E5系電車は東北新幹線はやぶさ」に導入された新幹線車両。グリーン車より豪華な「グランクラス」を連結して320km/hで走りますが、当初の構想ではもっと速く走る計画でした。北海道新幹線にも乗り入れ、東京と北の大地を結んでいます。

「営業360km/h」を目指して320km/hに

E5系電車は東北新幹線のさらなる高速化を目指して開発された新幹線車両です。2009(平成21)年から製造が始まり、2011(平成23)年に東京~新青森間を結ぶ最速列車「はやぶさ」の車両としてデビュー。いまでは北海道新幹線にも乗り入れています。

E5系はやぶさ」の最高速度は当初300km/hでしたが、2013(平成25)年から320km/hにアップ。山陽新幹線を300km/hで走るN700系電車の「のぞみ」「みずほ」を抜き、日本最速になりました。ちなみに、「はやぶさ」という名前は1958(昭和33)年から2009(平成21)年まで東京と九州方面を結ぶ寝台特急で使われており、一時は日本で最も長い距離を走る旅客列車でした。

E5系2010(平成22)年まで製造されたE2系電車の後継車両といえますが、そのデザインはE2系から大きく変わりました。特に変化したのが先頭車のデザインです。ノーズ(先端から後方に向けて車体が大きくなっていく部分)を長くし、さらに「ダブルカスプ」という複雑な形を採用。東海道・山陽新幹線500系N700系のノーズに比べるとシャープで、砲弾を思わせるようないでたちです。

これは騒音を抑えつつ320km/hという高速運転を実現するためでしたが、JR東日本が2000(平成12)年に取りまとめた構想では、さらに40km/h速い360km/hを目指していました。しかし、JR東日本は360km/hの営業運転を目標にした試験車両を開発して走行試験を行ったものの、330km/h程度で騒音が悪化し、コスト面でも課題が残る結果になったため、320km/hに抑えたE5系が開発されたのです。

「ファーストクラス」も設置

塗装もE2系から大きく変化。「未来」や「先進性」をイメージさせる色として、青みがかった緑と、ややグレーに近い白、そしてピンクの帯が入りました。このほか、フルアクティブサスペンションを10両編成の全車両に搭載。カーブを走るときに車体を傾けて遠心力を弱めるシステムも導入し、乗り心地の改善を図っています。

車内も大きく変わりました。特に話題となったのが、10両編成中の10号車に設けられた、グリーン車よりも豪華なタイプの座席「グランクラス」です。10号車は長いノーズを持つ先頭車のため客室は狭いですが、その狭さ以上に定員を大幅に減らし、座席は1+2の3列配置に。座席間隔も大幅に広げ、大きくゆったりとした本革シートが置かれました。このシートには読書灯や電動レッグレスト、コンセントなどを設置。一部の列車を除いて軽食や飲料も提供しており、まるで飛行機ファーストクラスのようです。

2016年には北海道新幹線新青森新函館北斗間が開業。「はやぶさ」の運転区間も東京~新函館北斗間に拡大し、JR北海道は同社初の新幹線車両としてH5系電車を導入しました。帯色は北海道ライラックなどをイメージさせる紫に。ロゴマークも北海道のシロハヤブサをモチーフにしたデザインになりましたが、構造的にはE5系と同じです。

2019年4月1日時点の車両数は、E5系が430両、H5系が40両。いまでは「はやぶさ」だけでなく東北新幹線の「はやて」「やまびこ」「なすの」で使われることも増えました。このほか、インドのムンバイ~アフマダーバード間で計画されている高速鉄道にも、E5系タイプの車両が導入される予定です。

ちなみに、JR東日本は営業最高速度360km/hに再度挑戦するため、新型試験車両のE956形電車「ALFA-X(アルファ・エックス)」を開発。2019年5月から走行試験を行っています。この試験結果を反映させた「次世代E5系」では、360km/h運転が実現するかもしれません。

東北新幹線を走るE5系「はやぶさ」(2011年11月、恵 知仁撮影)。