KDDIは2019年9月、5G(第5世代通信)と高精細動画やAI(人工知能)を組み合わせた法人向けサービスを発表した。ビジネス開発施設「KDDI DIGITAL GATE」で11月にトライアル環境の提供を開始し、2020年3月にサービスを正式にスタートする。

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 KDDIの原田圭悟ビジネスIoT企画部長は「当初は5Gによって特に多くのビジネスが生み出されると考えられる、交通と小売業の領域を狙っていく」と語る。さらに同社は、小売業などと同じく5Gによる新サービス創出のニーズが高まるとみて、製造業へのサービス展開も視野に入れている。

 KDDIはサービスの開発にあたり、半年間にわたって顧客企業のニーズを調査した。そして「一人ひとりの顧客に見合ったマーケティングをやりたい」、「ディスプレイの表現をリッチにしたい」といった要望を受け、5Gを活用した法人向けサービスの第1弾として3種類のラインナップをそろえた。

 一つは「AIカメラ」である。カメラで撮影した映像を5Gネットワークでクラウドに送信し、AIを用いて画像解析した結果を業務の効率化やマーケティングに役立てる。二つ目は「Intelligent Display」だ。商業施設などに設置した大型ディスプレイを閲覧している人の属性を、高精細カメラやセンサーを用いて判断し、閲覧者に適したコンテンツを映し出す。そして三つ目は、立体画像を映し出す「3Dホログラム」である(写真1)。

AIカメラの機器設置スペースを最小化

 AIカメラの最大の利点は、機器類の設置スペースを最小限に抑えられることだ。5Gネットワークなら高精細の映像でも高速に伝送できるので、画像解析やAIによる判断機能を機器側ではなくクラウド側に持たせられるためである(写真2)。

 例えば、小売店や飲食店の店内の様子をカメラで撮影して顧客の滞在時間を分析したり店内の空席状況を可視化したりする場合、店舗に設置するのはカメラ、クラウドにデータを送信するゲートウェイ装置、AIの判断結果の表示装置程度ですむ。店舗に画像解析やAI機能を備えたコンピュータを設置する必要がない。

 既存の防犯カメラを用いて不審な人物を検出したいコンビニエンスストアや、顧客の待ち時間を計測して業務の効率化を図りたい飲食業などから引き合いが寄せられているという。

 Intelligent Displayディスプレイの前に立った人に合わせたコンテンツを表示するもの。類似の機能を持つサービスはすでに存在するが、新サービスは画像やコンテンツの伝送に5Gネットワークを使うことで、人物の認識と属性解析からコンテンツの表示まで一連の処理を速められる。

“さわる”動作で3次元画像を動かせる

 3Dホログラムは商品が目の前に存在するかのように、3次元画像を空間に浮かび上がらせる技術である。VR(仮想現実)と違い、ヘッドマウントディスプレイを使用しなくても3次元コンテンツを楽しむことができる。新サービスは高速大容量のデータ伝送が可能な5Gネットワークの利点を生かし、映し出された3次元画像を“さわれる”ようにした。

 3次元画像を映し出すディスプレイにモーションセンサーを設置し、人の手の動きにあわせて画像を切り替える。たとえば商品を右から左へ回転させるように人が手を動かすと、それに合わせて回転後の画像をサーバーから5Gネットワーク経由でディスプレイに送り、表示する。

 いずれのサービスも月額課金体系を採用する。AIカメラの料金はサーバー1台あたり4万円から、カメラ1台あたり1万6000円から。Intelligent Displayは1台につき4万9000円から。3Dホログラムは1台7万7000円から。これらに5Gの回線使用料が加わる。

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