代は厳しい時代しか知らないため、意外と上の世代よりは堅実に生きる人が多いかもしれませんね。

<定年破産を防ぐ生き残りの3か条>
①生活のグレーダウンを受け入れる
②家事、掃除の家庭科を極めてみる
③若者に学び生涯現役でい続ける

【原田曜平氏】
サイバーエージェント次世代生活研究所所長。流行語にもなった「さとり世代」「マイルドヤンキー」などの言葉の生みの親でもある。『平成トレンド史 これから日本人は何を買うのか?』(角川書店)など著書多数

【佐藤治彦氏】
消費者目線で経済やお金に関する問題についてわかりやすく解説するエコノミスト。最近は趣味を生かし、海外旅行ツアー評論家としても活躍する。近著『しあわせとお金の距離について』(晶文社)が好評発売中

<取材・文/週刊SPA!編集部>

―[定年破産する人の共通点]―