「監察医朝顔」第10話。朝顔(上野樹里)たちは三郎(きづき)の妻・結衣(松長ゆり子)の本当の死因を突き止める。三郎にかけられていた殺人やDVの疑いを晴らすことはできたが、朝顔は他のご遺体の解剖でも手が震えるようになってしまった。そんな朝顔に茶子(山口智子)が大学の講義をするよう依頼する。大学生を前に、自分の経験を交えながら朝顔は法医学者の仕事について語った。

朝顔(上野樹里)の講義に圧倒される
ほとんどが上野樹里のセリフで構成された大学での講義シーンは約8分。引き込まれた。

始めはおしゃべりしていたり寝ていたり、怠そうに講義を聞いていた大学生たち。そんな中、ひとりが手をあげて質問する。
「解剖って拒否したりできないんですか?承諾なく体を切り刻むのって、人間の尊厳みたいなもの傷つけていませんか?」
「その気持ちよく分かります
ハッと表情を変える大学生たち。

「ただ、きちんと死因を知ろうとするには、司法解剖しか手段がない場合があるんです。
解剖によって全く異なる死因が見つかったことがあります。例えば、事故でなくなられたと思われていた方が、他殺だったり、病死だったことがあります。そのように正しい死因がわかれば、犯人をつかまえたり、また、亡くなられたご家族の心の悲しみを少しでも和らげることができるかもしれませんよね」

「私は、法医になる前、震災で母を失いました」
朝顔の目が潤む。どんどん涙が溜まっていくのに、涙は一切こぼれない(ここから3分、カット割りされず長回しで撮影されている。)
しっかりとした口調で講義は続く。

「……震災時には、混乱のなか“溺死”された方もたくさんいましたが、もしかしたらその中に濡れた状態で救助を待っている間に “凍死”で亡くなられた方もたくさんいたかもしれません。
この災害国である日本で、正しい死因を知ることは、今後死者を減らすことに繋がっていくと思います。私達は、亡くなられた方の命から学び、事前に正しい対処や適切な設備を整える必要があると思います」

「亡くなられた方の最期に寄り添い、その方が生きている間に伝えたかったことや、法医学者にしか読み解くことのできない、その証を一つでも見つけようとする。
それが、人間が人間の手で、亡くなられた方の魂を弔うことに繋がっていくと思います」

法医学者は命を救うことはできないが「ご遺体に耳を傾けることができる唯一の存在」だと朝顔は示した。

桑原(風間俊介)の運命は?
一方、夫の桑原は先輩の神崎警部と共に反社と繋がりがある建設会社を追っていた。激しい雨が降る中、情報提供者に案内されて向かったのは不法投棄のゴミ集積場。桑原たちが帰ろうとした瞬間、土砂崩れが起きる。土砂に埋まった手には結婚指輪。いやー!死んじゃいやー!桑原ー!!

原作マンガでは25巻で桑原の身に災難が起きる。しかし、ドラマと原作では設定がかなり違うのだ。ドラマ版の桑原、どうか無事でいてほしい!
(イラストと文 まつもとりえこ)

ただ、私自身、法医である前にひとりの人間ですし、どんな時もどんなご遺体も解剖できると言い切ることはできません。それでも法医をやってきて言えることは、法医学者はもう命を救うことはできませんが、ご遺体に耳を傾けることができる、唯一の存在だということです」イラストと文 まつもとりえこ