「前畑がんばれ」の実況アナウンスとともに歴史に残るベルリンオリンピック1936年)の女子200m平泳ぎ金メダルを獲った前畑秀子。9月22日放送のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』第36回では、決勝戦を前に「がんばれ」のプレッシャーと闘う前畑の苦悩を上白石萌歌が見事に演じた。

思えば前畑秀子が憧れた女子陸上の人見絹枝もプレッシャーに悩んだ。『いだてん』第26回「明日なき暴走」では、アムステルダムオリンピック(1928年)に日本人女子選手で初出場した人見絹枝を菅原小春が熱演して話題になった。人見は「全国民が期待している」「お国のために頑張ってこい」と期待される重圧から100m走で実力を発揮できず、涙ながらに訴えて急きょ800mに出場して銀メダルに輝いたのである。

前畑秀子は4年前にロサンゼルスオリンピック(1932年)の200m平泳ぎ銀メダルを獲得したものの、世間から金メダルを期待されてベルリンオリンピックに臨んだ。ドイツのライバル選手とタイムを争う彼女にとって、周囲からかけられる「がんばれ」の声援はすごい重圧だった。

主人公の田畑政治(阿部サダヲ)はいつも選手たちのプレッシャーなど気にせず「金メダルしかない! がんばれ!」と激励するが、前畑が眠れないほど悩んでいると知り「がんばれ」を封印したほどだ。

そんななか、そろそろ寝ようとした前畑の前に亡き両親の幽霊が現れる。あなたが生まれてどれだけ嬉しかったか、自慢の娘なのだと話す母親の愛情に力づけられた彼女は、両親が手を握り「がんばれ」と励ます言葉を素直に受け止めることができたのである。

前畑秀子のもとには日本から数え切れないほど「がんばって」と応援する電報が届いた。第1部の主人公であるマラソンの父・金栗四三(中村勘九郎)が「プレッシャーになるかも」と思案の後に送った「疲れた時は 押し花がよか 金栗四三」とローマ字で打たれた電報に「何これ? 金栗四三って誰?」と笑顔を見せたのには和まされた。

決勝が迫るなか、そうした応援を全て受け入れよう考えた彼女は、電報の紙を数枚口に入れてコップの水で流し込む。「これで、私は一人じゃない、日本の皆も一緒に泳ぐんだ」と吹っ切れたことでプレッシャーを乗り越え、「前畑がんばれ」が連呼される感動のシーンにつながるのだ。

視聴者からのツイートでは「40分位のドラマの中で、ここまで『がんばれ』という一言の意味合いや受け止め方とかの変遷を描いたものがあったろうか…。私でも『前畑がんばれ』という言葉は知ってるけど、あんな現実があったんだと思ったらホントもう胸がきゅうとなったよ」、「『頑張らなくてもいいんだよ』 なんて優しい言葉だけに甘えていても、何も変わる事はなく、温室で腐るだけ。基本、頑張らないと何もできませんから。『前畑がんばれ』。仕事は忙しく面倒ではありますが、俺も明日からまた頑張ろうと…」などの声も見受けられる。

両親からの「がんばれ」、日本から応援する「がんばれ」、田畑政治が満を持して発した「がんばれ」と同じ言葉でも込められた思いは様々であり、それが力となるかは相手の受け止め方によるのではないか。前畑秀子も苦悩したが、両親や選手仲間など周囲の助けで「がんばれ」を前向きに捉えることができたのだろう。

画像2枚目は『上白石萌歌 2019年9月21日付Instagram「明日はついに大河ドラマ いだてん第36回 「前畑がんばれ」の回です」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)

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