小泉進次郎議員は家柄に加え、発信力や行動力によって総理大臣候補のナンバー1に挙がるほど注目され、今回の安倍改造内閣で環境大臣に任命された。

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 歌舞伎の〝澤瀉屋(おもがたや)″宜しく、〝小泉屋″だ。

 天皇陛下による信任式での彼の姿勢(直立でなく前傾80度)は、緊張というよりも、「よし、頑張るぞ!」という意志の充満を示しているように見受けられた。

 その小泉大臣が国連総会の環境関連会議に出席し、合間に日本人青年たちと意見交換した。青年の意見を聞いて未来を切り開きたいという意志の表明であろう。

 神社の注連縄・鈴縄を年ごと・行事ごとに新調することで「常若(とこわか)の日本」が維持されてきた。

 それを担ってきたのが麻(大麻・大麻草とも、英語はヘンプ)であるが、「大麻取締法」で化繊製品に替わり、神社への崇敬の念さえ奪ってきた。同法は有為な青年を不条理な犯罪者にもしてきた。

 国民は法を順守し、同時に批判もできるが、いかに悪法であってもその改廃は政治家しかできない。

 環境会議や青年たちとの意見交換で一つの話題として「大麻」が上がっていれば幸甚であるが、小さな問題として上がらなかった公算が大きいであろう。

 大麻(草)は一つの植物であり、ましてや「取締り」の対象で話題にするほど大きなイシューではない。

 その意味で「小さな問題」といったが、想像を絶する産業効果をもたらし、環境対策と絡んで解禁が世界の方向となれば実に「大きな問題」でもある。

「固いね」に期待する発想の転換

 小泉環境大臣は、認証された当日のぶら下がり質問に応じて、「育児休暇を検討すると言えばそのことがニュースになる。固いね、古いね」といった趣旨の発言をした。

 先には獣医学部新設で半世紀以上の岩盤規制が問題となったが、大麻取締法は法の立法目的さえない「悪法」と言われながら、(何度かの改定はあるものの)制定されて70年以上が過ぎている。

 日本と麻ほど伝統文化や日常生活に欠かせない関係にあった国はない。

 皇室の祭祀をはじめ、八百万の神々が宿る神社の注連縄や鈴紐、横綱が張る化粧まわしは麻でなければ意味がない。

 また戦前・戦中、そして戦後のある時期までは蚊除けの蚊帳や下駄・草履の鼻緒などの日常生活においても麻が欠かせなかった。

 その麻が、科学的根拠を有しないまま世界の傾向というだけで、1948年以降取締まられるようになった。世界的傾向は、実は覇権を目指す米国の石油化学による世界戦略にほかならなかった。

 日進月歩の科学は近代化をもたらしたが、石油化学製品と紙製品の多用と森林の伐採によって炭酸ガスの吸収が困難となり、環境問題(地球温暖化や海洋汚染など)を発生させるに至り、氷河融解・旱魃・洪水などかつてない危機を地球にもたらしている。

 こうした状況を顧みて、欧米先進国は規制してきた大麻について四半世紀くらい前から有効活用に方向転換しつつある。

 その流れにいまだに乗ろうとしないのが日本であり、「固いね、古いね」の発想で大麻と環境の関連を見直してもらいたい。

ポリテック主張の小泉氏

 小泉氏は自民党筆頭副幹事長であった昨年(2018)4月、千葉市内で開かれた「ニコニコ超会議」のイベントに参加した後の取材に応じて、「今日からポリテック」と語っている。

 どんなことかというと、「今までの政治家の必須分野は外交・防衛、税制、社会保障、経済だったが、これに加えてテクノロジーのインパクトを理解しないといけない時代になった」とし、

テクノロジーで何ができるのかという観点を政治・行政の中に確実に入れ込む」、すなわち政策決定過程にテクノロジーの観点が当たり前に入るようにすると述べている。

 一例として農業の土地改良を挙げ、「年間3000億~4000億円の予算を使っているが、人工知能を使って水路の引き方を考えればもっと安くなるだろう。意思決定の多様性を作るうえでも大事」と語っている(「朝日新聞デジタル」2018年4月29日)。

 ここでは「意思決定に科学技術を活用」するというものであるが、もっと広く受け取れば、政治には住民や国民(今日では国際世論もいるであろうが)の声を聞くという面が大きく、陳情となって人情絡みが多かったであろう。

 そこに科学技術の観点から陳情に光を当て、妥当性があるか否か、否であればより広い視点から科学技術面を加味して立法できないかという観点を入れるとも受け取れる。

 麻薬は科学的検証の結果として人間に不幸をもたらす面が大きく取締りの必要性は妥当である。

 ところが大麻は、1934年の米国農務省がヘンプ産業の活性化を推進しようとしたように、人間を不幸にするどころか、仕合せにするものであることが分かっている。

 その米国(大資本家)では石油化学の推進政策が採られ、一転して大麻産業は抑制され取り締まられる。しかし、幾たびか出されている科学的検証では酒やたばこよりも安全という結果ばかりである。

 欧州において戦後の半世紀が過ぎたあたりからヘンプ産業の解禁(1993年・英国、94蘭、95墺、96独など)が陸続と進み、特にドイツでは1998年から補助金を出して産業用大麻の栽培を奨励している。

 米国でも既に20州近くが解禁し、民主党の有力な複数の上院議員は解禁を主張している。

 そもそも日本では十分な検証すら行われないままに、GHQ(連合国軍最高司令部)の意向を忖度して1948年に取締法が制定された。

 しかし全く科学的検証に耐えない法律で、産業阻害に加え、有為な青年などを台無しにする〝悪法″とさえ呼ばれる状況である。

 序ながら、東電の汚染水問題では、小泉大臣は人情が先に立ち、前大臣が科学的知見に基づいて置き土産にした「放出して希釈するほかに選択肢はない」との発言を否定してしまった。

 残念ながら、そこにはポリテックは機能しなかったようだ。

石油化学に替わり得る大麻産業

 石油化学が発展するまでは大麻産業が世界中で盛んで、誰一人大麻の利用に疑問を挟むものはなかった。

 大麻産業を推進したい米農務省は1934年に「大麻が地球上で栽培できる植物の中で最も有益である」との声明を出したくらいである。

 しかし、同年に米国は「マリファナ課税法」を制定し、大麻栽培は消滅していく。

「大資本家が石油中心の産業革命を推進し経済を発展させるには大麻が競合すると分かり、大麻は麻薬で恐ろしいものだとする風潮が生まれ」たからだとされる(中山康直『麻ことのはなし』)。

 他方でアル・カポネなどを肥大させたことでも人気の悪かった禁酒法が解禁され、関係者の失業救済にもマリファナ課税法が役立つことになる。

 しかし、健康被害を抑制するといった目的すら掲げ得ない法律は立法目的に疑義が挟まれてきた。

 大資本家が意図した石油化学戦略は成功し、衣食住などの近代化や多様な兵器の出現をもたらしたが、環境破壊というマイナスをもたらしている。

 そこで半世紀ぶりに見直されるようになってきたのが大麻である。

 紙、繊維、建材、プラスチック、燃料など石油化学がもたらしてきた恩恵に替わり得る有効資源であり、温暖化の原因とみられている炭酸ガスの吸収率も著しく高い。

 しかも、半年で成長し利用できることは、石油の2億年、木材の50~100年をはるかに凌駕する有効資源であることは自明である。

 欧州全土の12%に大麻を栽培すれば、その年の全世界の紙需要がまかなえ、また北米の6%に大麻栽培すれば、米国は化石燃料依存を脱出できるという試算もされている(中山本)。

日本の救世主〝小泉屋″

 大麻を厳しく取り締まりたいと思っていたリチャード・ニクソン米国大統領は、自ら過半数を指名したシィーファ委員会を立ち上げた。

 ところが「通常の摂取量ではマリファナの毒性はほとんど無視してよい」という結果に烈火のごとく怒り、報告書の受け取りを拒否したという。

 そのニクソンが、口達者でマスコミなどを驚かす(新人)政治家は当初珍しがられるが、そのうちに「いかに語るか」より「何を語るか」で評価される(『指導者とは』)と述べている。

 小泉氏には固定観念にとらわれない「柔らかい」発想・思考と「科学的」知見を取り入れ、明日の時代を切り拓いてほしいと願わずにおれない。

 成長の速い大麻については、半年くらいの研究で、大いなる成果が見られるに違いない。

 そうした成果を見て、一層大きな声で〝日本の救世主″、〝小泉屋″と叫びたい。

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環境大臣に任命され首相官邸に入る小泉進次郎氏(9月11日、写真:ロイター/アフロ)