a1_e

image credit:Douwe van Hinsbergen

 2億4000万年前の世界地図は、今とはまるで違うものだった。今日存在する大陸は当時ひとつにまとまっており、「パンゲア」というまるでパックマンのような形をした超大陸だった。

 パンゲア大陸はやがて分裂し、北部がローラシア大陸、南部はゴンドワナ大陸となった。

 ローラシア大陸もまた分裂して現代のヨーロッパ、アジア、北アメリカとなり、ゴンドワナ大陸はアフリカ、南極、南アメリカオーストラリアへと分裂した。

 このたび判明したのは、ゴンドワナ大陸からもうひとつの失われた大陸「大アドリア(Greater Adria)」が生まれていたということだ。

―あわせて読みたい―

「ロストランド」 海底に沈んだ10の失われた土地
新たなる超大陸 「アメイジア大陸」形成が進行中。地殻プレートの活性化とネパール大地震に関連性(オーストラリア研究)
地球に存在した第8の大陸。海底に没したジーランティア
アフリカ大陸は分断される?ケニアで巨大な亀裂が突如出現。数々の証拠が裏付けるアフリカ大陸分裂
南極の下で失われた大陸の名残りが発見される(ドイツ・イギリス研究)

大アドリアの上層部がまくれてできたヨーロッパに横たわる山脈

 『Gondwana Research』(9月3日付)に掲載された研究によると、1億2000万から1億年前にグリーンランドくらいの大きさの陸塊がプレートの力によってヨーロッパ南部の下にゆっくりと押し込まれたらしい。

 大アドリアは当時すでに半ば水没していたのだが、地球のマントルへ向かって押し込められるうちに一番上の層がまくれて上部へ突き出した。

 そして、このまくれた層が、現在のヨーロッパ30ヶ国に横たわる山脈の材料となった。

 研究の著者であるオランダ、ユトレヒト大学のダウワ・ファン・ヒンズベルゲン氏は、大アドリアの沈み込みをテーブルの下に長袖を着た腕を押し込んだときの様子にたとえて

セーターを着ているとする。その腕をテーブルの下に押し込むと袖がめくれて折れ曲り、上に盛り上がるだろう

と説明する。

 大アドリアの上を覆っていた数kmの地殻でも、折れ曲がった袖のようなことが起きた。

 そしてプレートにたとえられる腕は、今もなおマントルへ向かって地下数百km、場所によっては数千kmと沈み続けている。

 イタリアのアペニン山脈、ボスニア・ヘルツェゴビナのディナル山脈、スイス・アルプス、イランのザグロス山脈、ヒマラヤ山脈といったユーラシア山地帯は、この袖によって形成されたのだとか。

earth2

1億4000万年前の陸塊。緑は海面から出ている部分、黄緑は海に沈んでいる部分
image credit:Douwe van Hinsbergen

大アドリアが沈み込む前後のプレートの動きをシミュレーション


 大アドリアの過去を知るために、ファン・ヒンズベルゲン氏らは10年がかりでヨーロッパ、北アフリカ西アジア地質学的データを収集した。

 2億4000万年におよぶプレートの動きを知る手がかりは、地殻に形成される磁石だ。

 ふたつの移動するプレートの境界で熱い溶岩が冷却されると、磁性を帯びた岩石が当時の磁場の流れに沿った形で閉じ込められる。

 そうした岩石の向きを調べれば、大昔にそれらがどこにあったのか計算することができるのだ。

 地中海地域2300ヶ所の磁石を調べ、そのデータをもとに大アドリアマントルに沈み込む前・最中・後のプレートの動きをシミュレーションで再現。

 その結果、この失なわれた大陸は、2億2000万年前に現在のアフリカからちぎれ、さらに4000万年後にのちのイベリア半島からも分裂した。

 1億4000万年前になるとおそらく大アドリアは群島のような感じで、現在の「ジーランディア」に似ていただろう。

 ジーランディアとはニュージーランド周辺の大陸の断片のことで、海面より上に出ているのはわずか7%のみである。

earth3

image credit:Pixabay

大アドリアの一部は沈み込まずイタリアのトリノやベネチアに


 そして1億2000万から1億年前に、大アドリアプレートによって現在の南ヨーロッパの下からマントルへと押し込まれ始める。

 ファン・ヒンズベルゲン氏によると、

現時点で一番深い部分は、ギリシャの地下1500kmの地点にある

とのこと。

 今回の研究では、大アドリアの一部は沈み込まず、海上より上にとどまっていることも判明している。

 それはやがてイタリアのトリノやベネチアクロアチアのイストリア地方になったのだという。

References:Science direct / written by hiroching / edited by usagi

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52282940.html
 

こちらもオススメ!

―知るの紹介記事―

戦闘技術に長けた選りすぐりの傭兵を派遣する、世界的に有名な軍事企業10社
1年以上川底に沈んでいたiPhoneを発見。防水ケースに守られ完全起動。亡き父の思い出とともに持ち主に帰る
人になれるのを良しとしなかった野良猫が、1人の女性に心を開き、生まれたばかりの我が子の元へと案内するまで
「股間が大きすぎて怪しい」万引きを疑われた男性。無実を証明するために約25センチのイチモツを見せる(イギリス)
こっちが叫びたくなるほどうまいんだわ。ムンクなつくねの作り方【ネトメシ】

―自然・廃墟・宇宙についての記事―

様々な角度から見たブラックホールを可視化したNASAの最新映像
どうやって立てた!?高く狭い断崖の山頂にポツンと建つ世にも奇妙な小屋(※高所恐怖症注意)
かつての金星は温暖な気候と水があり、生命が居住できる環境だった可能性が示唆される(米研究)
月と地球をつなぐ宇宙エレベーター構想。月からエレベーターを垂らすことで既存の技術で実現可能と宇宙物理学者
地球温暖化の進行は予想より早い。このままだと2100年までに平均気温が7度上昇することが気候モデルから判明
地中海に沈む失われた大陸「大アドリア大陸」が発見される(オランダ研究)