9月20日に開幕したラグビーワールドカップ。当初はいまいち盛り上がりに欠くと心配もされていたが、蓋を開けてみれば日本各地でファンも“にわか”もラグビー熱が高まっている。

日本各地の会場は大方席が埋まり、ラグビー発祥の地イングランドはもちろん、スコットランドオーストラリア南アフリカなどから多くの外国人サポーターが来日した。そして、そんなラグビー熱の余波をもろに受けているが、日本各地の飲み屋街である。

特に、観光地でありハブでもある東京にそれは顕著で、なかでもいまや観光地として絶大な人気を誇る新宿・ゴールデン街には連日、彼らサポーターが押し掛けているのだ。こういうと、「商売繁盛でけっこうじゃないか」という声も聞こえそうだが、当事者の間では賛否が分かれている。

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まず賛の方から言うと、なによりも売り上げの増加だ。出入りする酒類の量販店担当者によれば、「普段の3倍のオーダーがある」という。そんななかでも、売り上げ抜群なのがビールである。ある店のスタッフは、「あればあるだけ売れる感じ。ただ、店の冷蔵庫が小さいので、冷やすのが間に合わない」と話す。

スタッフによると、客層はやはりイングランドスコットランド、それに南アやオーストラリアドイツフランスなどの客が多く、いわゆる“白人層”の客がほとんどを占めるそうだ。

「これは、ラグビーファンだけじゃないですけど、外国人の方は一度気に入ると、滞在中、何度も来てくれる方も多いんですよ」(スタッフ)とも言うから、まず客としては悪いほうではないだろう。

一方、否のほうはと言うと、なんと言ってもマナーと習慣の違いだ。別の店のスタッフの証言。

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「外国人客あるあるですが、カバーチャージ(チャージ料)がネックになりますね。ウチでは最初に説明するので、大体の人はそれで入るか止めるか決めますが、今回は酔ったお客さんも多いせいか、なかにはしつこく交渉をしてくる人もいる。外で飲むからビールだけ売れとか、立って飲むからまけろとか。こちらとしては、ゴールデン街は、日本はこういうルールだ、と根気よく伝えるしかない」

なかには、「いい商売してんな!」と捨て台詞を吐いていった客もいたというから、古今東西酔っぱらいが迷惑なのは同じようだ。また、「最初は3人と言っていたのは、次から次へと“お友だち”が増えて最終的には10人近くになってしまった。伝票の計算もあるし、これも日本のお客さんではありえないことですね」。

まあ、カバーチャージや入店などはシステムの相違、いわば文化の相違だからまだわかるが、酔っぱらいならでは行動に眉をひそめる店も。

「大声で歌うのも困ったもの。ゴールデン街は住んでいる人もいるので。あと、狭い路地でラグビーを始めたときには驚いた。ガラスでも割られたらたまらないですからね。この時はさすがに注意しましたよ」

スタッフの証言でもわかるよう、システムの相違だけではなく、酔客独特の迷惑行為も少なからずあったようだ。いずれにしても、観光立国を目指すのは一筋縄じゃいかない、ということか。(取材・文◎鈴木光司)

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こちらは9月23日未明の様子(筆者撮影)