朱里(左)はグラウンドで優勢。後半はマドレーヌも見せ場を作った

 視覚、聴覚障害者にもプロレスが楽しめるバリアフリープロレスHERO23』が9月28日(土)、新木場1stRINGで行われた。聴覚障害者にはマイクアピール時などにスタッフリングに上がり手話を。視覚障害者のためにスマートフォンで実況解説が聞けるサービスが提供されている。
 この興行でMMA総合格闘技)と女子プロレスで活動する二刀流の二人、朱里vsマドレーヌがプロレススペシャルワンマッチで対戦した。

朱里は足で腕を極めながらバックチョークでマドレーヌからタップをとった。

 朱里は2008年『ハッスル』でプロレスデビュー格闘技では空手をバックボーンにKrush王座、パンクラス王座を奪取。その実績で17年9月にUFCデビュー日本人女子ファイター初勝利を飾った。しかし、今年6月22日に4戦目を判定負けし、UFC戦績を1勝3敗で終え、8月13日に自主興行でプロレスに復帰した。

 一方、マドレーヌは17年にMMAデビューしたばかり。メルヘンの国から来た、メルヘン戦士マドレーヌを名乗り、そのパフォーマンスなどで一躍脚光を浴びる。今年6月のDEEPでは、MMA戦績1勝4敗にも関わらず、初代DEEP女子フライ級王者のしなしさとこと対戦。腕十字で一本負けするも粘りを見せ、上を奪うシーンもあり健闘した。
 プロレスは今年5月には『ディアナ後楽園大会にてデビュープロレスはまだ4ヶ月で自力勝利は無いが朱里に「どうにかして勝つ」と意気込む。

朱里の腕十字を必死に耐えるマドレーヌ

 試合でリングインし、大きく深呼吸するマドレーヌ。「憧れでもあった朱里選手にこれまでに無い緊張感だった」と語る。
 ゴングが鳴ると朱里のグラウンド攻撃でリングを転がされ、アームロックへ行くとマドレーヌは足でロープエスケープ。立てば朱里が首投げからスリーパーで首を締め上げるとマドレーヌは再び足でロープに。

 胸上へのエルボー合戦でも破壊力に差があり、朱里の腰の入ったエルボーが打ち込まれると骨を打つ音が会場に響く。倒れると腰のあたりに朱里の強烈な蹴りを見舞われるが、マドレーヌもドロップキックや起死回生の側転蹴りを見せたり、バックチョークを極めにいったり、前方回転エビ固めでフォールを決めに行ったりと奮闘ぶりを見せる。

泣きそうになりながらも諦めないマドレーヌの立ち向かう表情

 しかし、最後は朱里の脇固めを耐えるマドレーヌに、体勢を変えバックチョークを極めるとマドレーヌはたまらずタップ。朱里がプロレス格闘技リアルな強さを見せつけた。

 試合後、朱里はインタビューで「プロレス格闘技は違う競技、どちらも素晴らしいもの。本当に大変な道だと思います。でも自分で選んだ道を、やりたい事をやって、何を言われようと、全力で突っ走ってほしいです。 また試合ができる日を楽しみにしています」とマドレーヌに励ましの言葉を贈った。

プロレスらしい魅せる側転蹴りを出すマドレーヌ。後ろには聴覚障害のファンに向け経過時間が表示された。

 プロレス格闘技と違い、ルールとして背中をつけた3カウントで勝負がつくのは誰もが知るとおりだ。更に相手の技を丈夫な体で受け切って倒すのがプロレスの醍醐味とも言われる。
 新日本プロレスルールブックを見ると、打撃では安全性確保のため、拳頭での打撃、肘と膝の先端での打撃は禁止、つま先での前蹴りの禁止、金的攻撃の禁止などが並び、プロレス団体では、このルールを採用しているのが一般的と言われる。その中で得意技、魅せる技を持つ事が大事だ。格闘技で打撃が得意だとプロレス用打撃との切り替えが大変そうだが、マドレーヌは総合格闘技デビュー2年、しかしプロレスデビュー4ヶ月。必殺技の会得まで時間が必要になるだろう。

▶︎次ページは試合後、タブレットでの聴覚障害者からの励ましにマドレーヌ涙

マドレーヌも脇固めで反撃

 試合後、マドレーヌは「パンクラス時代から客席で見てきた朱里さんと対戦できるだけで感動し緊張もしました。実力に差がある中で逆転を狙いたかったのですが…。朱里さんの肘打ちで意識が飛んだり、腰のあたりにこれまで経験したことのない強烈な蹴りをもらったりしました。でもとてもプラスになりました。もっと強くなった姿を朱里さんに見てもらえるように、プロレスMMAも更に頑張ろうと思いました」と語った。

 この大会はバリアフリー大会として聴覚障害者、視覚障害者の多くの観客が観戦。

バリアフリープロレスとして聴覚障害者に手話でメッセージを伝えるスタッフ

 マドレーヌのインタビュー中に聴覚障害のファンがマドレーヌにタブレットを差し出した。そこには「プロレスの経験がまだ少ないのが試合を見てわかりました。頑張ってください」と書かれてある。マドレーヌはそのタブレットに「まだうまくプロレスができなくてごめんね」と書き筆談しながら、「強くなりたい。勝ちたい」と涙ながらに語った。