受動喫煙防止への取り組みが広がる中、コンタクトレンズ製造・販売のメニコン名古屋市中区)が、本社を訪れる取引先や顧客に「来社1時間前からの禁煙」を求めるポスターを掲示して話題になっています。社員だけでなく、外部の人たちにも来社前からの禁煙を呼び掛けるという試みに、ネット上では「非常に良い試み」「国内すべての企業に浸透してほしい」と支持する声の一方、「やり過ぎでは」「窮屈な世の中になりそう」といった声も上がっています。

 メニコンCSR&コーポレートコミュニケーション部の担当者に聞きました。

B3ポスターや卓上用で周知

Q.「来社1時間前からの禁煙」を呼び掛けるポスターを出したのは、いつからでしょうか。

担当者「2018年12月から掲示しています。受付にB3サイズのポスターを張っているほか、卓上用の小さなものを接客用のテーブルや、来社された皆さんと面談するためのテーブルに置いています」

Q.掲示を出した狙いは。

担当者「お客さまとお取引先さま、並びに社員の健康増進と、高度管理医療機器メーカーとしての意識向上、快適なオフィス環境の維持が目的です。喫煙が体に与える影響は周知されていると思いますが、目にも影響するといわれています。特に、(見ようとするところが見えにくくなる目の病気)加齢黄斑変性になる危険性は、喫煙者の方が高いことを日本眼科学会も認めています。

来社1時間前からの禁煙については、2016年3月から要請しているのですが、当初は口頭ベースでした。しかし、明示することで取り組みを強化しようと、ポスターを掲示することになりました」

Q.禁煙強化の取り組みのきっかけを教えてください。

担当者「たばこを吸わない社員から『たばこを吸っている人がいると臭いが気になる』『喫煙のために席を外す人がいて、吸わない人がずっと仕事をしているのは不公平ではないか』といった声がありました。そこで、社長が『健康に関わる製品を扱っている企業として問題があるのでは』と決断し、10年ほど前、就業時間内は禁煙という取り組みを始め、その後、環境を強化してきました。

会社として禁煙を支援するための活動に取り組んでおり、社員が禁煙外来にかかる場合は費用を一部援助しています。社員は出社1時間前から禁煙です」

Q.「1時間前」という時間の根拠は。

担当者「呼気がたばこを吸う前の状態に戻るためには、30~45分が必要といわれています。奈良県生駒市が『喫煙後45分は市庁舎のエレベーターの使用禁止』と打ち出したことも話題になりました。45分にもう少し余裕をもった時間を考え、『1時間』という数字が分かりやすいのではと考えて、1時間前からとしました」

Q.ネット上では「やりすぎでは」「厳しすぎるのでは」という声が愛煙家以外からも出ています。

担当者「そういうご意見があることも理解しています。しかし、高度管理医療機器を扱うメーカーのポリシーとして、健康被害につながるものはやめていただきたいと考えています。健康だけでなく、臭いの問題もあり、エチケットとしてもお願いしたいということがあります」

Q.社内、社外の反応は。

担当者「喫煙者は初め驚く人もいるようですが、弊社の方針を理解していただいていると思います。決して強制しているわけではなく、『たばこをやめてください』と言っているわけでもありませんので。非喫煙者の皆さんからは『会議でたばこの休憩がないので仕事がはかどる』といった肯定的な声を頂いています」

Q.「来社直前に吸ってしまった」と申告した来客がいた場合、入社を待ってもらうのでしょうか。

担当者「もちろん『帰ってください』などとは言いません。初めて来社される場合、知らない人もいらっしゃるので。『次回からお願いします』とお願いしたり、趣旨を説明したりしているようです」

Q.今後、受動喫煙対策をさらに強化する予定は。

担当者「今以上に何かを、ということは今のところありませんが、『加熱式たばこはいいのでは』という風潮があるので、『加熱式たばこも同じですよ』と強調することもしなくてはいけないかとは考えています」

オトナンサー編集部

「来社1時間前からの禁煙」を呼び掛けるポスターの一部(メニコン提供)